ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
テクノロムマシーナリーの青白い金属装甲が冷たい輝きを放つ。左腕に装備された4本爪のマシンアームが低い起動音を響かせた。この形態は筋力向上タイプのフィジカムとは対照的に、精密動作と分析能力に特化している。
「待ってろよ、茶柱……!」
まずは剣道の面からだ。奴の中枢神経装置のようなものを破壊すれば、一時的に拘束が解けるかもしれない。マシンアームが稼働する。
コンマ数秒のうちに面の材質構造、接合部の弱点が俺の網膜ディスプレイに投影される。竹集成材ベースに炭素繊維と樹脂コーティング。ソムニウム世界特有の思念強化が施されているものの、基本構造は現実の剣道防具と同じだ。
「カットアウト・アンポッシブル。バーンイング」
マシンアームの爪先が高温プラズマを帯びる。茶柱の頭を守るように慎重に……だが容赦なく。
バシュッ!
熱せられた竹が燃え上がる不快な臭気が充満する。面の留め具部分が溶断され、支えを失った防具がぐらりと傾いた。
「ぐ……!」
面の下から茶柱の苦悶の声。ダメージが本人にも及んでいる……!?
「まずい!」
急いで面を引き剥がす。露わになったのは涙と汗で濡れた彼女の顔。いつも整った髪型は乱れ、額には玉のような汗が滲んでいる。
「茶柱!聞こえるか!」
彼女は虚ろな目で虚空を見つめている。まだナイトメアの影響下にあるらしい。
「次は右腕……」
続いて狙うは右手の剣道小手。肘関節の動きを封じるように装着された硬質プラスチック製の防具だ。こちらも精密切断が必要だが時間がない。
「フロー・システム起動」
マシンアームが超高速振動を開始する。一秒間に四十回を超える微細な衝撃波が小手の縫い目を裂くように侵食していく。
バリッ!
小手が二枚貝のように左右に割れて脱落した。その拍子に中から青白く輝く糸のようなものがちらりと見える。思念エネルギーの触手だ。
「あと左腕のボクシンググローブ……!」
最大の障害が残っている。最も大きく最も丈夫な防具だ。
グローブそのものは皮革と合成素材のハイブリッド。だがその内側には鎖帷子のような保護ネットが幾重にも編み込まれており、下手に切ろうとすれば反動で茶柱の拳を傷つけてしまう。
「リスク分散……最適解は……」
「計算完了。切断ライン三十六箇所……リスク値83%」
マシンアームの爪先が微細な火花を散らす。プラズマで焼き切るのではない。高精度レーザーの如く分子結合を解くのだ。
「覚悟してくれよ、茶柱」
グローブ内部の思念エネルギーが暴発寸前で蠢いている。これを断つには一点突破しかない。
「ナノ・インパクト」
左腕の筋肉が軋む。マシンアームから繰り出されたのは針のように細い衝撃波。超精密射出。
ビュゴッ!
接触と同時に蒼白い光が迸る。防具表面が溶融ではなく分解されていく奇妙な光景。0.02秒に満たぬ刹那に三十連の微小孔が開通する。
「ぐっ……!?」
茶柱の体が弓なりに反った。痛みとも痺れともつかぬ感覚が電撃のように駆け巡ったのだろう。
「もう少しだ……!」
最終工程はマニュアル操作。人工筋肉の疲労を無視して関節を全開にする。
「ゼロ・シークエンス」
マシンアームの可動域ギリギリまで突き入れた爪先が、グローブ基底部の骨格フレームを捉えた。
カキンッ!
微細な破砕音。そして――
ザクリッ!
皮膚一枚隔てたところで停止した切断面から、粘液のように青紫色のエネルギーが噴き出す。
「離れろ!」
反射的に彼女を突き飛ばす。崩れ落ちたグローブから奔出したエネルギー塊が暴れ馬のごとく踊り狂う。防御する暇もない。右肩の装甲に直撃。
バヂイッ!
「があっ!?」
思念エネルギーによる汚染。エラー警告がレッドゾーンを突破する。
だがその隙に茶柱は自由の身になっていた。半ば茫然とした面持ちで地面にへたり込む。
「万津くん……」
「まだまだっ」
そうして、俺は眼前にいるナイトメアにゆっくりと構える。
「来いよ」