ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
バイクの咆哮が引き裂く。まんじがエンジンをフルスロットルに上げたのだ。
こちらに飛び込んでくる。銀灰色のフレームが殺人的な角度で湾曲する。俺は脚の筋肉をぎゅっと収縮させた。
《フィジカルインパクト!》
跳躍。空中を滑るように――だが物理法則を嘲笑う速さで――俺は五十メートルほど跳ぶ。眼下でまんじがハンドルを回すが間に合わない。バイクは無防備に雪原を滑ってゆく。
「クッ……跳ぶのかヨ!?」
歯噛みするまんじの声が妙に甲高く響く。俺は空中で重心を制御し、三点着地を決める。雪が舞い上がり虹色の粉塵になった。
「へェ……? 教祖のお気に入りってのは伊達じゃないようだねェ」
「ほざくな。俺の目的は変わらない」
「・・・ナイトメアを探すって訳か!させるかよ!」
まんじがバイクを俺に向ける。
だが。
「上手くいかせるさ。友達を救うために必要なことだ」
俺はそう言って、まんじとの距離を測る。
まんじはそれを察知してバイクで走り出す。
「行かせるか!」
まんじはそう言って俺に向かって走ってくる。
「はっ!」
俺は足に力を入れ、同時にカプセムを装填する。
『グッドモーニング! ライダー!ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!ウイング!』
俺の背中に展開した翼が脈打つたび、地面が急速に遠ざかり、朽ちた鳥居の森がミニチュアのように広がった。
「ククッ……飛ぶのかい! さすが教祖のお気に入りだねェ!」
地上でまんじがエンジンを唸らせる。その顔には狂喜が走っていた。バイクの前輪が雪原を削りながら宙に浮く――否、物理法則を無視して垂直に疾走してきたのだ。
「おいおい……バイクまで飛ぶのかよ!?」
「あァ?ここは夢の中だぞ、こんな事は」
突然、風を切る音が凍りついた。
まんじの背後で空間が歪んだ。
現れたのは―――民俗学を汚染した異形だった。
身体は人型だが、皮膚は祭りの提灯を剥ぎ合わせた紙切れ。頭部には修復不能なほど繋ぎ合わされた民俗信仰の偶像が積み木のように重ねられ、顔面には何枚もの顔写真がマスキングテープで貼られていた。腕は左右非対称で、一方は招き猫の関節が露出し、もう一方は鳥居を模した棍棒が生えている。
「お前は……」
万津が声を詰まらせた瞬間、
「――ギィ」
その化物は喉奥から金属を引きずるような呻きを発し、棍棒を振り上げた。
狙いは――まんじ。
「なんだと!?」
まんじの眼球が限界まで見開かれる。咄嗟にバイクのハンドルを捻るが遅い。ナイトメアの棍棒が青白い燐光を纏いながら横薙ぎに走った。
スコーン!
鈍い衝撃音と共に、まんじの左腕が折れた。
バイクが横向きに傾き、まんじは空中で姿勢を崩す。
「クッ……!」
雪面に向かって墜落しながらも、後輪が接地し、火花を散らして雪煙をあげた。
怒号と共にナイトメアを睨む。
「……そうか」
まんじの唇が歪む。
「イカレ野郎のナイトメアもまたイカれてやがるか!」
その言葉が終わる前にナイトメアは次の一撃を準備した。棍棒の先端から五寸釘が突き出る。まんじの車体にめり込む直前。
「はぁぁ!」
俺はナイトメアを蹴り飛ばす。