蝶屋敷ができるまで 作:デスカラス
原作で登場した分だけだと花の呼吸は割と未判明の型が多いので、今作は一部オリジナルを使ってます。
苦手な方はご注意ください。
「さぁ、どこからでもかかってくるといいよー。私は逃げも隠れもしない」
師から発せられる長閑な声に、額から冷や汗が頬を伝う。
目の前には木刀を構え微笑んでいる紫織。対するカナエもまた、汗の滲んだ両手で木刀を握っている。緊張で乱れた呼吸をゆっくりと整え、キッと紫織を睨みつけた。
──フゥゥゥ
集中。
ひたすら神経を研ぎ澄まし、目の前の
──全集中・花の呼吸
「肆の型『紅花衣』!」
ダン!と床板を鳴らし、カナエは木刀を振るった。
力強い踏み込みで瞬く間に紫織の目前まで迫るも、その刃は空を切る。たった今目の前にいたはずの紫織が瞬きの一瞬で間合いから出ていた光景に、カナエは目を見開いた。
──移動する瞬間がまるで見えない……ッ!
「っ、伍の型『徒の芍薬』!」
追撃の型を放ち、再度紫織へ肉薄する。
上下左右前後……あらゆる角度から容赦なく刃が紫織へ迫る。吹き荒れる花嵐のような荒々しさと美しさを兼ね備えたその剣技は、まさしく花の呼吸の真骨頂と呼べるもの。
花の呼吸。
花柱・草加紫織によって直々に叩き込まれたこの呼吸は、その名に恥じぬ美しさを放つと同時に高い身体能力を要求するものだった。
舞いのように全身を使い、攻防一体となった技で鬼を狩る。
中でも伍の型は攻撃力に秀でた型だ。
怒涛の九連撃であらゆる角度から対象へ切り込む技……のはずだった。
「くっ、このッ!」
「ほれほれ〜。捉えられまい」
だが、一度二度三度と、最後の九連撃目まで迫りながらも彼女の刃は一向に届く気配がなかった。ヒラヒラと、花びらのように迫り来る木刀を躱し続けている。
紫織に技を避けられながら、しかし内心カナエは自分でも意外なほど冷静だった。足運びから体捌まで、一挙手一投足を注意深く
五連撃目を躱され六連撃目に入る瞬間、彼女の目が確かに捉えた。
「ここ!」
あの瞬間移動のような歩法を使う時、紫織の視線はカナエからほんの一瞬だけ外れる。そして、その視線は決まって彼女が次に移動する方向へ向けられていた。
移動の瞬間が見えずとも、その行き先さえ分かれば先回りできる。
故に、カナエが真横へと振り翳した木刀に
──取った!
あの歩法は連続で使用する事はできないはず。移動した際、ほんの一呼吸ではあるものの紫織は毎回間を置いていた。つまり、今回ばかりは避けられる事はない。
目を僅かに見開く紫織へ向かって、カナエは伍の型の最後の九連撃まで一気に放った。
だが、避けるばかりの紫織を前に、カナエは失念していた。
花の呼吸とは、
「花の呼吸、弍の型『御影梅』」
「ッ!?」
全方位から襲いかかるカナエの刃を、紫織は同じく全方位の連撃を以って受け流した。
紫織からの反撃に意表を突かれたカナエは木刀を弾かれ、カランと乾いた音と共に得物が道場の奥へと転がる。
「しまった──ぐっ、ごほっ!?」
慌てて木刀を拾おうと後退した瞬間、肺が裂けるような鋭い痛みが胸の奥から湧き上がり、息が大きく乱れる。
「けほっ、けほっ……!」
