ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「っ!」
まずは一体。
その思いと共に、俺はすぐにその場で距離を離す。
先程までのような連携紛いの攻撃を恐れる必要は無くなったが、今度はその圧倒的な物量による攻撃が簡単に予想出来る。
その場合、この姿のままでは勝てる保証などどこにもない。
ならば、ここで取る選択肢は一つ。
「別の姿になる。確かにそれは正しい選択肢だね」
「っ」
聞こえたテコの声と共に、ナイトメアに向かって、何かが投げられる。
それは、ナイトメアの身体に装着されると共に、その身体は霧に覆われる。
「これは」
その現象に、俺は見覚えがあった。
いや、むしろ、体感していると言って良いだろう。
俺がゼッツへと変身する時に似た事が、ナイトメアに起きている。
「テコ、お前、何をしたんだ」
「何をか、そうだな、これはいわば実験だよ」
「実験だと」
黒い霧が鋼鉄のナイトメアを包み込んだ。まるで舞台上で垂れ下がる暗幕だ。金属の軋み音が次第に弱まり、代わりに湿った布が擦れるような音が混じり始める。嗅覚が捉えたのは錆びた鉄臭から甘酸っぱい樹液の匂いへと変貌する香りだった。
「ふむ……まるで蛹が殻を脱ぐ音だな」
テコが楽しげに呟く。その言葉通り、霧の奥で何かがひしゃげるような微かな破裂音がした。次の瞬間——
「スゥッ……」
確かに聞こえた。誰かの呼吸。規則正しく、しかも温かい空気を吸い込む音。
(おかしい……これは普通の人間の呼吸だ)
霧が薄れはじめ、輪郭が滲み出す。影法師のシルエットが伸び縮みする。いや違う。本来なら巨大なはずの鋼鉄が、人間の等身大に萎んでいくのだ。
「まさか……そんなことが」
霧がさらに晴れる。灰色がかっていた影が色を取り戻し、やがて——
「……伊達さん……?」
声が震えた。そこに立っていたのは、左目を失った隻眼の男。伊達要そのものだった。
その人物は、そのまま自分の身体を確認するように見つめる。
「おいおい、これは一体どういう事なんだぁ?」
「やぁ、初めましてというべきだね、世島犀人」
そう、テコは目の前にいる伊達さんそっくりな奴に向けて、そう挨拶する。
「・・・ふぅん、あまりにも奇妙過ぎて、よく分からないけれど、俺を生き返らせたのはお前って事で良いのか?」
「生き返らせた訳じゃない。僕達は伊達要の中にあった世島犀人の僅かな絶望を増幅させたに過ぎない。その結果、伊達要から生まれたナイトメアと世島犀人から生まれたナイトメアが同時に生まれただけに過ぎない。そして、そのベルトを使って、人間の姿に安定させただけだ」
「一体、何を」
「ヒントは初めからあったはずだよ。サイクロプス事件の事は、まぁ、その事件を知らない君では無理な話だけどね」
そう言うと、テコは、その手にあるカプセムを操作する。
すると、テコと世島犀人の前に扉が現れる。
「それじゃ、生きてたら、また会おう」
「まっ」
そうしている間に、2人は、その場から姿を消した。