ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「おい、何だあれ…」
現実側の異変に、最初に気づいたのはまんじだった。
いや、まんじだけじゃない。終天教団の幹部全員が、押し寄せるNAIXの波を撃退しながら、眼下に広がる光景に瞠目していた。
「苗木学園長…! あの御方、ウイルスを利用して白昼夢を展開していやがる!」
まんじのロードツーが、蝶のマントを閃かせて敵の一団を吹き飛ばす。その動きには先ほどまでの焦燥が消え、代わりに攻撃性と歓喜が宿っていた。
「勝ったな」
テコのロードゼロが、腕部の砲口を正確に撃ちながら、静かに言い放った。
「僕達が計算した劣勢の条件は、もう崩れた。彼の希望が、あのウイルスの悪夢を裏返したんだ」
「上等だ! おい、お前ら! これ以上現役の学生にだけカッコつけさせてたまるかよ!」
丑寅のロードファイブが、獰猛に叫ぶ。赤いグローブが地面を砕き、衝撃波で周囲のNAIX兵士を薙ぎ倒す。彼の髪は戦いの熱で逆立ち、まるで憤怒の鬼神のようだった。
「同感ですわ。調停者として、未来ある若者に戦場の全てを背負わせるのは忍びない」
犬神のロードスリーが、ステッキの要領で細剣を回し、飛来するナノマシンの霧を斬り払う。紫色のマントが翻り、月光を背に受けて幻想的なシルエットを描いた。
「言の葉の魔術も好調です。希望の波長とかち合わないよう、私が調整します。皆様は思う存分、抗ってください」
黒四館のロードシックスが、両手に宿る水色の燐光をかざす。彼女のデバイスから放たれた無数の言葉が、NAIXの狂信的な思想を中和し、その動きを鈍らせる。
終天教団の五人だけでなく、明らかに流れが変わっていた。
なんせ、戦場に立っているのは生きた「希望」そのものだ。
苗木誠。
彼を中心に、復活した希望ヶ峰学園の生徒たちが咆哮しながら突撃する。その後方からは、終天教団の五人が狂喜乱舞しながら敵陣を切り裂く。
個の武力で圧倒していた先ほどとは違う。
連携している。
意志が、想いが、呼吸が、噛み合っている。
「後ろは任せた、政治家!」
「誰が政治家か! 文部省だ抜かせ!」
口汚いツッコミを入れる黒四館の真横から、NAIXの重装兵が飛び出る。が、そこを犬神の細剣が確実に刺し貫き、直後に丑寅の拳がとどめを刺した。
「無駄口を叩いてる場合ですか。次、来ますよ」
「よしきた! んじゃあ、俺がこの一帯をぜんぶ持ってく!」
桑田怜恩が現れたのはその時だった。
「投手交代だ! さっきのお返し、いっくぜ!」
「任せた野球少年!」
一瞬で終天教団との距離を詰めた桑田が、手にした幾つものエネルギー弾をピッチングフォームで打ち分ける。それを合図に、大和田紋土が疾走し、大神さくらがその背を守る。
「俺は大和田! ってなんだこの編成、悪くねぇ!」
「長話は後だ。行くぞ、暴走族」
「暴走族は昔の話だ! 今は戦闘用幻影だ!」
「呼び名など些末よ。さっさと走りなさい」
雑多なやり取りすら、呼吸の一部だ。
戦場が、一つの生き物のように脈打ち始めた。
俺はソムニウムの中で、その光景を目の当たりにしながら、胸の奥からとめどない熱が込み上げてくるのを感じていた。
「これが…希望と絆だ」
(この世界は、まだまだ終わっちゃいない)
希望ヶ峰学園の幻影たちが、NAIXの戦線に綻びを作る。すかさず、終天教団の五人が畳みかけ、周囲の敵を根こそぎ粉砕していく。
正門前から歓声が上がる。救援に駆けつけた教団の下位構成員たちもまた、勇気づけられたように吠えながら参戦を始めた。
「見ろ、万津」
通信越しに、教祖が静かに呟く。
「彼らはもう、善悪も過去も超越して、目の前の絶望に抗っている。…君のソムニウムでの決断を、彼らは待っているんだ」
「ああ、分かってる」
俺は戦場から溢れる光を背中に、夢現と向き合い直した。
「こいつを倒せば、この奇跡は、本当の未来に変わる」