ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「……でも、それでも俺は……」
喉がひりつく。けれど言わずにはいられなかった。
「生き残ったんです。あの時……俺だけが。助けられなかったくせに、俺だけが……」
罪悪感が胸を締めつける。
過去の光景が頭をよぎるたび、心臓がずっと重く沈む。
すると苗木さんは、ゆっくりと視線を伏せ、まるで自分の胸の奥を思い返すように言った。
「……その気持ち、すごくわかるよ、万津くん」
「え……?」
「僕だって、希望ヶ峰での学級裁判のこと……いまだに引きずってるんだ」
あの苗木さんが。
未来機関の学園長として堂々と人前に立つ彼が。
その言葉を口にした瞬間、息を呑んだ。
「生き残った僕らには……“生き残ってしまった”責任がある、って思ったことは何度もある。助けられたはずの誰かのことを、今でもふとした瞬間に思い出すんだ」
苦しそうでも、暗くもない。
ただ事実を受け止めている人の声だった。
「それでも前に進めたのは、その責任を“背負い続けること”が、僕にできる答えだと思えたから。……間違ったとしても、悩んだとしても、僕自身が逃げないって決めたからなんだ」
彼の声はまっすぐで、静かで――優しいのに強かった。
「だから万津くんの気持ちは、決して独りよがりじゃない。君だけの痛みでもない。……僕も、同じ場所まで落ちたことがあるよ」
苗木さんは、そっと目線を落とした。語る覚悟を決めるように深く息を吸い――ゆっくりと口を開いた。
「……万津くんは、“コロシアイ学園生活”って聞いたことある?」
「名前だけ……詳細は、よく……」
「そっか。じゃあ、少し話すね。君が自分を責めている気持ちが、どれだけ重いものなのか……僕にはわかるって伝えたくて」
苗木さんは、穏やかな声で続けた。
「突然、閉じ込められたんだ。16人で。互いに助け合うはずだったのに……“殺さなきゃ卒業できない”なんてルールを突き付けられて、みんな追い詰められていった。仲間を疑って、裏切られて、時には信じたことを後悔するほどの現実だった」
淡々としているのに、その言葉の奥には熱があった。
「僕は何度も思ったよ。“どうして助けられなかったんだろう”って。もっと強く言えていれば、もっと早く気づけていれば……ってね」
胸がぎゅっと痛む。
自分だけが抱えていると思っていた感情が、重なる。
「それでも……みんなの死を無駄にしないために、僕は立ち止まれなかった。苦しかったけど……逃げたら、僕は本当に“あの場所で終わったまま”になってしまう気がしたんだ」
苗木さんは静かに笑った。強がりじゃない、前に進んだ人の笑みだった。
「だからね、万津くん。君が抱えてる“助けられなかった後悔”も、“生き残った自分への責任”も……全部、間違いなんかじゃない。むしろ、それを覚えていられる君は、ちゃんと“誰かを想える人”なんだよ」
その言葉は、ゆっくりと胸の奥に染みていった。