ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
戦場が、静まり返った。
いや、静まり返ったのではない。皆が息を呑んで、一人の男の背中を見守っていたのだ。
「いくよ、みんな…!」
苗木学園長の声が響く。
彼は、敵陣のど真ん中へと飛び出していた。虹色の装甲が、夕闇の中でひときわ強く輝いている。NAIXの戦闘員たちが、最後の足掻きとばかりに一斉射撃を浴びせようとしていた。
だが、届かない。
射線に入る前に、大和田紋土が鉄拳で、大神さくらが剛腕で、桑田怜恩がストライクで道を開く。さらに終天教団の五人が左右を固め、一切の邪魔を許さない完璧な陣形だ。
「俺だけの力じゃない!」
苗木が叫ぶ。
彼は胸元のゼッツドライバーのレバーを押し込み、カプセムを回転させた。
『チャージ!』
重厚な電子音声が戦場を揺るがす。
その瞬間、不思議なことが起きた。
大和田の拳、大神の守り、桑田の球筋。そして、まんじの刃、テコの銃撃、丑寅の豪腕、黒四館の言霊、犬神の剣閃。
戦い抜いた者たち全員から、灯火のような光が立ち上り、苗木の元へと収束していく。
『バニッシュ!』
全身の虹色の装甲が、爆発的な輝きを放った。七色の光が渦を巻き、彼の右足へと凝縮されていく。ホープカプセムの力が、仲間たちの想いという触媒を得て、限界を超えて増幅されたのだ。
「これが希望ヶ峰学園の…!」
彼は跳んだ。
大空へ。
七色の尾を引く彗星となって。
『ゼ!ゼ!ゼッツ!』
ドライバーが勝利を告げる咆哮を上げる。
最高点へ達した彼は、身体をひねり加速しながら急降下した。右足に宿った虹色の光が、もはやキックの軌跡を残す余裕すら与えないほどの速度で空間を貫く。
「あーっはっはっは! やっちまえぇぇぇ!!」
丑寅の歓声が聞こえる。
「ビューティフォー!」
犬神が讃える。
虹色のライダーキックが、着弾した。
ドォォォォォォォォォォォンッ!!
衝撃波が七色に染まり、NAIXの軍勢を飲み込んでいく。
物理的な破壊ではない。 Hopeの光が、強制された悪夢を「初期化」する。パワードスーツが次々と機能を停止し、中の兵士たちが白目を剥いて崩れ落ちていく。ウイルスによる狂信的な連動が断ち切られ、彼らはただの人間に戻り、気絶していった。
土煙が晴れた時、そこに立っていたのは虹色のライダーただ一人。
NAIXの軍勢は、一人生き残ることなく沈黙していた。
「す、すげぇ…」
俺はソムニウムの裂け目からその光景を見つめ、震える声で呟いた。
これが、希望の力。
「見ろ、万津」
通信機越しに、教祖の穏やかな声が届く。
「彼が道を開いた。現実は守られた。次は君の番です」
「ああ…!」
俺は夢現を睨みつける。
もう、迷いはない。後戻りもしない。
あの虹色の光が、俺の背中を押してくれている。