ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
エンジンが咆哮する。
キーボバイクのハンドルを握る指先が痺れるほど熱い。
「行くぞ!キーボ!」
『了解です!』
地面を蹴り上げる。
タイヤが路面を削る音が耳を劈く。
最初のコーナーへ突入――視界が一気に狭まる。
「くっ!」
ブレーキングは最小限に。
バンクさせた車体が壁ギリギリを滑る。
左肩すれすれをコンクリート壁が通過する。
汗が一粒流れた。恐怖は感じない。ただ集中する。
次の瞬間。
背後から轟音と共に赤黒い塊が迫る。
ボムナイトメアの触手コードだ。
導火線から火花を散らし、爆弾そのものが追尾してきた。
「振り切れ!」
アクセル全開。
エンジン音が獣のように吼える。
膝当てがキーボバイクのシートに食い込む。痛覚はある。だが今は不要だ。
「もっと速く!」
キーボが応じるように速度を増す。
コーナリング中のGが全身を押しつぶす。
視界の端で爆弾が破裂した。
衝撃波が背中に叩きつけられる。
一瞬だけブレーカーが落ちたように視界がブラックアウト。
『大丈夫ですか?!』
キーボの声で我に返る。
ハンドルを切る角度を誤ったら終わっていた。
爆煙を抜ける。
次のコーナーをS字に切り抜ける。
タイヤが悲鳴を上げるがそれでも突き進む。
(このままじゃダメだ……)
ボムナイトメアは必ずどこかで仕掛けてくる。
この単純な一本道に罠を張らないわけがない。
そして――案の定だ。
前方約五十メートル。壁から垂れ下がる多数の配線。
その中央に巨大な時限装置が鎮座している。
「まずい……!」
あのタイプは見たことがある。
大規模破壊型。つまり、この通路全体が爆破される。
「キーボ!迂回コースは?」
『ないです!ここを通らなければ目的地に辿り着けません!』
アイボゥの分析音声が脳内に響く。
「そうだろうな!」
歯を食いしばる。
アクセルを緩める選択肢はない。
タイマーは既に十秒を切っている。
「行くしかない……!」
全力疾走中だ。何も考えられないほどに脳内が高揚している。
ハンドルを握る指先が微かに震える。だが止まるつもりはない。
残り五秒。
四秒。
三秒。
二秒。
「うおおおおおお!!」
直後、視界が真っ白に染まった。
白い閃光が網膜を焼く。
鼓膜が破れそうな轟音。
衝撃波が全身を打ち据える。
「ぐぉっ……!」
肺から空気が押し出される。
キーボバイクのエンジン音が悲鳴を上げる。
車体が吹き飛ばされそうになるのを必死で支える。
爆発の中心を通過したのだ。
だが痛みは後回しだ。
今は眼前に集中しなければならない。
ボムナイトメアが目の前に立ちはだかっていた。
円筒形の巨体。赤黒い肌。頭頂部に設置された爆弾。
「こいつか……!」
俺はフィジカムライダーの特性を思い出す。
装甲強化。物理攻撃特化。
移動速度は下がる代わりに打撃力を増幅させる形態。
つまり――。
「この距離なら!」
アクセル全開。キーボバイクの推進力に自身の体重を乗せる。
左拳を堅く握り締める。
肩甲骨から肘へ。肘から手首へ。
全身の筋力を一点に凝縮する。
「うおおおおおおおおっ!!」
拳が風を切る。
視界が真っ白に染まる中。
何かが砕ける感触。
それは人体ではなく機械。
ボムナイトメアの胴体に拳が突き刺さった。
「これが……!」
衝撃波を伴う拳撃。
内部機構が悲鳴を上げる。
金属が歪む音。
油圧シリンダーが破裂する音。
「フィジカムライダーの威力だ!」
爆発の余波を利用しての全速前進。
ボムナイトメアの体がくの字に折れ曲がる。
巨体が宙に浮く。
「ゴォァァァッ!」
苦悶の声。
それと共に、俺はブレイカムゼッツァーを手にする。
その形は斧。
『アックスモード』
拳の一撃で浮かんだボムナイトメアの腹に食らいつく。
金属が軋む音。装甲がひしゃげる感触。
しかしまだ終わっていない。
「もう一発……!」
ブレイカムゼッツァーをアックスモードに変形させる。
巨大な斧が空中で輝く。
『ブレイカムクラッシュ!』
システム音声が響くと同時に。
全身の血管が膨れ上がる。
筋肉が唸りを上げる。
フィジカムライダーの特性が最大化する瞬間だ。
「おらぁぁぁぁっ!!!」
右腕を振り上げる。重厚な斧が弧を描く。
それはもはや打撃ではなく破壊行為だ。
不良が相手を圧倒するような豪快な一撃。
「消え失せろ!!」
斧先がボムナイトメアの胸部装甲に叩き込まれる。
金属板が砕ける。内部機構が露出する。
火花が飛び散る。オイルが噴き出す。
「ゴオォォォッ!?」
怪物の呻き声が響く。
俺の右手には斧の柄が深く食い込んだ感覚。
手応えあり。
「これで……終わりだ!」
最後の一撃は止めの一撃。斧の刃を垂直に貫く。
ボムナイトメアの胸郭が完全に破壊される。
金属片が散乱する。油圧シリンダーが破裂する。
爆発寸前の時限装置が停止する。
「よし……!」
斧を引き抜く。怪物の巨体が仰向けに倒れ込む。