肺から発せらる悲鳴に思わず片膝をついたカナエに、容赦なく刃が迫った。
「うっ……!」
「なぁんてね。わはは〜」
横薙ぎに振られた木刀が目前まで迫り──頬を優しく撫でて静止した。
困惑するカナエの目の前では、満面の笑みを浮かべた紫織が誇らしげに佇んでいる。くるくると木刀を回して肩へ担ぐと、片膝をついたままのカナエへ紫織はその小さな手を差し出した。
「今日はここまでだね。お疲れ様〜」
(カナエからすれば)激しい運動をしたばかりというのに息ひとつ乱していない師範の様子に苦笑しながらも、カナエはその手を取ってゆっくりと立ち上がった。
「うん、マメだらけの良い手だよ! 頑張ってる証拠だね、よしよし〜」
紫織の小さな手に撫でられながら、カナエは己の両手へ視線を落とした。
彼女の言う通り、マメや小さな傷だらけでとてもうら若き乙女の手とは思えない。剣を振るうのに必死で、紫織に言われるまでは気にすることもなかったが。
だが、師範に褒められたその手が今はたまらなく誇らしかった。
「えへへ……ありがとうございます、師範」
花屋敷に身を置いてから一年、自分は鬼殺隊に向けて一歩ずつ進んでいるのだ。しっかりと年相応の娘のような笑みを浮かべるカナエに、紫織の表情も綻ぶ。
屋敷に来たばかりの頃は背丈も同じ程度だったが、気がつけばもう紫織が見下ろされる側になっていた。悲鳴嶼も言っていたが、カナエはきっとここから更に大きくなるだろう。
「(頭を撫でてあげられるのも、あと少しだけかぁ)」
きっとしのぶも撫でられなくなる日はそう遠くない、と人知れず寂しさを覚えるも、それを心の片隅に静かに仕舞い込む。
「まず、技のキレはどれも凄く良かったよ。正直なところ、今の私より型の動きが全然良い。紛い物の私なんかと違って、カナエは花の呼吸の適正がきちんと高いみたいだね」
「そ、そんな! 私なんて、師範に遠く及びません! 今日だって結局一撃も入れられなかったのに……」
「ま、代理とはいえ私も柱だからね。そう易々と超えられないように頑張ってるつもりだよ。あ、それから、移動する私の動きを先読みして攻撃を仕掛けたのもお見事。良い観察眼だね、教え甲斐があって私も楽しい」
紫織の素直な賞賛にカナエは頬をほんのり赤く染めてはにかんだ。
「ただ、やっぱりまだまだ踏み込みに遠慮が見られる。相手が怪我するとかそういう事は気にせず、もっと思いっきり打ち込んできていいから。優しいのはカナエの良いところだけど、いざ鬼と戦う時に同じ優しさを見せたら食われるよ」
「……はい」
「でも、逆に言えば反省点なんてこれぐらいしか思いつかないから、カナエは本当に凄いよ! 師範は鼻が高いです」
「師範……!」
止まない賛辞にカナエも紫織もほわほわとした雰囲気を醸し出しているところ。
「──って、いつまで姉さんのこと撫でてるの!」
先ほどから静観していたもう一人の蝶の髪飾りの少女が、額に青筋を浮かべながら二人へ割り込んだ。
何を隠そう先ほどから会話の間もずっとナデナデされている姉の姿に居た堪れなくなり、しのぶは姉を背に隠し「フー!」と子猫のように紫織を威嚇した。
──私の妹が可愛すぎる!
