ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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素顔 Part4

「行くぞ万津!」

 

伊達さんの声が遠く感じる。足元が突然滑るように沈んだ。視界がグラデーションブルーに染まっていく。鼓動が耳の中で太鼓を叩くように反響した。重力が螺旋状に捩じれていき──

 

落ちる。

 

気がつけば足裏が冷たく固い床を踏んでいた。視界が徐々に鮮明になる。目の前にそびえるのは巨大な銀色の筒体──全長二百メートルはありそうな有人ロケットが威圧的に屹立していた。その横には月面車が整備中の格納庫、無菌室のような白い宇宙服工房、天井にプラネタリウムが投影される多目的ホール……これらが無秩序に接続され、歪んだ積木細工のように拡がっている。

 

百田解斗のソムニウム世界だ。彼の憧れが結晶化した希望の宇宙センター……そして同時に、誰よりも高いところを目指した者ほど深く堕ちる絶望の淵でもある。

 

「本当に彼らしい世界だな」

 

聞こえて来た伊達さんの低い声がした。彼の左目に映るのは、天井に突き刺さったまま停止したシャトルバスのフロントガラスと、それに反射して歪む光。

 

「来るぞ」

 

突如として轟音が世界を裂いた。

 

床が重低音で震える。視界の隅、噴射炎の幻影を引いて墜ちてくるのは──白翼。左右二十枚の羽が電磁ノイズを纏いながら舞い散る。その中央に佇むシルエットは確かに天使だった。輪郭を飾る燐光、背中に咲く幾層もの翼。なのに身体の節々には蜘蛛の巣状の罅があり、そこから覗くのは銅色の機械骨格だ。

 

百田解斗の恐怖と憧憬が凝固した異形。金属の瞳孔がこちらを捉えた瞬間、

 

甲高い共振音と共に床材が弾け跳んだ。一秒前までいた位置が真空になっていた。まるで局所的に地球引力が消えたかのような無重量地帯──エンジェルナイトメアが指先で虚空を掴むと、そこに産まれた重力井戸が周囲の瓦礫を飲み込む。俺の靴底がふわりと浮き上がりかけたのを咄嗟に壁蹴りで殺す。

 

エンジェルナイトメアの羽が微かに震えた。次の瞬間──数百本の羽根が弧を描いて発射される! 白い尾を引く弾幕が網の目のように迫る!

 

「させるかッ!」

 

俺は迷わず腰のゼッツドライバーに手を当てた。夢空間特有の光子粒子がベルトへ吸い寄せられていく。

 

左腕を水平に伸ばし親指で下唇を掠める所作──

 

「変身!」『グッドモーニング! ライダー! ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ! ウイング』

 

宣言と同時に赤黒の閃光が迸る。胸部コアが灼熱の鼓動を刻み、背中から真紅の主翼が蝶番を軋ませて解放された。肩胛骨を起点に伸びる八本のサブウィングが折り畳まれ、一瞬で巡航形態へと展開。流線形の装甲が肉体にフィットしていく感触に合わせて緑色のホログラムラインが光の血管のように浮かび上がる。

 

《仮面ライダーゼッツ・フィジカムウィング》。

 

今──双翼の戦士は大気を引き裂き飛び立った!

 

飛翔速度は即座に音速域。白い羽根群が紙屑のように遅れて見える。右に捻って一閃、左斜め上方へ急上昇──複雑すぎる軌道なのにマスク内の補助視野が的確に敵位置を照準し続ける。奴は自由落下しながら両腕を開き、掌から球状の引力弾を放ってきた。空間が湾曲し重力の水滴が凝縮する!

 

「こっちだよ!」

 

わざと避けずに真正面から接近。右手首を反らせ掌底を叩き込んだ! 接触と同時に背部ウィングのスタビライザーが全力稼働

 

轟音とともに斥力砲が炸裂した! 巨大な斥力波紋がナイトメアを押さえつけ羽根を焼き払い──それでもなお、敵の瞳は淀んだ銀河のように煌めいている。まるで破壊するほど美しさを増す夜天のようだ。

 

(これでも削り切れないのか……!)

 

ならば質量をまとった物理打撃のみ。翼を畳み推進レバー全開! 急降下突撃──否、それは罠だった。

 

突如下方から黒い泥濁のような重力流が噴出した! 身体が錘をつけたみたいに鈍くなる。脚の人工筋肉が悲鳴をあげ

 

(落ちる──!)

 

落ちながら見た空は逆さまの流星雨のようで、あまりにも綺麗だった。

 

「だからこそ終わらせる!」

 

拘束を破るために膝関節を極限まで捻じ込み全身を捻り上げ──跳んだ。

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