ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「ナイトメアが二体だと?」
俺の声が裏返った。普通のケースでは絶望ビデオによるナイトメア化は宿主一人につき一体のはずだ。だが窓の外では巨大な影が二つ蠢いている。
片方は筋骨隆々とした鋼鉄の巨人──典型的な〝暴力〟の具現だ。もう一方は流れるような肢体で宙を舞い、まるで芸術作品のごとく美しい。相反する性質が両立している。
「自ら増殖するナイトメア……いや違う」
観察を続けるうち奇妙なことに気づく。二体のナイトメアの質感が明らかに異なる。鋼鉄の方は表面に無数の傷があり〝長い年月を経た戦士〟を思わせる。対して宙を舞う方は生まれたての雛鳥のように新鮮だ。
「伊達さんには二つの悪夢があるのか?でも、そんな事は」
テコが白衣の襟を直しながら薄く笑う。
「いいセンスだね。でも惜しい」
「何が惜しいだって? コロシアイゲームの主催者みたいな台詞だな」
「ふっ……なかなか鋭いね」
テコはわざとらしく拍手をする。まるで舞台演出のようだ。
「確かに同一人物から二種類のナイトメアが誕生することは稀だよ。でも」
彼の細い指が虚空を切る。
「一人の体に二つの魂が同居していたら?」
「なん……だと?」
俺は息を詰まらせた。まるで衝撃的なトリックを暴露された探偵のように。
「それはつまり……二重人格か?」
「近いね」
テコが満足げに微笑む。
この時にこの時になって、俺は思い出す。
「そうか、アイボゥ」
伊達さんの左目にはアイボゥさんがいる。
彼らは常に繋がっている為、ビデオを見る際には、2人同時に見た可能性がある。
けれど、なぜ。
「・・・そうだね、あえて答えを言えば、互いに邪魔だからじゃないかな?」
「邪魔?」
「ナイトメアは夢主を悪夢に陥れる事を目的にする。けれど、悪夢を見せる前に死んでしまったら、ナイトメアの目的である悪夢も敵わない」
「・・・つまりはナイトメアは共通の目的の為に争ったのか」
「そういうこと」
テコが淡々と言い切った。
いや待て。なんか引っかかる。
「でも」
俺は思考を巡らせる。
本当に、それで合っているのだろうか。
「このままじゃナイトメアも両方共死んでしまって、僕としては嫌だからね。ここは手を組まないか」
「・・・」
前回のまんじと同じく手を組む。
その選択肢も確かにある。
情況を見ても、テコの言葉には嘘はないように見える。
けれど、なぜだろうか。
俺の中に引っかかる事。
ソムニウム世界にある物は、夢主にとって重要な何かがある。
先程の新聞にあったサイクロプス事件。
これが、伊達さんの悪夢に何か関係があるのか。
「君が悩んでいる間にも、ナイトメアがより力をつけて、倒せなくなる可能性もあるよ」
「ぐっ」
その言葉に、俺は、答えを焦らされる。
「・・・分かった」
これも、伊達さんを助ける為。
そう思い、俺は覚悟を決める。