ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「くそっ…なんだあの刀さばきは…!」
俺は荒い息を吐きながら立ち上がる。ブレイカムゼッツァーの切っ先が、微かに震えていた。パワーでもスピードでも負けているわけじゃない。だが、「読まれている」。俺たちの動きも、意思も、何もかもがお見通しなのだ。あの左右非対称の身体は、攻撃と防御、奪うことと受け流すことを同時に成立させている。
なら、力技だ。
物理で割れなければ、理でねじ伏せる。
「やらせてもらうぞ…!」
俺はゼッツエクスドリームドライバーのエクストリガムを連打する。全身の結晶粒子が激しく明滅し、ドリームアトミッカーが起動する。俺の想いとカプセムの力を融合させ、望む結果を現実化する。エクスドリームの切り札だ。
「この一撃は、『夢だったことにする』!」
俺は叫び、夢現へと突貫する。
彼女の刀が俺を裂こうと迫る。だが構わない。当たる直前に「当たらなかったことにする」。傷ついたなら「無傷だったことにする」。全ての不利を夢として書き換え、勝利の結果だけを現実へ固定する!
『ライズ! グレートバニッシュ!』
必殺のキックが放たれる……はずだった。
「え…?」
足元から力が抜けた。
いや、違う。力が「消えた」のだ。
蹴りの勢いも、ドリームアトミッカーによる現実改変のエネルギーも、夢現の右半身――薄く開いた眠りの瞳の側に触れた瞬間、スポンジが水を吸うように消失してしまった。
「そんな…馬鹿な…!」
俺はバランスを崩し、無様に床へ転がる。現実をねじ曲げるはずの力が、スッカラカンになった手品の種みたいに、何も残っていなかった。
「万津くん!」
最原が庇うように前に出る。
「僕が止める! 影で動きを封じるから、その隙に!」
最原がブレイカムバスターを構え、ノクスドライバーのレバーを操作する。ミッドナイトシャドウの能力発動。対象の影を自律型の拘束衣へと変質させ、動きを封じ込む戦法だ。
最原の足元から漆黒の影が迸り、夢現の足元へと這い伸びる。伸びる……はずだった。
影が、止まった。
いや、影そのものが「無かったこと」にされたかのように、モザイク状に崩壊し、霧散してしまったのだ。
「発動しない…? 影が、概念ごと消される…!」
最原もまた、信じられないといった様子で後ずさる。
「あら、当然でしょう」
夢現が、刀を肩に担いだまま静かに言う。その右目が、スッと細められた。
「ここは私の白昼夢。私が見ている夢の中なのです。あなた方の見る夢など、それ自体が「偽物」よ。偽物の夢で、現実を書き換えようだなんて、傲慢にも程があるわ」
夢現の言葉が、冷水のように俺たちの熱を奪う。
そうか。こいつの能力は、単に攻撃を防ぐだけじゃない。
『夢を無効化する』。
俺たちの「夢を実現する力」は、彼女の「夢を否定する力」の前では、ただのノイズに過ぎないんだ。
「俺たちの力が…通じないってことか…!」
俺は拳を握りしめる。エクスドリームの結晶粒子が、不安げに明滅していた。夢現は、俺たちが夢で戦うこと自体を許さない。この空間での彼女は、絶対的な「現実」として君臨しているのだ。