ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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神鳴 Part1

目を開けた瞬間、胸の奥がずしりと沈んでいるのが分かった。

――負けた。

その事実だけが、やけに鮮明だった。

 

横を見ると、百田が静かにベッドに横たわっていた。

普段の勢いはどこにもなく、呼吸が浅くて、握った拳さえ震えている。

こんな百田を見るのは初めてだ。

 

「……守れなかったのか、俺は」

 

声に出した途端、喉が張り付くように痛んだ。

夢の中で何があったのかも、どれほど怖い思いをしたのかも、想像するだけで胸が締めつけられる。

 

俺だけが立っていて、肝心な友達は傷ついている――

その光景が、あの日と同じで、息がうまくできなかった。

 

(また……俺だけが生き残ったのか)

 

病室の扉が勢いよく開き、最原と赤松が飛び込んできた。

 

「万津くん! 大丈夫!?」

赤松が駆け寄り、俺の肩に手を置く。震えていた。

 

最原も眉を寄せて、俺の表情を探るように見つめてくる。

「無理してない? 君、戻ってくるのが遅かったんだ……みんな心配した」

 

その後ろから、伊達さんと瞳に、ABISの面々も姿を見せた。

普段は飄々としている伊達さんまで、真剣な顔つきで俺を覗き込んでいる。

 

「無茶するなよ、万津」

伊達さんの低い声が、逆に胸に刺さる。

 

「……俺は平気です。でも、百田が……」

 

言った瞬間、全員の視線が百田のベッドへ向かった。

その静寂が、敗北の痛みをさらに深く刻みつけた。

 

「よし……もう一回、潜ります」

 

ベッドから降りようとした瞬間、腕をつかまれた。

伊達さんだった。いつもの軽さはなく、鋼のような力で俺を止める。

 

「バカか、お前は。今の状態で入ったら、今度は帰ってこれねぇぞ」

 

低い声だった。怒鳴ってはいないのに、胸が強く押し返されるような圧がある。

俺は食い下がろうとした。

 

「でも、百田を放っておけません。ノクスナイトも、まだ……!」

 

「助けたい気持ちは分かる。だけどな──」

伊達さんはゆっくり手を離し、俺の目をまっすぐ見た。

 

「ヒーローってのは、倒れちまったら終わりなんだよ。

お前は今、戦える顔をしてねぇ。まずは自分を戻せ。いいな?」

 

その言葉は、責めるのでも怒るのでもなく、ただ本気で俺を案じていた。

反論できず、悔しさだけが喉の奥に残った。

 

伊達さんの手を振りほどき、俺はふらつきながらもドアへ向かった。

 

「……行かないと。俺が行かなきゃ……」

 

足が重い。頭も霞がかかったみたいに痛い。それでも、前に出ようとした。

百田の苦しむ顔が頭に焼き付いて離れない。

 

「万津!」

誰かが呼んだ声がした瞬間、視界が波打った。

 

次の一歩を踏み出そうとした途端、膝が折れた。

床が近づく。音も遠い。自分が倒れているのに、まるで他人事みたいに感じた。

 

(まだ……動ける、はず……)

 

そう思ったのに、身体はもう持ち上がらなかった。

暗闇が広がっていき、最後に聞こえたのは、伊達さんが駆け寄る足音だけだった。

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