ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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嫌悪 Part5

防具の締め付けが容赦なく強まる。左手首が潰れそうだ。このままじゃ茶柱どころか、俺の腕も千切れちまう。

 

「くっ……!」

 

歯を食いしばる。俺の中の迷いが判断を鈍らせていた。目の前の茶柱は苦しんでいる。それなのに、俺は助けの手を伸ばすことすら躊躇している。だって、あの防具はナイトメアの本体じゃないのか?下手に触れば、もっと酷いことになるかもしれない。

 

『男子ってのはね、いつもそうやって都合のいいことばかり言うんですよ』

 

かつて茶柱から浴びせられた言葉が蘇る。そうだ、彼女にとって俺は憎むべき「男死」の一人。いくら俺が善意で動いても、彼女にとっては恐怖の対象でしかないのかもしれない。

 

それでも――

 

「諦めるわけにはいかないんだよ……!」

 

そうして俺は、そう言いながらも立ち上がる。

 

「なんで」

 

そんな俺の様子を見て、茶柱さんは問いかける。

 

「そこまで、私を。私はあなたにこれまで」

 

その言葉に対しての、俺の答えは決まっている。

 

「俺は、これまで何度も死にそうな目にあった。だけど、それは俺の周囲でもだ」

 

俺の言葉に茶柱さんは驚きの目を見開く。

 

「事故で死にそうな時に、周りにも人がいた。中には、死んでしまった人がいた」

 

その時の事を思い出すと、今でも胸が痛む。

 

「中には、嫌な人もいたっけどな、死んでも良い人なんて、誰もいなかった!」

 

『それは誰しもが言うことだと思いますよ!』

 

茶柱さんは少し納得がいっていない様子で言う。

 

「けどな。そういう人は死んで欲しく無いと思ってもさ。結局は救えない!けど、目の前の不幸は救う事は出来る!」

 

『それで救えない時はどうするんです!』

 

「その時は諦める!そのくらい割り切っているさ!」

 

茶柱さんはその言葉に、呆然としてしまう。

 

『そっそんな理由で?』

 

「もちろん」

 

俺の言葉に茶柱さんは少し迷いを覚えた。

 

俺は迷いながらも腕を掴み返す。

 

「お前がどう思おうと関係ない。俺は諦めたくないんだよ」

 

その時だった。

 

面の奥から洩れた声が、震えていた。それは怒りでも侮蔑でもなく、もっと根源的な何か――怯えや混乱に近い。

 

「……万津君?」

 

久しく呼ばれなかった名前に、思考が凍りつく。

 

「どうして……私を助けようとするんですか?」

 

その問いが投げかけられた瞬間、全身の血が逆流するような錯覚に陥った。助けようとする? そんなの当たり前だろ。目の前で苦しんでる奴がいれば、放っておくなんてできるわけがない。例えそれが憎まれ口しか叩かない女子であっても、俺にとって重要なクラスメイトであることに変わりはないんだから。

 

「どうしてって……そりゃあ、お前が困ってるからに決まってんだろ!」

 

反射的に声を荒げてしまった。いつもなら即座に「馴れ馴れしく喋りかけないでください」と冷たく一蹴されるところだが、今の茶柱からは何も返ってこない。ただ、防具の拘束がほんの少しだけ緩んだ気がした。

 

「困ってる人を見捨てるほど、俺は薄情じゃない。それだけだ」

 

努めて平静を装いながら続ける。そうだ、俺はただ目の前の現実に対処しようとしているだけだ。そこに男女の別なんてない。あっていいはずがない。

 

「……馬鹿ですね」

 

ぽつりと漏れた呟きは、嘲りというよりは途方に暮れたような響きを持っていた。

 

「ここまでされた相手を……まだ仲間扱いするなんて」

 

その言葉に含まれた棘は以前に比べてずっと柔らかい。彼女自身も困惑しているのかもしれない。敵対すべき対象が、予想外の行動に出たことで。

 

「仲間だからな」

 

迷いなく答える。どんなに嫌われようと、どれだけ理不尽な目に遭わされようと、この学園での日々を共に過ごしてきた事実は変わらない。俺にとっては、それだけで十分な理由だった。

 

茶柱はしばらく沈黙していた。面の下の表情は読めないが、その小さな肩が微かに震えているのが分かった。

 

「男死……なんて」

 

やがて絞り出すように紡がれた言葉は、普段の刺々しさとはまるで違う声音だった。

 

「あーっ!」

 

突然、百田の大声がスピーカーから響き渡った。ソムニウム世界の喧騒とは異なる、現実世界からの乱入だ。

 

「おい万津!聞いてんのか!?」

 

「なんだよ!集中してるんだ!」

 

苛立ちを隠さずに応じる。目の前の茶柱――いや、ナイトメアが纏う防具に囚われた彼女――から意識を逸らす余裕などない。

 

「落ち着けって!ナイトメアってのはよぉ、要するにコイツが着てる防具そのものが化け物になってんだろ?」

 

百田の声は妙に自信に満ちていた。

 

「だったらよ……解体してみりゃいいんじゃねえか!?」

 

「は?」

 

あまりに単純明快な解答に、思考が停止する。解体?この禍々しい防具を?

 

「そうか!ソムニウム世界の物品は思念体に過ぎない!茶柱さんが現実で所有していないものなら、その形状を保つ『情報量』は少ないはずだ!」

 

最原の分析が続く。なるほど……つまり、茶柱自身がイメージできない部分は脆いということか。

 

「けどよ……防具を外すなんて至近距離でやらないといけないんじゃ……?」

 

「危険は承知だ」

 

俺は、それと共に、一つのカプセムを取り出し、そのままゼッツドライバーに装填する。

 

『グッドモーニング! ライダー!ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!マシーナリー!』

 

同時に俺は、左腕に搭載された4本爪のマシンアーム、テクノロムマシーナリーが特徴的なテクノロムマシーナリーに変身する。

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