ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「ふむ……確かに僕の研究対象としては興味深いトピックだヨ」
真宮寺はゆっくりと腕を組んだ。マスクの奥で瞳が妖しく光る。
「クク……終末思想とは人間が己の存在を問い直す時によく現れる現象さ。文明が栄えるほど人は死を恐れ、死後の世界に執着するようになる。終末はその究極形態と言えるネ」
「なるほど……つまり死ぬのが怖いから終末を迎えてほしいってことか」
俺は冷めた目で分析する。だが真宮寺は首を横に振った。
「いやいや。それは表面的な解釈にすぎないヨ」
彼は椅子の背もたれを指先でトントンと叩きながら続ける。
「クク……僕が見た多くの終末信仰には共通する要素がある。それは『選民思想』サ」
選民思想———その言葉が耳に引っかかった。
「選ばれし者が最後に生き残る……そういう話か?」
「その通り。人々は自分が特別だと信じたがる。終末はその願望を最もドラマティックに叶えるシチュエーションなのだヨ」
真宮寺の指摘は鋭かった。俺は教祖を思い出す。
「じゃあ教祖もそうなのか?」
「クク……それは本人に聞いてみないことにはわからないネ」
彼は意地悪く笑う。だがすぐに真面目な声音に戻った。
「でも一つだけ言えることがある。終末思想は個人の妄想じゃない。社会病理の一種サ」
俺は眉を寄せる。
「どういう意味だ?」
「人は恐怖を感じた時、見えない力を求める。宗教も終末論も同じだヨ。今の時代は不安材料ばかりだ。不況、環境破壊、疫病……挙げればキリがない」
彼の指摘は確かに的を射ていた。だが……
「でもそれが世界滅亡に繋がるか?」
俺はあえて挑発的な言い方をする。真宮寺は肩をすくめた。
「クク……その辺りが微妙なところサ。大衆心理というのは不合理なものだヨ。だからこそ民俗学が面白いのさ」
彼はにやりと笑った。
「で?君は何のためにこんな質問を?」
その問いに一瞬言葉に詰まる。だがすぐに言い直した。
「別に大したことじゃない。ただの好奇心だ」
「クク……そうかい」
真宮寺は含みのある笑みを浮かべる。マスクの下で唇が動いたのがわかった。
「いずれにせよ」
彼は急に真剣な声色になる。
「終末論者は必ず対策を考えるものだヨ。彼らは滅びを語りながらも滅びない方法を探す……皮肉なものだね」
俺は黙って聞いていた。
「教祖が終末を回避する方法か……」
俺は無意識にベルトに触れた。ゼッツドライバーが微かに温かい。まるで危険を察知するセンサーみたいだ。
「クク……それはおそらく君が一番知るべき事柄かもネ」
真宮寺がマスクの下で意味ありげに笑った。
「なぜそう思う?」
「終末論者が最も恐れるものは何か?それを考えるのも一つだと思ってね」