ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
舞台裏の影から声が漏れ始めた。夢野さんの声だ。
「違う……ウチはそんな人間ではない!」
三角帽子を両手で強く握りしめる仕草。彼女の爪が赤いリボンに食い込み、薄布が悲鳴をあげる。
「何が違うというのですか?」
冷たい響きが闇から這い上がる。男とも女とも取れない合成音声のような声色。夢野さんの口から出ているはずなのに抑揚が異なる。
「いつも独りで舞台に立っているのに……本当は怖いのでしょう?」
「黙れぇっ!」
夢野さんが耳を塞ごうとするが間に合わない。影が舞台照明の枠から溢れ出し、彼女の足元まで侵食してきた。漆黒の波紋が床を蝕んでいく。
「お客さんはただの役割。あなたの成功は幻。本当の友人はいませんね?」
「違う……そんなことあるもんかえ……」
声が震えている。否定する度に影が濃くなっていく。まるで負の感情を栄養源にする菌類のようだ。
「ほらご覧なさい。みんなあなたを見捨てましたよ」
突如として観客席のシートがぐにゃりと歪み始めた。大量の人型のシルエットが浮かび上がる。どれも白黒反転した幽霊のような姿。
「うわあああっ!」
夢野さんが蹲る。帽子が滑り落ち、乱れた髪が頬に張り付く。
「嘘じゃ……ウチは……」
ナイトメアの影が不気味に脈動した。まるで黒い血が流れる心臓のように。その中心から現れたのは――
「素晴らしいショーでしたねぇ……手品師さん?」
夢野さんの顔をしたナイトメア。いや、正確には顔は判別不能だ。輪郭だけが彼女のものを模倣している。赤い髪だけが奇妙に鮮明だ。
「なっ……貴様は!」
「どうしました? もっと笑いなさい。観客が退屈していますよ?」
嗤うような声音で影が揺らぐ。まるで万華鏡のように形を変えながら彼女に近づく。
「嘘じゃ……わらわは……」
震える手で胸元のブローチを握りしめる夢野さん。だがナイトメアは容赦しない。
「ちがう! 魔法は……ウチにとっては!」
「本物? 笑わせないでくださいよ、そんなの「俺は信じるよ」何?」
俺は、夢野さんの前に出る。
「万津」
「何を馬鹿な事を魔法など「俺の人生って、本当に信じられないぐらいに不幸があるんだよ」何を言っているんだ」
「死にそうな事なんて、数え切れない程に。けれどさ、それでも俺は生きている。それって、才能かもしれないけどさ、これも一つの魔法じゃないかな?」
「魔法」
「あぁ、夢野さんはきっと誰かを笑顔に出来るそんな魔法を持っているんだ。何よりも夢野さんにはきっと夢野さんにしか出来ない魔法があるから」
その言葉に、夢野さんは先程までの顔が少し晴れている気がする。
「何を言って」
「だから、見せるよ。俺のとっておきのマジックショーを」
それと共に、俺はカプセムを取り出し、そのままゼッツドライバーに装填する。
『ストリーム!メツァメロ! メツァメロ!』
右手を正面へと軽く突き出し、掌を開いたまま腕を二段階に分けて捻る仕草を取り。
「変身」
左手の親指でドライバーをなぞるようにカプセムを回す。
『グッドモーニング! ライダー!ゼ・ゼ・ゼ・ゼ・ゼッツ!ストリーム!』
青黒いもやに覆われた後に真っ黒な強化被膜を形成、青いラインを生成した後に複眼に青い光が充填されるように輝き変身が完了する。
「それは」
「なに、風のマジックの始まりだよ」
そうして、俺は笑みを浮かべながらも、夢野さんの前に出る。