ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
屋上から飛び降りた苗木学園長の姿が、彗星のように地面へ着弾する。虹色の衝撃波がNAIXの戦闘員たちを弾き飛ばし、その着地地点を中心に希望ヶ峰の生徒たちが陣形を敷いた。
「行くぞ、みんな!」
苗木学園長の叫びと共に、彼の背後のレムプロジェクションが展開する。七色のホログラフが空中に幾重にも重なり、まるで道しるべのように戦場を照らし出した。
「おうよ! 雑魚は俺が蹴散らす!」
大和田紋土が、特攻服の裾を翻して突っ込む。彼の背後には、幻影の暴走族がごとく唸るエネルギーの奔流が浮かび上がっていた。大和田はNAIXのパワードスーツの射撃をものともせず、その鉄拳を叩き込む。
「デコボコ雑魚が! 俺の邪魔するんじゃねぇ!!」
ドガッ! ガシャンッ!
重機のような一撃がパワードスーツの装甲をひしゃげさせ、さらにその背後に控えていた二体、三体をボウリングのピンのように弾き飛ばした。豪快無比。生前の「超高校級の暴走族」そのものの戦いっぷりだ。
「紋土! 無茶をするな!」
大神さくらが、大和田の斜め後ろに陣取り、彼がこぼした敵の攻撃をことごとく受け止める。迫ってきたナイフを持った戦闘員を素手で掴み、へし折る。別の方向からの銃撃には、大和田の背中を守るように立ち回り、その強靭な肉体で防いだ。
「私は貴様の背中を預かっている! だからこそ、前だけを見ていけ!」
「チッ…世話焼きな女だぜ! だが、任せた!」
二人の阿吽の呼吸。生きていれば決して交わらなかったであろう拳と守りが、この白昼夢の中で完璧な連携を生み出していた。
そこへ、横合いからエネルギー弾が飛来する。大和田と大神が抑えきれなかった遊撃部隊だ。
「ストライクッ!」
快活な声と共に、桑田怜恩が跳んだ。彼の手には硬球型のエネルギー弾。それを野球のピッチングフォームで、正確無比なコントロールで敵の懐へ投げ込む。
バキュンッ! バシュウウウ!
エネルギー弾がNAIXの戦闘員の関節部に直撃し、武装を次々と破壊していく。桑田はニヤリと笑い、地面を転がるようにして大和田の元へ合流した。
「へへっ、俺様のストレートは勝負球だからな! 見逃すなよ、紋土!」
「ああ! だからこそ、俺がホームランにしてやる!」
大和田が桑田の作った隙を突いて突進し、大神がその後ろを守り、桑田が再び遊撃に回る。
攻めと守りと速攻。
三位一体の連携が、NAIXの防衛線を紙屑のように引き裂いていく。
そして、その中心にいるのは苗木学園長だ。
彼は三人の生徒たちが作った道を、ブーステッドエレクトロムマスクの高加速機能で駆け抜ける。虹色の残像を引き連れ、敵の懐へと潛り込むと、レムプロジェクションのマントで敵の視界を奪い、その隙にゼッツドライバーの力を込めた拳を叩き込む。
「桑田くん! 右!」
「任せろ、学園長!」
苗木の指示に、桑田が即座に反応し右からの奇襲を粉砕する。
「大神さん、来ます!」
「承知した!」
迫り来る重火力部隊の砲撃を、大神が気合で受け止め、その衝撃を大和田のタックルへ繋げる。
「みんなの想いは…無駄にしない!」
苗木学園長の声が響く度、胸部の虹色の模様が激しく明滅する。それはまるで、彼らの命の輝きそのものだ。
死者たちの幻影と、生者の意志が交差する。
かつて絶望に散った希望たちが、今、現実を侵食する白昼夢の力で、今の希望を守る盾と剣となっている。
「すげぇ…」
俺はソムニウムの裂け目からその光景を見つめ、言葉を失った。
これが、苗木誠という男のかたち。彼が紡いできた絆の強さだ。
どんな絶望も、どんな悪夢も、彼らの前ではただの障害物でしかない。
「万津君」
教祖が静かに言う。
「これが現実です。彼らが命懸けで開いてくれた道だ」
「ああ…分かってる」
俺は拳を握りしめた。
現実側は任せていい。あの「希望」の光がある限り、NAIXごときにこの世界は壊せない。
なら、俺たちがやるべきことは一つだ。
この悪夢の根本を、ソムニウムの中から断ち切るしかない。