ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
俺は屋上のフェンスに寄りかかりながら、雲一つない青空を見上げていた。龍木さんの言葉が耳の奥で反響している。
「才能が呪いだと感じるなら……それでもなお」
風が吹き抜け、俺の制服を翻す。思考が堂々巡りしているのが自分でもわかる。真宮寺を止められたことを喜ぶべきなのか。それとも友を追い詰めた罪悪感に苛まれるべきなのか。
その時だった。
「なんだ、こんなところにいたのか」
振り返ると、最原が肩で息をしていた。
その後ろには赤松が大きく手を振り、夢野がゆったりと歩いてきて、茶柱は夢野をサポートするようにそばにいた。
「探したぞ。教室にも寮にもいなくてさ」
「授業はサボらない主義じゃなかったの?」
赤松が冗談めかして笑う。
「今は休憩かな」
俺はそっけなく答え、再びフェンス越しの景色に目を戻した。
「相変わらず素直じゃないね」
最原が俺の隣に並び立つ。
「何かあったのか? それとも……真宮寺くんのこと?」
心臓が小さく跳ねた。やはり見抜かれている。
「別に。ちょっと考え事をしてただけだ」
「嘘つきじゃのぅ」
夢野が小さな声で言いながら、俺の斜め後ろに立った。
「悩んでいるのだろう?」
「なんでわかるんだよ」
「お主の顔に書いてあるのだ」
夢野は珍しく微笑んでみせた。
「ウチも同じことを思ったことがあるのだ。魔法の杖も使い方次第で凶器になるってね」
「私の場合は武術ですけど」
茶柱が自信満々に言ってから、「男死は徹底的にやるつもりですけど」と付け加えた。
赤松が腕組みをして俺に向き直る。
「真宮寺くんの件だけど……誰もキミを責めたりしないからな」
「わかってる。けど……」
「けど?」
「もしもあの時俺が違ったやり方を選んでいれば……真宮寺もあんな形で終わらずに済んだかもしれない」
言葉尻が震えた。自分が怖くなった。
すると最原が静かに言った。
「キミは優しすぎるんだよ。全てを自分のせいにする必要はない」
「でも――」
「でも、じゃない」
赤松が一歩前に出て俺の肩を強く掴んだ。
「万津君がいなければもっと悲惨な結末を迎えていた。それは事実だよ」
「だけど……」
「万津は善行を積んだのだ」
夢野の落ち着いた声に思わず顔を上げた。
「ただし、善行というのは往々にして後味が悪いものなのだ。他人の悪意を引き受けなければならないのだから」
「それでも……」
「よくやったのじゃ。少なくとも……ウチにとっては英雄なのだ」
英雄なんて言葉、似合わない。俺はただの平凡な学生でしかないのに。
「万津さん」
茶柱が俺の顔を覗き込んだ。
「真宮寺先輩のこと、ずっと気にかけてたろ? 毎日のように授業ノート届けてあげてたし」
「それは……当たり前だろ」
「そういう当たり前ができること自体が偉いんだよ」
最原が補足するように言う。
「キミがいなかったら真宮寺くんは孤立したままだった。今回の一件も含めて、キミはきちんと接点を持とうとしていた。それだけで十分だ」
「十分じゃ……」
「十分なんだってば!」
赤松が半ば強引に遮った。
「もし今回のことがキミの負担になってるなら……私たちも一緒に背負うから!」
彼女の言葉に続けて夢野がうなずき、茶柱も力強く両手を挙げた。
「背負うって……」
「そうだよ。友達を支えるくらい当然のことだろ?」
最原の柔らかい笑顔が眩しい。
「みんな……」
視界が潤んできた。泣き顔なんて見せたくなくて、俺は空を見上げた。
雲一つない青空。昨日と変わらないのに今日は少しだけ広く感じる。
「ありがとな」
小さな声だったけど、ちゃんと届いたみたいだ。
「それじゃ!明日からまた通常運転だぞ!」
赤松が元気よく背中を叩いてきた。
「そうだな……やってみるよ」
俺は深呼吸をして前を向いた。
真宮寺のことは忘れられないし、才能に対する不安もまだある。
少なくとも、俺は、彼らを助けられて、良かった気がする。