ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「さて、始めるとするか」
それと共に、その手には武器が現れる。
『ブレイカムバスター』
奴の言葉と共に、その手に武器であるブレイカムバスターの銃口が、まるで俺の呼吸の間合いまで読み切っているかのようにぴたりと向けられた。
「万津。キミの“反応”を見せてもらおうか」
ノクスナイトが呟いた次の瞬間、漆黒の砲撃が走る。
俺はエスプリムバリアの装甲を前面に展開し、腕を交差させて受け止める。
――重いッ!
衝撃が腕から胸へ、胸から背骨へ一直線に抜けていく。
バリアが軋む音が、まるで悲鳴みたいに耳の奥で鳴った。
続けざまに二射、三射。
避ける隙どころか、息をつく暇すら与えねえ。
「くっ……! こいつ、どんだけ正確なんだよ……!」
俺が飛び退いた先に、また一歩遅れで砲撃が追いかけてくる。
狙いがまるで機械。心の揺らぎも、戦場のノイズも関係ない、そんな精度。
「エスプリムバリアでも……押し返せねえのかよッ!」
バリアを最大強度にしても、後退を止められない。
踏ん張るたび、足元のアスファルトが削れていく。
ノクスナイトは微動だにしない。
まるで俺を試験体のように観察しながら、ただブレイカムバスターを撃ち続けてくる。
「防ぐだけで手一杯ってわけだね、万津。
キミの“限界”は――この程度か?」
挑発でも怒気でもない。
淡々とした、分析するような声。
だからこそ、余計に腹が立つ。
俺は歯を食いしばり、砲撃の合間に一歩だけ踏み込む。
砲撃が当たれば終わり。だが、退いても終わりだ。
「まだ……終わらせる気なんて、ねえよッ!」
エスプリムバリアの輝きを一点に収束させ、腕を前へ突き出す。
ノクスナイトの攻撃を押し返し、その黒い影に踏み込むために――。
ブレイカムバスターの砲身がわずかに角度を変えた瞬間、嫌な予感が背筋を刺した。
次の一撃は――避けられねぇ。
黒い光弾が一直線に迫り、俺は咄嗟にレムディフェイスを前へ構える。
「ぐっ……!」
衝撃で腕が大きくしなる。盾越しでも、骨が軋む感覚ははっきり伝わってきた。
一撃が重すぎる。防御の度に体力が確実に削られていく。
続けざまに左右へ散弾のような砲撃が降る。
右を防げば左から。左を受ければ真上から。
ノクスナイトの攻撃リズムは、まるで俺の動揺に合わせて変化しているみたいだった。
「……嘘だろ、攻撃が…速くなってやがる……!」
いや、違う。
俺が遅れているんだ。反応が、一歩ずつ。
ブレイカムバスターが銃型から一瞬で刃を展開し、ノクスナイトの影が消える。
来る――!
背後だ、と気づくより早く、鋭い斬撃が盾を弾き飛ばした。
レムディフェイスがズレる。
胸元のバリアが一瞬だけ薄くなったのが、わかった。
「っ……!」
その隙を逃すはずがない。
足元に重い衝撃が叩きつけられ、膝が沈む。
まずい――立ち位置が崩れた。
ノクスナイトの影が揺れ、すぐに視界の端から消える。
高い位置から圧が迫り、俺はレムディフェイスを再展開するが――。
「遅いよ、万津」
刃が盾の縁を抉り、火花を散らしながら腕を押し下げてきた。
以前なら避けられたはずの軌道。
なのにいまの俺は受けるしかできない。
「ぐ……お、おおおッ!」
踏ん張るたび、足元が少しずつ後退する。
アスファルトが削れる音が耳に刺さり、肺が焦げるように熱い。
ノクスナイトの姿は静かで、無駄がなく、
追い詰めているという意識すら感じさせない。
単に――分析して、最適解をぶつけているだけ。
「万津。
エスプリムバリアで“守り切る”のが、そんなに難しいかい?」
その言葉が、不意に心の芯を抉った。
焦りが、反応をさらに鈍らせる。
砲撃。斬撃。踏み込み。
その全てが俺の一歩先を読み、狙い、押し返してくる。
1発。
2発。
3発――もう数えてる余裕なんてねえ。
レムディフェイスが軋み、腕が痺れ、
脚がわずかに震え始めているのが自分でもわかった。
(防いでも、防いでも……押し込まれてる……!
これじゃ――本当に守り切れねぇ……!)
ノクスナイトがゆっくりと刃を構え、言葉だけは妙に静かに響いた。
「そろそろ限界だろう、万津」
俺は――まだ、倒れるわけにはいかねぇのに。
ノクスナイトが静かに息を吸い、ブレイカムバスターを水平に構えた。
空気の密度が一段階重くなる。いや――世界そのものが、圧縮されていくみたいだった。
「……万津。ここで終わりにしようか」
ブレイカムバスターのスロットに、黒光りするカプセムが差し込まれる。
回転音が、耳鳴りのように低く響く。
『ブレイカムキャノン!!』
黒い閃光が解き放たれた。
漆黒のレーザーが白い縁取りを残したまま一直線に伸び、
途中の空間をごっそり“抉り取る”ように消し飛ばしながら迫ってくる。
「クッ――!」
レムディフェイスを前に掲げる。
だが、衝突の直前、黒い光線の中心で光がねじれた。
着弾。
世界が白に塗り潰された。
轟音すら存在を奪われ、しばらく何も聞こえない。
鼓膜が空っぽになったみたいな、無音の衝撃。
続いて、遅れて来る――
「――ッッッ!!」
真っ白な爆炎が噴き上がり、
爆発というより消滅した空間が戻る反動のような衝撃波が体を襲う。
エスプリムバリアの防御膜が弾け、
レムディフェイス越しでも皮膚が焼けるように熱い。
膝が沈む。
腕が痺れる。
息が、吸えない。
(これ……受けきれねぇ……!
こいつの必殺、バリアごと持ってかれる……!)
ノクスナイトの影が、白煙の向こうでゆらりと揺れた。
まだ構えを解いていない。
「さあ、万津。
次の一手が遅れれば――消えるよ」
本気で“世界ごと消す”つもりだ。
ここで踏み込まなきゃ、本当に終わる――。