ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
視界一杯に広がっていた死の予感が、硬質な金属音と共に霧散した。
俺の胸元から射出されたブレイカムドォーンは、一本の流星となって宙を舞う。そのまま地に落ちるかと思われた大剣を、白い空間の彼方から伸びた「何か」が掴み取った。
「え……?」
目を疑った。
腕だ。空間の綻びから引き抜かれるようにして、ブレイカムドォーンを握りしめた腕が現れたのだ。黒と濃紺、禍々しい有機的なラインが走る腕。見間違えるはずがない。あれは、かつて俺を悪夢の底へ突き落とした、あの男の装甲だ。
ドォンッ!
重い着地音が響き、砂塵が舞う。
そこに立っていたのは、骨と悪夢を接合されたような異形の騎士。骸骨を模した頭部、肋骨のような胸部装甲、全身を巡る紫とマゼンタの血管めいたライン。そして、胸の中央が空洞になった不気味なベルト。
仮面ライダードォーン。
「教祖……?」
俺の喉から、掠れた声が漏れた。後ろで最原も息を呑む気配がする。
まんじ達が命がけで守ろうとしていた人物。終天教国の最高指導者。そして、俺が戦いの中で向き合い、背負うことを誓った罪の象徴。その彼が、なぜ今、この悪夢の最前線に立っているのか。
「なぜっ教祖が…!」
夢現――時雨の声もまた、動揺に歪んでいた。彼女の刀が微かに震える。あの冷静沈着な時雨でさえ、予想外の事態にペースを乱されているようだった。
ドォーンは、ゆっくりと顔を上げる。複眼の奥から、冷たく、それでいてどこか優しげな光が俺を射抜く。
「万津君」
静かな声だった。けれど、その声音には以前のような戸惑いも、弱気もなかった。悪夢そのものを呑み込んだかのような、深い静寂が宿っている。
「君は夢を背負うと言った。ならば、私は君の悪夢になろう」
彼はブレイカムドォーンを軽く振るい、大剣モードから双剣モードへと分離させた。黒い大剣と紫の小刀が、左右の手で鋭く構えられる。
「罪も罰も、絶望も混沌も。君が背負いきれない闇のすべてを、私が悪夢として引き受ける。それが、私にできる贖罪だ」
教祖は、俺の前に立ち塞がる夢現へと向き直った。
悪夢を統べる者として。
一つの巨大な悪夢として。
「さあ、時雨兎紀子。君の見せる白昼夢の結末を、私が断ち切ろう」
その構えには、微塵の迷いもなかった。
それを聞いた俺と最原は同時に立ち上がる。
「まさか、本当にこんな日が来るとは思わなかったな」
笑みを浮かべながらも、その手にあるブレイカムゼッツァーを構える。
それと共に最原もまたブレイカムバスターを持ちながら、構える。
「本当に、夢は何が起きるか分からないね」