ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「ふふっ」
夢現が、静かに笑った。
彼女は確かに見ていたはずだ。ソムニウムの裂け目から漏れ出す、あの虹色の閃光を。NAIXの軍勢が一掃され、苗木学園長が希望の光で戦場を制したことを。
だが、彼女は気にも留めていないようだった。
「現実での小競り合いなど、どうでもいいことです」
時雨の声が、白い空間に冷たく響く。その表情には焦りも動揺もない。あるのは底なしの虚無だけだ。
「重要なのは綻び。この夢の世界でこそ、解脱への道は開かれる。あちらでの勝敗など、シミュレーションの誤差に過ぎません」
彼女は刀を構え直す。
俺に向き直るその瞳には、俺という個人が映っていない。ただ「初期化すべきデータ」を見ているだけだ。
「さあ、終わりにしましょう。あなた方の夢も、ここで強制終了です」
夢現が踏み込もうとした、その時だ。
世界が、揺れた。
物理的な振動じゃない。もっと根本的な、概念が震えるような感覚。
「な…なんだ…?」
俺は胸元のゼッツエクスドリームドライバーを見下ろす。
ドライバーが、激しく発光していた。さっきまでの結晶粒子の明滅とは違う。もっと温かく、力強い、七色の輝き。
視界が開ける。
ソムニウムの壁が透け、現実世界の光景が鮮明に浮かび上がってきた。
「苗木学園長…?」
彼は屋上で、胸元のホープカプセムを両手で握りしめていた。虹色の装甲が、祈るように輝いている。
「万津くん! 俺たちの想いを、受け取れぇぇッ!!」
その叫びと共に、彼のカプセムから一条の光が放たれた。希望の光だ。
それだけじゃない。
まんじがブレイクコードダウンカプセムを掲げる。守護の赤い光。
テコが自身のカプセムを叩く。科学の青白い光。
丑寅が拳に握ったカプセムを天へ突き上げる。武力の黄土色の光。
黒四館がデバイスに仕込んだカプセムに囁きかける。言霊の水色の光。
犬神が優雅にカプセムを振る。調停の紫色の光。
さらに、大和田、大神、桑田。幻影となった彼らからも、かつての生徒たちからも、色とりどりの光が立ち昇る。
「これは…」
俺は目を見開く。
無数の光が、次元の壁を越えて、このソムニウム世界へと雪崩れ込んでくる。一つ一つが仲間たちの想いそのものだ。
守りたいという願い。真実を暴きたいという意志。平和を取り戻したいという祈り。
それらが全て、俺の元へと収束していく。
「うおおおおおッ!!」
全身に熱い奔流が駆け巡る。
ゼッツエクスドリームの装甲が悲鳴を上げるほどのエネルギー。いや、これはエネルギーなんて生温い言葉じゃ足りない。
これは、魂だ。
現実に生きる者たち全員の魂が、俺という器を通じて繋がろうとしている。
「馬鹿な…!」
夢現が初めて狼狽した声を上げる。
「現実からの干渉!? 私の白昼夢の中に、外部からのデータが流入しているというのですか!?」
「そうだよ、時雨!」
俺は叫ぶ。
「これが俺たちの現実だ! お前が否定しようが無効化しようが、俺たちの絆まで消せるもんなら消してみろ!!」
胸元のドライバーが、限界を超えた出力を示して轟音を上げる。
未完成だった最強の姿がゆっくりと起動する。