ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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神鳴 Part6

 医務室を出て一直線に向かったのは、百田が休んでいる部屋だった。

 

 扉をノックすると、少し間があってから中から声が返った。

 

「……入っていいぜ、万津」

 

 扉を開くと、そこにはベッドに腰かけた百田がいた。無理に明るく振る舞おうとしているのが分かる。けれど、その目の奥にはまだソムニウムでの恐怖と混乱が残っていた。

 

 俺の姿を見るなり、百田は目を見開いた。

 

「おい……お前、起きて大丈夫なのか? ほとんど休んでねぇだろ。顔色だって——」

 

「大丈夫ですよ、百田君」

 

 自然と、エージェント時代の癖が出る。口の端をわずかに上げ、いつもの“任務前の笑み”を浮かべていた。

 

 百田は一瞬、言葉を飲み込んだように眉を寄せた。

 

「……なんだよ、その余裕そうな顔。さっきまでボロボロだったろ」

 

「まあ……そう見えたかもしれませんけど。今は平気です。ちゃんと立てます」

 

 本当に、不思議なくらいに足はしっかり地に着いていた。あの絶望の残響が、もう俺を縛ってはいない。

 

 百田は肩を落とし、ため息をついた。

 

「ったく……。心配したんだぞ。お前、倒れる時は派手なんだからよ」

 

「すみません。でも……安心してください。俺は行きます。必ずあなたを助けます」

 

 言葉に迷いはなかった。

 

 百田はしばらく俺を見つめ、それから弱く笑った。

 

「……なら、信じるぜ。お前は来るって、ずっと信じてたからよ」

 

 その言葉に胸が熱くなる。だが今は、泣く時間じゃない。

 

 俺はそっと拳を握りしめた。

 

「行きましょう、百田君。次は……絶対に負けません」

 

 ゼッツドライバーの中央に手を添える。

 深く息を吸い込み、己の迷いを完全に締め出す。

 

「MISSION——START」

 

 ボタンを押した瞬間、視界が白く弾けた。

 世界が反転し、音が、重力が、体の輪郭すらもほどけていく。

 何度も経験した感覚だが、今日は違う。

 胸の奥が静かに燃えている。

 

 そして——落ちた。

次の瞬間、俺はソムニウム世界の虚空に立っていた。

 

 重力が滅茶苦茶な空間。

 宙に浮いた宇宙ステーション、割れた惑星模型。

 漂い続ける破片の間を、光る“羽根”がゆっくりと舞っている。

 

 その中心に——エンジェルナイトメアがいた。

 

 ひび割れた天使の仮面。

 内部からのぞく無機質な機械の眼。

 背中の翼がゆっくりと羽ばたくたびに、周囲の破片がふわりと浮き上がった。

 

 そしてもう一体。

 

 暗い紫の残光を引きながら、宙に佇む黒い影。

 その両眼は異様な冷たさを帯びている。

 

 ノクスナイト——世島犀人。

 

 あの男が、こちらを見て嗤った。

 

「来たか、万津獏……“また”俺の悪夢を覗きに」

 

 エンジェルナイトメアが翼を広げ、ノクスナイトが武器を構える。

 

 ここからが本番だ。

 絶望が二つ、俺を待ち受けている。

 

 ——もう負けない。

 俺はそう強く心の中で呟き、構えを取った。

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