ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
道場の入り口には"清浄第一"と墨痕鮮やかに書かれた額が掛けられている。床板は黒光りしすぎて自分の顔が映りそうなほど磨き上げられていた。畳敷きの空間には竹刀袋が整然と並び、壁際には巨木を削り出したような大太鼓が鎮座している。空気中には微かに白檀の香りが漂い、異常に澄んだ神聖な雰囲気を醸し出していた。
「……茶柱らしいな」
つい独りごちてしまう。彼女の几帳面さがここまではっきりと反映された世界は初めて見た。
現実世界では最原と百田がモニター越しに固唾を飲んでいた。画面に映る異空間に目を剥く。
「マジかよ……」
百田が呟く。
「人の頭ん中ってこんなのか?」
「まぁ、初めて見るなら驚くよね。でもこれは通常の夢じゃない」
最原が静かに補足する。彼の視線はモニターに釘付けだ。
「特定の記憶や恐怖が肥大化した特異空間だ。ソムニウム世界では主観的情報が過剰増幅される。その結果……」
「ああいう道場になるわけか」
百田が納得顔でうなずく。一方で最原の眉根はさらに寄せられた。
「気になるのはナイトメアだ」
「なぁ最原」
屋上の監視モニターの前に陣取る百田が、不思議そうな顔で言った。
「さっきからナイトメアとか言ってるけどよ、それってどういうモンなんだ?」
最原は一度俺に視線を向けた。説明役を譲られた気がして、俺は咳払いをしてから口を開く。
「簡単に言うとさ……」
最原は深呼吸をひとつして、百田の方へ向き直った。
「ナイトメアっていうのは、終天教団が使う洗脳技術の一環なんだ。彼らは《絶望のビデオ》と呼ばれる特殊な映像を見せて対象者の精神に干渉する。そこから生まれてくるのがナイトメア――個人のトラウマや恐怖が形になった怪物だ」
「おいおい……それって要するに悪夢みてぇなもんか?」
百田が首を傾げる。
「だけどよぉ、それは終天教団の奴らはそれを見て絶望はしないのか?」
「えっ、それは奴らも超高校級の絶望だから」
「そう言う問題かぁ?それにさぁ?」
「なんだよ」
「そもそも終天教団の奴らの目的は人類の滅亡だろ?」
「まっまぁ、そうだね?」
「けどさ、人類が滅亡するのを目指すから、超高校級の絶望になるのか?」
「・・・」
その一言は、この場では考えていなかった。
「・・・人類が滅亡するからこそ、状況的には確かに絶望的だ。それは分かる。けどよ、そもそも俺が知っている奴らは人類を滅亡を明確にするんじゃなくて、絶望事態が目的じゃないのか」
「あっ」
それを聞いて、この情況。
否。
そもそも、俺達の戦っている敵は本当に超高校級の絶望なのか。
その疑問が出てしまった。