ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
キーボの言葉と共に、被害者のソムニウム世界へと突入する。
現実が溶けるように歪み、新しい風景が生まれていく。暗く湿った通路が前方に延びている。壁という壁に貼り付いた赤い数字盤が目に入る。60から始まって、59、58……一秒ごとに減っていくタイマーだ。
「っ……!」
息が止まりかける。足元を見れば、床板が剥がれ落ちそうな木製の床。その隙間からは複数の電線が伸びており、まるで生きているように蠢いている。どこかでカチッという小さな音が鳴った。
「万津くん!気をつけてください!」
キーボが警戒した声を上げる。振り向けば、我々の背後で何かが膨らんでいる。壁だったはずの表面が隆起し、その中央部から二つの大きな目玉が現れた。円柱状の胴体に腕はなく、その代わりに無数のコードが触手のように蠢いている。
「このナイトメアは……爆弾専門型なのか」
俺の推測通り、次の瞬間には頭頂部から爆弾が生えてきた。赤と黒の鉄箱に長い導火線が繋がっている。その箱には赤字で〈TIME BOMB〉と書かれていた。悪夢らしい幼稚なデザインだ。
「爆弾魔による犯行現場に迷い込んだ犠牲者……といったところでしょう」
キーボの言葉が鋭い。
「被害者の記憶が基になっているのか」
「おそらくそうでしょうね」
俺は歩を進める。通路は長く曲がりくねっていて逃げ場はない。左右の壁には同じ種類のタイマーが並んでいる。どれも時間が少しずつ異なる設定で動いているようだ。
「解体する必要はありませんよ」
「解体?どうして?」
「あれらは物理的爆弾ではありませんから。犠牲者の恐怖の具体化に過ぎません」
なるほど。と俺は納得した。確かに物理的に作用する爆弾ならとっくに爆発しているはずだ。だからといって放置していていいわけではない。トラウマの象徴がそこにある限り、ソムニウム世界そのものの破綻が近づく。
「だったら早くボムナイトメアを倒さないとな」
「ですが気をつけて下さい」
キーボが警告するように指さす方向を見ると、壁に設置された大きなデジタルディスプレイがあった。そこには〈BOOMING COUNTDOWN 0:15〉の文字。
「あと十五秒以内に接近しないと自爆します」
「厄介だな」
急ぐべきか否か躊躇したその時、ボムナイトメアの触手コードが一斉に伸びてきた。四方八方から網の目のように覆いかぶさってくる。
「くっ!」
ギリギリのタイミングで回避できた。コード先端の針が衣服を掠める。鋭利な痛みと共に紫の血痕が宙に舞う。俺の肉体が現実より強靱になっていることが救いだ。
「っ……あぶねぇ!」
「慎重かつ大胆に動かなければいけませんね」
キーボは冷静に分析しながらコード網をすり抜けていく。
ソムニウム世界が歪む。
目の前でボムナイトメアが触手コードを振りかざす。
赤と黒の鉄箱が転がり、導火線から火花が散っている。
「くそっ……!」
ライダーカプセムを握りしめる。
金属製のカプセルが手の中で震える。
もう時間がない。
このままじゃ全滅だ―――。
「万津くん!」
「一気に突破する。力を貸してくれ、キーボ!」『ライダー!』
俺はそのまま、ライダーカプセムをゼッツドライバーに装填する。
それと共に、瞬時に回すと。
『グッドモーニング! ライダー!ゼ・ゼ・ゼッツ!ライダー!』
ゼッツドライバーから音声が鳴るのと同時に、俺の周囲から火花が迸る。
一瞬の眩い閃光。
変化していく。
ゼッツドライバーに固定されたライダーカプセムを中心に体が生成されていく。
「ライダーカプセムをドライバーに装填する事で現れる装甲。通常のゼッツよりも、防御能力及び攻撃能力が高い」
変化した体を見ていると。
アイボゥが俺に向けて解説をしてきた。
「フィジカムライダー。身体強化及び近接戦闘を強化させる為に作られたフォーム。それ故に移動スピードや跳躍力が大幅ダウンする分、攻撃力を伸ばす為に使う戦闘形態だ」
アイボゥの言う通り、今の俺の姿は完全に力任せの暴走族みたいな外見をしている。炎のような模様が刻まれた銀の装甲。そして最大の特徴は、特攻服のようなジャケットが装備されている。
キーボの身体が唸りを上げる。
ロボットの関節が音を立てて分解され、再構成されていく。
「ちょっ……嘘だろ?」
思わず俺は目を見開いた。
目の前でキーボが変わっていく。
腕がフレームに吸収され、脚部が車輪に変化する。
装甲が剥がれ落ちたようなパーツがボディとなり、ホワイトのバイクへと姿を変えた。
「まさか……変形機能まであったなんて」
伊達さんの声が遠くで聞こえる。
「・・・これが入間さんの言っていた改造か。けれど」
俺はそのままキーボに乗る。
「どっどうするつもりですか!」
「ナイトメアに突っ込む!」