ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
放課後の図書館は夕暮れの光に満ちていた。古書の紙が黄ばむ匂いが漂う中、俺は真宮寺を探して歩いていた。
「クク……遅かったじゃないか」
民族学資料棚の陰からいつもの不気味な笑い声がした。だが今日の彼は明らかに様子がおかしい。マスクの下で荒い息遣いが聞こえる。
「何かあったのか?」
「見てほしいモノがあるヨ」
彼は震える手でスマホを差し出した。画面に映るのは錆びた鉄塔。
「偶然……手に入れたデータだ。だが途中から動画が切り替わって……」
真宮寺の指がスワイプした瞬間、画面が真っ暗になる。次の瞬間——
スピーカーを通した歪んだ声なのに異様な現実感がある。
「……絶望ビデオ」
俺は反射的にベルトに手を伸ばした。だが真宮寺が遮る。
「止めろ!まだ再生は続いてる!」
スマホにはさらに別の映像が流れている。白く濁った瞳をした高校生たちが整列する様子。彼らの手には銃。
「クク……教祖はただ終末を語るだけじゃない。現実を創り出すつもりサ」
彼の言葉を裏付けるように画面の隅に小さく表示されたテロップが動いた。
「あがっあがぁがぁ」
「クク……ククク……」
真宮寺は椅子に凭れかかりながら奇妙な笑い声を上げた。まるで糸で操られる人形のように、不自然に背中を丸めている。その肩が小刻みに震えている。
「真宮寺、大丈夫か」
「分からないよ、けれど、こんな体験は本当に初めてだね」
そうしながら、真宮寺の眼はかなりヤバい。
「あぁ、自分の中で大切な物が穢されているこの感覚!あぁ、姉さん!姉さん!!」
その悲痛な言葉を聞き、俺は覚悟を決めた。
「俺が行く。あんたのソムニウム世界に」
俺は右手をベルトに当てた。氷のように冷たい感触が伝わる。
「万津クン……何を言っているんだ」
真宮寺が苦悶の表情を浮かべながらも忠告する。
「この前、色々と教えてくれた礼だ。それに、このまま友達が苦しんでいるのを見逃せる訳ないだろ」
俺の一言に対して、真宮寺は驚きを隠せない様子。
「クク……友情というものには常に打算と犠牲が伴うものだよ……」
真宮寺の喉から、機械のような音が漏れる。身体の一部が痙攣している。
「でも嬉しいよ」
彼の指先が俺の袖を掴む。
「だからこそ、よろしく頼むよ。親愛なる友人よ……」
真宮寺は目を閉じた。
俺はゼッツドライバーを腰に巻く。
「行くぞ」
ベルトのシステムが起動音を発した。
それと共に瞬く間に俺は真宮寺のソムニウム世界へと入っていく。
真宮寺のソムニウム世界、それを最初に見た時には驚きを隠せなかった。
「心臓に悪い世界だなぁ」
それはまさしく和のホラー映画を思わせる光景が広がっていた。