相変わらず紫織に当たりが強いしのぶと、それを苦笑しながら宥める紫織を眺めながら、カナエは心の中で力強く叫んだ。
きっと師範が自分ばかり構うから、しのぶは嫉妬しているのだろう。しのぶだって紫織と稽古したりナデナデされたかったに違いない。姉の自分もそうなのだから、妹のしのぶもきっと同じだろう。
そんな妹の愛らしい姿に内心悶えながら、カナエは悟られぬよう美しい微笑みを貼り付け、未だ威嚇し続けるしのぶの頭に手を置いた。
「私ばかり構って貰ってごめんね、しのぶ。ほら、師範も次はしのぶとも稽古して下さるわよ。ね、師範?」
「うへっ!? そりゃあ勿論……」
「ちょっと、姉さん! 私は別に師範と稽古したくて怒ってた訳じゃ……」
「うふふ、今日はもう師範を取ったりしないから、思う存分稽古していいわよ?」
「姉さん!?」
慌てふためくしのぶとは対照的に、紫織はほんのり頬を赤く染めて自身の髪をくるくると弄り始めた。無論、しのぶとも稽古はするつもりだったが、こうも求められると照れてしまうもの。
「えへへ、気づいてあげられなくてごめんね。ほら、しのぶの木刀だよ」
「師範も姉さんの言葉を鵜呑みにしないで! でも、丁度良かったわ。私だって、姉さんに及ばなくても、鬼狩りとして戦えるんだから……!」
投げられた木刀を受け止めると、そのまましのぶは真っ直ぐそれを構えた。鋭い眼差しで睨みつけられた紫織もまた、スッと木刀をしのぶへ向けた。
先ほどまでの騒々しさから一転、お互い静かに向かい合う姿に、カナエもまたゆっくりと道場に隅へと下がる。
姉が視界から消えたのを見届け、しのぶは大きく息を吸いこみ肺へ酸素を循環させた。
──全集中・花の呼吸
彼女の呼吸もまた、姉や師と同じく花を冠するもの。
「壱の型『
全ての呼吸にとって基礎とも呼べる壱の型。
花の呼吸のそれは、納刀した状態から放たれる居合の技だった。
対象へ力強く踏み込みながらくるりと身を回転させ、遠心力を以って切り掛かる、まさしく全身の動作に重きを置く花の呼吸の基本の動き。
先ほどのカナエ以上に鋭い踏み込みに紫織も舌を巻くも、迫り来るしのぶの姿を冷静に観察する。間合いを感知し、即座に範囲外へ移動した。
相変わらずの移動速度。しかし、しのぶの心に焦りはなかった。
何せ、先ほどのカナエとの稽古までじっくりと
「ッ!?」
初めて、紫織の目が驚嘆で見開かれた。
カナエと同じように、移動した先には既にしのぶが待ち構えていた。そこから振るわれるのは先ほどと同じく壱の型。
容赦なく放たれた一撃を紫織は木刀で受け止め、二人は鍔迫り合いの状態になる。
漸く紫織の驚いた表情が見れたと、しのぶは木刀を押し合いながら不敵な笑みを浮かべた。
初めて鬼殺の任務に同行したあの夜、しのぶは思い切って紫織へ問うた。
「その筋力でどうやって鬼の頸を斬っているの?」と。
事実、紫織は歳が六つも下のしのぶと鍔迫り合いの状態になるほど、元々の身体能力が低い。そこを反応速度と戦闘技術で誤魔化している、というのがしのぶの見解だった。
そんな紫織が返した答えは、『観察』の一言だった。
『鬼から片時も目を離さず、一挙手一投足も見逃さないで。どんなに硬い岩でも、必ず弱点と呼べる脆い部分は存在する。それは鬼の頸も同じだよ。筋肉の動き、皮膚の感触、血管の鼓動──その全てを見極めて、弱点に向かって、速く鋭く一直線に刀を振る』
自分たちのように体格に恵まれない剣士が鬼の頸を斬るには、それしか方法がない。
それが紫織が出した結論であり、彼女の鬼狩りの極意だった。
「(ふざけるな、って思ったわよ。あの時あんなに華麗に、美しく鬼の頸を斬ったのに、まさか裏でそんな気の遠くなるような事をやっていたなんて)」
だが、その気の遠くなるような技に、しのぶは喜んで取り掛かった。
上等だ。それが鬼狩りになる唯一の方法なら、何がなんでも身につける。
目の前で苦笑を浮かべる紫織に向かって、さらに木刀を強く押し込んだ。
百回やっても身につかないなら千回。
