ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「どうやら戻ってきたか」
伊達さんはベランダの手すりに寄りかかり、午後の日差しが逆光になり顔半分を陰に染めている。
「伊達さん……そのサイクロプス事件ってなんです? ソムニウム世界であんなものが出てきたってことは」
「俺の過去だって?」
伊達さんは口角を吊り上げたが、隻眼の奥には深い湖のような濁りがあった。
「さっきはテコとかいうガキと話してたみたいだな。サイクロプスって響きにピンときたのか?」
「ああ」
「面白い推理だ。でもな」
灰皿に煙草を押し付けながら、伊達さんがふいに万津の方へ向き直った。
「過去というのは墓場みたいなもんだぜ。掘り返しても出てくるのは腐った骨か亡霊だけ」
「それでも……あなたの中に潜んでいたんです。あのナイトメアは」
伊達さんの左手がポケットから何かを取り出した。
「・・・ソムニウム世界で何があったんだ?」
「伊達さんのナイトメアと戦いました。二体のナイトメアと戦いましたが、もう1人は終天教団の幹部の1人によって、ナイトメアから人へと変わりました。その、姿が伊達さんそっくりで」
「・・・っ」
突然、伊達さんは頭を押さえながらしゃがみこんだ。
「あぁ〜!」
伊達さんは大声を上げる。
「伊達さん!?」
その異常な様子に思わず、近くにかけよる。
「悪い・・・少しだけ、休ませてくれ」
「もちろんですよ」
俺は椅子を持ってくると、座らせた。
しばらく安静にしてたのか、少しは落ち着いたのかゆっくりと口を開く。
「話すべきか……いや……どうだかな……」
伊達さんが指を絡ませたまま目を伏せた。ソムニウム世界での出来事がフラッシュバックしたのか、額に玉のような汗が浮かんでいる。
「何を……?」
思わず身構える。
「見ていろよ」
伊達さんは深く息を吸い込むと、左手の指先で右目の周りを軽くなぞった。
ぴくりと痙攣するような動き。肌が引きつれ、そこから蜘蛛の巣状の皺が広がっていく。
「ちょっと待て!」
制止しようとするが遅い。
指先が頬を撫でた時、皮膚の継ぎ目のようなものが浮かび上がった。まるで印刷された細線のごとく。
「おい伊達さん──」
「静かにしてくれ」
冷たい声だった。伊達さんは剥がれかけた継ぎ目を右手の親指と人差し指で挟み込み、
べり…
柔らかい粘着質な音とともに“皮膚”を引き上げた。
透明な糸が何本も伸びていく。シリコンの表皮の下からは鈍く光る金属フレームが露わになる。人工毛髪が接着されていた痕跡が見える。
俺の喉が灼けるような痛みで詰まった。
「……嘘だろ」
声が出ない。眼球だけが飛び出さんばかりに見開かれている。
シリコン製の人工皮膚というものは意外と薄く柔軟性があるので、素人目には本物と区別できないことがある。だが──
シリコンマスクの下から現れたのは──
「えっ」
「これが、俺の素顔だ」