ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
冷たい風が、逮捕令状を読み終えた刑事官の指を震わせていた。
「真宮寺是清。貴殿はソムニウムにおける事実と共に、調査を行った。そして、事件に関与した疑いで拘束される。これより特殊隔離施設へ移送する」
手錠が嵌められる乾いた音。
真宮寺は俯いたまま一切抵抗しなかった。
「……当然の報いですね」
彼の声は枯れ葉よりも乾いていた。
「まさか僕が……こんな形で事件がバレてしまうなんてな……」
その言葉に含まれる悔恨が心に沁みていく。
俺はただ黙ってその背中を見ていた。
「君が僕を止めてくれたんですよね?」
不意に真宮寺が俺を振り返った。
凍てついた視線の奥に、以前にはなかった清らかな諦めがあった。
「ありがとう」
「礼なんかいらないさ」
俺は、そのままポケットに手を入れながら答える。
「・・・まさか、こんな事になるとは思わなかったよ。俺は」
「ククッ、まぁね。君がいてくれなかったらどうなっていたんだろうね?」
「それこそ分からないな」
「どうしてだろうか。これで良かったと思ってしまう自分がいるんだ」
そう言いながら真宮寺は手錠を嵌めた両手を持ち上げて苦笑した。
「本当なら僕はもっと多くの人と巡り合うはずだったんだろうけれど」
金属の冷たさが妙にしっくりくる。
「だけど……」
言葉を続けようとした瞬間、
「君が僕を止めてくれたことには本当に感謝していますよ。そうでなければきっと」
さらに深い溜息が漏れる。
「もしも君に出会わなかったら」
警察車両の方角を見遣ってから続ける。
「僕はいつまでも逃げ続けることが出来なかったでしょうね」
その顔には安堵と寂寥が入り混じった表情があった。
俺は何も言わず視線を逸らした。ここで言葉を重ねても何も変わらないと思ったからだ。
そして俺たちはそれぞれ別の方向へ歩いていくのだった———。
「やぁ、お疲れ様」
その声は冬の朝霧のように儚く、それでいて芯が通っていた。
喫煙スペースの隅で缶コーヒーを呷っていた俺は、ゆっくりと視線を持ち上げる。
「えっと、あなたは?」
目の前に立つスーツ姿の男に聞き覚えがない――否、忘れていたわけじゃない。
龍木来斗だ。ABIS捜査官で俺の二年先輩。
右目に伊達さんと同じAIが収まった義眼。
左目――本来の瞳のほう――はどこか疲れていた。
「そうだね、こうして会うのは、初めてだね。僕は龍木来斗。君の先輩かな」
そう、紹介されながら、俺もまた。
「そうでしたね、初めまして、俺は万津獏」
そう、俺達は、そのまま握手をする。
「それで、俺に一体何の用で」
「いや、まぁ、そのなんだ。悩み事があったら、話をしようかなぁと思って」
そうした苦笑いをする彼に、俺もどこか共有してしまう。