ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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素顔 Part5

落下と上昇が同時に押し寄せる歪んだ空域。

エンジェルナイトメアの羽根が撒き散らす重力ノイズが、青空を黒い網目模様に染めていた。

 

「……クッ!」

 

フィジカムウィングの主翼が風切り音を引き裂き、俺は連続スラロームで羽根弾幕をかい潜る。

しかし避けるたびに身体が“空に押し潰される”ように軋む。

羽の一枚一枚が着弾点で局所重力を発生させている――触れた瞬間、骨が地面へ引きずり落とされる。

 

(あれをまともに受けたらフィジカムウィングでも保たない……!)

 

視界の端で、ナイトメアが両翼をゆっくり広げた。

動作は優雅だが、周囲の空間が悲鳴をあげて撓む。

 

次の瞬間、

――天地がひっくり返った。

 

「重力反転……!? まずい!」

 

俺の身体が逆さに吸い上げられ、青空に落下していく。

上下感覚が消え、機体制御がまとまらない。フィジカムの翼が揺らぎに捕らえられ、推進が取れない。

 

その瞬間を、ナイトメアは逃さなかった。

 

白い羽根が一斉に射出される。

数百本の光の爪が、音速の円錐を描きながら迫り――

 

「……ッ、ならば……!」

 

俺は逆さまの空を睨みつけ、ドライバーに指を伸ばした。

フィジカムの速度では突破できない。

逃げても押しつぶされる。

――なら、正面から砕くまでだ。

 

胸のコアが轟き、スーツを構成する赤黒い光子が一度収束する。

 

俺は羽根弾幕の中央へまっすぐ突っ込んだ。

 

羽根が目前に迫り、世界が白で埋め尽くされる――

その中心で、彼は叫んだ。

 

「俺ドライバーッ……バリアカプセム、セット!!」

 

カチリ、と低く重い音。

 

『バリア!』

『メツァメロ! メツァメロ!』

『グッドモーニング!ライダー!ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!バリア!』

 

緑黒の装甲が爆ぜるように展開し、主翼が消失。

代わりに両腕へ巨大な硬質盾――レムディフェイスが形成される。

銀のノンレムアームがぎゅうっと膨張し、生命力が“脈打つように”加速する。

 

フィジカムの俊敏さは捨てた。

その代わりに得たのは――

 

「前面制圧の、力だッ!!」

 

俺は左右の盾を持ち上げ、羽根の奔流に真正面から突っ込んだ。

 

無数の羽根が盾へ吸い寄せられる瞬間、重力波が爆ぜる。

普通なら押し潰されるほどの圧力――だが、レムディフェイスはビクともしない。

黒緑の光が盾の表面を走り、重力の揺らぎを“喰うように”相殺していく。

 

轟音と共に羽根が弾け飛ぶ。

 

「……なっ!?」

 

エンジェルナイトメアの瞳孔が蒼白に揺れる。

自らの重力弾幕が、俺の盾の前で押し返されたのだ。

 

俺はさらに叫んだ。

 

「突破するッ!!」

 

盾を前に構え、空中を突進。

弾幕の中心を切り裂き、重力圧で粉砕された羽根が光の砂となって流れ落ちる。

その勢いのままナイトメアへ肉薄――

 

「お返しだァッ!!」

 

レムディフェイスを拳のように握り、横薙ぎに一撃。

 

防御盾とは思えぬ衝撃波が天使の胸部装甲を歪ませ、

ナイトメアの身体が螺旋状に吹き飛んだ。

 

壁に叩きつけられる瞬間、ナイトメアの背翼が悲鳴のように軋む。

 

重力が軋む音が止んだ。

 

俺は息を荒らしながら、盾を構え直した。

 

「……ここからが反撃だ。

 重力で押し潰す戦いは……もう効かないぞ!」

 

緑黒の盾が光を帯びる。

空中戦の主導権は、完全に俺へと傾いた。

 

それと共に、ゆっくりと歩くと。

 

「そういう訳にはいかないなぁ」

 

その一言と共に聞こえて、見つめる。

 

「世島」

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