ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
希望ヶ峰学園の正門前。夕闇を切り裂くような轟音が、絶え間なく響いていた。
「どけぇぇぇッ!!」
まんじが変身したロードツーが、蝶のマントを鋭い刃のように展開し、迫りくるNAIXの戦闘員たちを薙ぎ払う。黒いパワードスーツを着込んだ兵士たちが、悲鳴を上げる間もなく吹き飛んでいく。
「へっ、一撃かよ! ざこどもが!」
丑寅のロードファイブが、赤く輝く巨大なグローブを振るう。パワードスーツの装甲が、トラックにでも撥ねられたかのように歪み、砕け散った。戦闘能力だけで言えば、終天教団の五人は圧倒的だ。個人のスペック、装備の精度、どれを取ってもNAIXの量産型スーツなど問題にならない。
だが、敵は止まらない。
「突撃ーッ! 現実を壊せェェェッ!」
どこかの指揮官らしき男の怒号と共に、後方からさらに十、二十と増援が湧いて出る。彼らは恐怖を感じていない。いや、恐怖すら「シミュレーションのバグ」として処理しているのだ。仲間が倒れても、その死体を踏み越え、狂信的な叫び声を上げながら突進してくる。
「くっ、キリがないですね!」
「趣味が悪いったらありゃしない!」
犬神のロードスリーが、優雅なステップで自爆しようとした兵士を切り伏せる。紫色のマントが血飛沫を弾き、細身の剣が的確に急所を突いた。
「ですが、嬢ちゃんの言う通りキリがないぞ! 倒しても倒しても、ゴキブリみたいにわいてきやがる!」
丑寅が苛立たしげに拳を振るうが、その背後から新たな一団が迫っていた。
「テコ! どうなってる!?」
まんじが通信機に向かって怒鳴る。
『計算通りだよ、まんじさん』
後方の装甲車で指揮を執るテコのロードゼロが、冷静な声で応答する。彼の巨大な胸部アーマーの陰に隠れたモニターには、学園周辺の地形図と敵の配置を示す赤い点がびっしりと表示されていた。
『敵の戦力は無限に近い。彼らにとって死は「ログアウト」に過ぎないからね。一方、僕達のエネルギーと弾薬には限界がある』
テコは淡々と、まるで数学の問題でも解くかのように戦況を分析する。
『個の戦闘力では我々が上だ。だが、このままの殲滅戦を続ければ、2時間32分後に僕達の防御ラインは崩壊する。押し切られるよ』
「上等だ! なら2時間32分全力で暴れさせてもらうぜ!」
丑寅が笑う。
『冗談を言っている場合ですか、丑寅さん。万津くんたちがソムニウムで原因を断つまでの時間を稼げなければ、全てが水の泡です』
黒四館の冷ややかな声が響く。
『ええ、分かってますよ。だから、やるしかない』
まんじが刃を構え直す。その瞳には、教祖を守ると誓った時と同じ、揺るぎない炎が宿っていた。
「ねぇ、テコくん。もうちょっとポジティブな計算結果って出せないの?」
犬神が苦笑しながら問う。
『出ないね。僕は楽観主義者じゃないので』
テコは、そのようにプログラムされた仕草をして、静かに結論を下した。
『だが、不可能とは言っていない。あと2時間32分、地獄の底まで付き合ってもらうよ』
NAIXの鬨の声が、再び夜空に響き渡る。終天教団の五人は、押し寄せる狂気の波に対し、一歩も引かない構えを見せていた。