ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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模造 Part5

風が雪を運ぶ山峡は夜闇よりも濃い闇に閉ざされていて、遠くで狐火が踊っている。鳥居は本来東西南北を示すはずが、真宮寺のソムニウム世界では四本とも西を向いている──まるで時間と方位の概念さえ歪んでいるのだ。

 

「……参ったな」

 

俺は唇を噛む。子供の頃、雪山で遭難しかけた記憶が蘇る。凍える空気、月さえ喰らう雲海。あの時も帰り道が分からなくて。そうだ、この雰囲気はそれだ。

 

『ザアア……』

 

水田跡に積もった雪が、血のような泥色に腐り落ちていく。畦道には藁人形が等間隔に並び、ひとつひとつの首から古い祭文が垂れている。

 

「民俗学講義としては完璧だよ。だが講師不在じゃ卒業試験にすら辿り着けん」

 

皮肉を呟きながら進むうち、前方に黒板を模した石壁が立ちはだかった。チョーク代わりの骸骨の指が勝手に動き出し、文字を綴る。

 

〈お ま え も そ の は へ〉

 

「誰が地獄行きだ。冗談じゃない」

 

苛立ち混じりに足を踏み出す。途端に雪が崩れ落ち、三途川を模した幅十メートルの断崖が現れた。対岸では灯籠行列が蠢き、耳鳴りのような祈禱歌が木霊する。

 

「教祖の絶望ビデオには確かに『郷土信仰の儀式』が映っていたが……ここまで再現するか。真宮寺の潜在意識が強すぎるな」

 

断崖の真下へと視線を落とすと、雪の合間に赤い鳥居の破片が無数に埋まっている。どれも逆さ吊りにされた神社建築の残骸だ。

 

──つまりこれは村そのものを逆さまに葬った儀式か?

 

「やばいな」

 

踵を返そうとした瞬間、雪面がぷつぷつと沸騰し始め、中央に渦が生まれる。吐瀉物に似た悪臭が立ち込め、渦から伸びた漆黒の蔓が俺の靴紐に絡みつく。

 

耳朶に触れたのはエンジン音ではなかった。獣毛を逆立てた猫が尻尾を打ちつけるような低い振動。

 

「……まさか」

 

雪原に影が落ちる。薄墨で描いた円形の輪郭。ヘッドライトの位置にふたつの眼窩が開いている。

 

「骨型スクーターかよ。洒落てるな」

 

皮肉を飛ばすより早く鎖骨が軋んだ。俺は咄嗟に体を捻る。轟音と共に髑髏の頭部を持つバイクが俺の右袖を掠め通り過ぎた。風圧だけで肩口が裂ける。

 

「うぉっ!?」

 

バランスを崩した足が雪を掻く。モンスターバイクは弧を描き旋回し、そのバイクに乗る人物はこちらを見る。

 

「はっ、まさか、本当に現れるとはな、こんな屑を助ける為にな」

 

「・・・てめぇも終天教団という訳か」

 

そこに現れたのは、赤い髪に眼帯をした女性であり、僅かに聞こえた暴力的な口調と合っていた。

 

「あぁ、そうだな、最も異教徒であるてめぇを殺す為にだがな」

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