ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「姿が変わったが、だが」
その一言と共に影からナイトメアはその姿を露わにする。
見れば、ナイトメアの容姿はどこか夢野さんを思わせる姿だが、全身は影となって、正確に捉える事が出来ない。
『影のナイトメア、つまりはシャドウナイトメアってところっすね』
ナイトメアの姿を見た月夜野はその名称を述べる。
「そう言えば、まだこの状態はお披露目していないか。初めましてだな」
「変身がどうなろうが変わらない」
ナイトメアはその言葉と共に影の槍を作り出す。
だが万津はその姿を見てどこか不適な笑みを浮かべる。
「さて、突き刺しショーだな」
それと共に、影の槍が真っ直ぐと俺達に向かって、襲い掛かってきた。
しかし、それに対して俺は動揺しない。
両手をゆっくりと構える。
手から流れる風が吹く。
このテクノロムストリームは、大気を操る事が出来る。
「台風や崖から落ちる事はよく体験したからね、この辺も」
それと共に、周囲にあったマジックに使われる為の剣が宙を舞う。
それと共に、こちらに迫る影の槍へと飛んでいき、ぶつかり合う。
影の槍と剣同士がぶつかると同時に火花が散る。
そのまま影の槍は弾け飛ぶ。
「何?」
「ほらほらほらほら!どんどん行くぜ!」
『ブレイカムゼッツァー』
ブレイカムゼッツァーを取り出す。
片手で風を操り、もう片方の手でブレイカムゼッツァーの引き金を引く。
「なっ」
迫りくる風がシャドウナイトメアに襲いかかる。
風と共に放たれる無数の弾丸。
風によって散弾のように拡散されていく。
「これぐらい」
影の兵士が次々と湧き出てくる。シャドウナイトメアは影を自在に変形させる。槍が鞭になり、鎖となり、あるいは鋭い杭となって襲いかかる。
「何度も言うけどさ……」
テクノロムストリームの手のひらを翳す。青い指先が軽く空気を撫でると、周囲の空気が渦を巻きはじめる。
「俺、こういうの慣れてるんだよね!」
螺旋を描く気流が迫る影の刃を受け止める。風圧で押し返すのではなく、軌道を逸らす繊細な操作だ。まるでオーケストラの指揮者みたいだ。風という楽器を操る演奏家。
「無駄だと言ったはず!」
シャドウナイトメアが両腕を広げる。ホール全体が闇に染まるほど濃密な影が蠢く。壁一面に影の獣が浮かび上がり、一斉に牙を剥く。
「なら──こちらも音楽会といこうか!」
ブレイカムゼッツァーを取り出し、天井の照明を捉えた。舞台装置の蛍光灯を風で吊り上げ、スローモーションのように揺らす。同時に壁面に並べられた鏡たちを掌で呼び寄せる。
カチン──
水晶がぶつかるような音と共に数十枚の鏡が空間に浮遊する。それぞれ微妙に角度をつけながら配置していく。
「何をする気だ……?」
シャドウナイトメアの声に困惑が混じる。当然だ。光と影の戦いで光源自体を操作するなんて誰も思いつかない。
「簡単さ。君みたいなヤツは光を避ける。なら逆に──」
指先を弾くジェスチャー。
「照らす場所を選べばいいだけ」
鏡の一枚一枚が計算された角度で太陽光を反射させる。スポットライトのように一点に収束した光線がシャドウナイトメアの足元を直撃する。
ジュワッ──
蒸発音とともに影が霧散する。水を吸った新聞紙のように黒い霧が晴れていく。
「私の領域を……汚すな!!」
怒号と共に無数の影の短剣が飛来する。
だが、それらは光の中に消えていく。
「なっ……!?」
シャドウナイトメアが目を見開く。投げ放たれた無数の黒い短剣が空中で静止したのだ。まるで時間が止まったかのように。
(こいつ……風で全てを支配下に置いている……?)
そう、これがテクノロムストリームの真骨頂だ。空気分子レベルでの制御。針一本たりとも逃さぬ緻密な管理。科学と魔術の狭間にある奇跡。
「風というのは素晴らしい」
ブレイカムゼッツァーを握る右手が青く光り始める。
『ブレイカムバレット』
機械音声がホール中に響き渡る。同時に足元から猛烈な風が巻き上がる。渦潮のごとき旋風がドーム型の天井へと昇っていく。
「来るなぁあああ!」
ナイトメアが吠える。残った影の塊を集め始めている。防御体勢だ。
しかしもう遅い。
「"暴風への招待状"だぜ」
引き金を引く。
ゴゥウンッ!!
轟音と共に直径数メートルの青い竜巻が炸裂した。内部には超高密度のプラズマ光弾が閉じ込められている。風圧と熱量の二重奏。
ゴゴゴゴゴゴゴ……!
地面が軋む。ステージが砕ける。照明器具が落下する。爆風が客席を薙ぎ払う。
その中心部では──
シャドウナイトメアの本体が閃光に包まれていた。影を構成するマイクロマシンが原子分解されていく。
「ギィィャァアアアア!!」
断末魔の悲鳴すら青い閃光に飲み込まれていく。人形劇のように縮みゆくシルエット。
パンッ
乾いた音とともに"存在自体"が消失する。
残るのは静寂と粉塵だけ。
俺は変身を解く。額の汗を拭いながら振り返る。
「夢野さん──大丈夫か?」
三角帽を抱き締めた少女が呆然と立っていた。