ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「うおおおおっ!!」
ソムニウムの裂け目から響いてくる怒号は、もう悲壮なものじゃなかった。
大神さくらの拳がNAIXのパワードスーツを鉄屑のように叩き潰し、大和田紋土が仲間を守るように立ちはだかる。不二咲千尋が放つ電子信号が敵の照準を狂わせていく。
数の差? そんなものはもうない。
かつて希望ヶ峰学園で命を散らした者たちが、過去の幻影として今の戦場を駆け抜けている。苗木学園長の白昼夢という、狂気じみた奇跡が現実を侵食し、圧倒的な戦力差をひっくり返したのだ。
「すげぇ…あれが希望の力かよ…」
俺はソムニウムの中で息を呑む。
だが、苗木学園長はまだ終わっていなかった。
屋上の上で、彼は血を吐くように喘ぎながらも、その手に新たな光を掲げた。
ゼッツドライバー。
そして、そこに装填されたのは、虹色に輝くカプセムだった。
「苗木学園長! あれは…!」
『ホープカプセム…か』
教祖が呟く。その声には驚嘆と共に、確かな確信が混じっていた。「希望」という名を冠したその力が、今の彼にどれほど相応しいかを理解しているのだ。
苗木学園長は、震える手でカプセムをドライバーへ叩き込んだ。
『チャージ!』
力強い電子音声が、風切り音を裂いて響く。
彼はレバーを押し込み、カプセムを回転させた。
『メツァメロ! メツァメロ!』
待機音が高らかに歌い上げる。それは悲しみや絶望を越えた、純粋な歓喜の旋律だった。
「変身ッ!!」
彼の叫びと共に、虹色の光が世界を包み込む。
『グッドナイト! ライダー!』
『フルチャージ!』
光が弾けた。
そこに立っていたのは、これまで見てきたどのゼッツとも違う姿だった。
頭部はプラズマブースターの「ブーステッドエレクトロムマスク」に似た鋭角的なデザインだが、その意匠は電撃ではなく、大気を切り裂く希望の光芒のように虹色に明滅している。
そして背中には、テクノロムプロジェクションの「レムプロジェクション」を思わせる巨大なマントが広がっていた。だが、そのマントはただの布ではない。ホログラフィックな虹色の装甲そのものであり、七色の光を撒き散らしながら風になびいている。
胸部の装甲には、ゼッツの紋章ではなく、虹のように色が連なる模様が刻まれていた。一つ一つの色が彼の歩んできた道と出会った仲間たちの想いを表し、それらが一つの輪となって彼を守護している。
「これが…苗木学園長のゼッツ…」
俺は呟かざるを得なかった。
カオスでも絶望でもない。「希望」そのものを纏った仮面ライダーゼッツ。
彼はゆっくりと顔を上げ、虹色の複眼でNAIXの軍勢を睥睨した。
「さあ…終わりにしよう! この悪夢も、絶望も! 全部まとめて、俺たちが背負って進むんだ!」
その声は震えていたけれど、決して折れることはない。
過去と現在、死者と生者の想いが一つになった、眩いほどの「フルチャージ」だった。