ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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神鳴 Part3

「……でも、それでも俺は……」

 喉がひりつく。けれど言わずにはいられなかった。

「生き残ったんです。あの時……俺だけが。助けられなかったくせに、俺だけが……」

 

 罪悪感が胸を締めつける。

 過去の光景が頭をよぎるたび、心臓がずっと重く沈む。

 

 すると苗木さんは、ゆっくりと視線を伏せ、まるで自分の胸の奥を思い返すように言った。

 

「……その気持ち、すごくわかるよ、万津くん」

 

「え……?」

 

「僕だって、希望ヶ峰での学級裁判のこと……いまだに引きずってるんだ」

 

 あの苗木さんが。

 未来機関の学園長として堂々と人前に立つ彼が。

 その言葉を口にした瞬間、息を呑んだ。

 

「生き残った僕らには……“生き残ってしまった”責任がある、って思ったことは何度もある。助けられたはずの誰かのことを、今でもふとした瞬間に思い出すんだ」

 

 苦しそうでも、暗くもない。

 ただ事実を受け止めている人の声だった。

 

「それでも前に進めたのは、その責任を“背負い続けること”が、僕にできる答えだと思えたから。……間違ったとしても、悩んだとしても、僕自身が逃げないって決めたからなんだ」

 

 彼の声はまっすぐで、静かで――優しいのに強かった。

 

「だから万津くんの気持ちは、決して独りよがりじゃない。君だけの痛みでもない。……僕も、同じ場所まで落ちたことがあるよ」

 

 苗木さんは、そっと目線を落とした。語る覚悟を決めるように深く息を吸い――ゆっくりと口を開いた。

 

「……万津くんは、“コロシアイ学園生活”って聞いたことある?」

 

「名前だけ……詳細は、よく……」

 

「そっか。じゃあ、少し話すね。君が自分を責めている気持ちが、どれだけ重いものなのか……僕にはわかるって伝えたくて」

 

 苗木さんは、穏やかな声で続けた。

 

「突然、閉じ込められたんだ。16人で。互いに助け合うはずだったのに……“殺さなきゃ卒業できない”なんてルールを突き付けられて、みんな追い詰められていった。仲間を疑って、裏切られて、時には信じたことを後悔するほどの現実だった」

 

 淡々としているのに、その言葉の奥には熱があった。

 

「僕は何度も思ったよ。“どうして助けられなかったんだろう”って。もっと強く言えていれば、もっと早く気づけていれば……ってね」

 

 胸がぎゅっと痛む。

 自分だけが抱えていると思っていた感情が、重なる。

 

「それでも……みんなの死を無駄にしないために、僕は立ち止まれなかった。苦しかったけど……逃げたら、僕は本当に“あの場所で終わったまま”になってしまう気がしたんだ」

 

 苗木さんは静かに笑った。強がりじゃない、前に進んだ人の笑みだった。

 

「だからね、万津くん。君が抱えてる“助けられなかった後悔”も、“生き残った自分への責任”も……全部、間違いなんかじゃない。むしろ、それを覚えていられる君は、ちゃんと“誰かを想える人”なんだよ」

 

 その言葉は、ゆっくりと胸の奥に染みていった。

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