千回やっても身につかないなら万回。
やれるまでやる、やるからには徹底的にやる。
負けず嫌いなしのぶは、必ず師範の技術をモノにすると誓った。
「そのためにも、まずは師範から一本取る……!」
「うぎぎ……!」
お互い歯を食いしばりながら木刀を押し合う。
無論、鬼とこんな状況になるのは万に一つもない。そもそも肉体の強さから身体能力まで、全てが種族として並外れているのだ。ただでさえ小柄な自分たちが鍔迫り合いになった時点で、敗北が確定する。紫織が回避に重きを置いているのにも、そういった背景がある。
そう、これは最早鬼狩りの訓練でもなんでもない。
ただただ師範に一本取りたい
負けず嫌いは何もしのぶに限った事ではなかった。
「花の呼吸、陸の型・改!」
「ッ!」
均衡を破ったのは蝶の少女。
「『渦桃・地』!」
鍔迫り合いからその小さな体を回転させ、紫織を弾き飛ばす。
本来は空中技の渦桃を地上で繰り出す分威力は控えめだが、あの体勢から繰り出せる花の呼吸の型はしのぶの知る限りではこれのみ。
このまま伍の型のような大技で追撃と行きたいが、しのぶは伍の型をまだ習得していなかった。否、伍の型だけでなく、弍の型のような連続の剣技全般を習得できずにいた。
姉と比べ改めて聳え立つ、身体能力という埋められない格差。
あのカナエですら、伍の型を放った後ですぐに肺に限界が来たのだ。
「だから私にはこれしかない! 花の呼吸、壱の型『金盞花』!」
再び体を翻し、横薙ぎに刃を振るう。
唯一胸を張って習得できたと言える壱の型を使い、紫織へ真っ直ぐ肉薄した。
そんなしのぶの姿に目を丸くさせながらも、紫織はゆっくりと木刀を腰へと構えた。
まるで、納刀したような状態で──。
「花の呼吸、壱の型『金盞花』」
「うぐっ……!?」
迫り来る刃を僅かに躱し、踏み込んだしのぶの胴へ容赦なく木刀を叩きつけた。
息が詰まり、全集中の呼吸が乱れる。
蹲り咳き込むしのぶの肩に、そっと木刀が置かれた。
「ごほッ、ごほッ……!」
「全くもう、ヒヤヒヤさせてくれるね。でも、まだ一本取られてあげるわけには行かないよ。柱の面汚しが〜って行冥くんに怒られちゃう」
「……クソッ」
「コラ、女の子がそんな乱暴な言葉使わないの」
「同じ型を見せつけるように決めておいて……!」
「ん〜なんのことかな?」
今の自分の限界まで肺を酷使したというのに、目の前の師範は息一つ乱した様子はない。悪態を吐くしのぶに苦笑しながら木刀を下ろし、「うへぇ」と一息ついている。
「カナエとは逆に、君は一切遠慮なく踏み込んできたね。きっと鬼を斬るのにも躊躇しない。そこは他の子にはなかなか無い、とても凄い長所だよ」
「……そうなの?」
紫織の言葉に、しのぶは思わず首を傾げた。
正直に言えば、カナエの『遠慮』に関してもあまり理解できずにいた。紫織相手ならまだしも、鬼に対して遠慮なんてするのだろうか?
鬼なんて斬り捨てて然るべき存在だろうに。
「それに、カナエの先読みとは違ってしのぶは私が移動するのを見てから反応してたよね? あの動きに着いて来れるなんて現役の隊士でもそうそういないよ。しのぶもカナエも、私なんかには勿体無いぐらい凄い子たちだよ全く。よしよし」
先ほどのカナエと同じように、紫織はしのぶの頭へ手を伸ばした。
普段から自分には当たりが厳しいしのぶの事だから途中で怒られるだろうと思いながら手を伸ばしたが、意外にもしのぶは特に拒絶する様子を見せなかった。
そのままゆっくりと、遠慮がちにしのぶの頭を撫でる紫織。
やはり恥ずかしさがあるのかしのぶはそっぽを向いてしまったが決して振り払おうとしない様子に、紫織もパァッと目を輝かせる。その姿は、まるで野良猫を初めて撫でられた幼児のようで──。
そんな二人を道場の隅から見守っていたカナエは、記憶に刻み込むようにその光景を目に焼き付けていた。心なしか鼻息が荒い。
僅かに頬を赤くしながらも満更でもなさそうに撫でられるしのぶと、そんなしのぶを嬉しそうに撫でる紫織。
──私の妹も師範も可愛すぎる!
妹はまだしも仮にも自分の師範相手に中々とんでもないことを考えながら、カナエは凄まじい勢いでしのぶへと駆け寄った。
「ふふふ、良かったわね〜、しのぶ。師範にたくさん褒められちゃって、流石は私の妹ね!」
「……えへへ」
紫織に加え大好きな姉からも褒められ、ついにしのぶがふにゃりと柔らかい笑みを浮かべた。
自分の努力が着実に積み上がっている、その事実がどうしようもなく嬉しかった。何より、尊敬する(とは決して口にはしないが)師範からの褒め言葉。
大好きな姉と尊敬する師範に挟まれ、しのぶはついつい年相応の様子を見せてしまう。
そんなしのぶの姿が、カナエは堪らなく愛おしかった。
どこまで大人のように振る舞っても、しのぶはまだ子供なのだ。
「うん、しのぶはやっぱり怒ってる顔よりも笑ってる顔の方が可愛いなぁ。もうちょっと師範相手に素直になれればいいんだけど……」
「あはは、まぁ色々と複雑なんだよ」
主に姉を紫織に取られる、という可愛らしい嫉妬心のせいなのだが、肝心のカナエは妹可愛さにまるで自覚がしていない。
妹が妹なら、姉の方も天然で同じぐらい可愛いな、と紫織は内心評した。
「さて、しのぶのナデナデもここら辺にして、カナエに一つお話があります」
紫織がしのぶの頭から手を離すと、しのぶは名残惜しそうにその手を見つめた。その姿がまた愛らしくて思わずしのぶに抱きつきそうになるのを鋼の精神力で押さえつけながら、カナエは真っ直ぐ姿勢を正した。
紫織が改まって話をする時は、決まって真面目な話になる。
「
たった四文字のその言葉にカナエだけでなくしのぶも息を呑んだ。
最終選別。
それは文字通り、鬼狩りを志す者にとっての最後の関門。
鬼の蠢く山中を七日間生き延びなければならない過酷な試練は、鬼殺隊士全員が通らなくてはならないもの。
鬼狩りになるという目標が、今まさに手が届く範囲まで迫っている。
カナエは己の拳を強く握り締めた。
「師範、その条件というのは……?」
だが、一筋縄ではいかないのが目の前の花柱だ。
恐る恐る彼女の語った
雰囲気の変わった紫織に、カナエの額から冷や汗が伝う。
「鬼ごっこで私を捕まえてみなさい」
「お、鬼ごっこ、ですか……?」
「制限時間は半刻、それまでに私を捕まえれば君の勝ち。選別の前日まで何度でも挑戦していいよ。あ、ちなみに、流石に不公平と思うから私がいつも使ってるシュン!って動く奴は使わないよ」
鬼狩りが鬼ごっこなんて皮肉だけどね、とわははと笑いながら付け足す紫織だが、冗談を言っている様子は一切ない。
「あ、もしかして『そんな簡単な事でいいの?』って思ってるでしょ?」
「い、いえ! 簡単だなんてそんな……」
「素の足の速さならカナエの方が速いもんね。隠れてお茶漬け食べてるの見つかった時もすぐ捕まっちゃうし……」
「そこは直して下さい」
「まぁまぁ、それはひとまず置いといて」
困惑するカナエを他所に、紫織はさらに笑みを深めた。
「──殺す気で追いかけてね。私も死ぬ気で逃げるから」
⚫︎大正コソコソ噂話⚫︎
この時カナエは14歳、しのぶは11歳、紫織は17歳。
カナエに身長を抜かれた日の夜、自室で静かに涙を流す花柱がいたとかいなかったとか。
原作でカナエが具体的にどのタイミングで柱になったか分からなかったので、本作では義勇錆兎村田世代の一つ後ということにしてます。