さてはオリ主だなオメー???   作:水代

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ゲーム飽きて暇だったので本日2話目。


ジムリーダーの本領

 

 

・相性ジャンケン

 

 

 アカリが勝利しジムリーダー手ずからバッジを渡されると入れ替わりに次の挑戦者が呼ばれる。

 つまりボクの出番である。

 フィールドに立ち、タケシにアカリと同様のルールをお願いする。

 問題はイワークがたった今『ひんし』になってしまった、という事実だがどうやら他のポケモンを出すので問題無いらしい。

 

 そうして互いのフィールドの端で対峙し―――審判の合図と共にボールを投げる。

 飛び出したこちらのシャンデラに対して、相手の手持ちは……全身をオレンジのプロテクターで固めた巨体だった。

 

「……ドサイドンか」

「ほう、さすがだ! よく勉強している、それにシャンデラとは……先ほどの子と言いとても新人とは思えないな」

 

 高い攻撃力と高い防御力、そして高いHPに反して低い素早さという分かりやすすぎる重戦車タイプのポケモンだ。

 タイプ相性的には『いわ』『じめん』とどちらもメイン火力でこちらのシャンデラの弱点を突いて来るので不利。

 ただしドサイドンはその高い物理耐久に反して特殊耐久が低い、特殊火力メインのシャンデラからすれば大ダメージを期待できる。

 

 とはいえHPの高さからして一発で落とす、なんてのは難しいかもしれないが……。

 

 ゆらゆらと宙を漂うに揺れるシャンデラと両の拳を握りこちらを睨むドサイドンがフィールドでやや距離を開けて対峙する。

 さてここからどうやって攻めよう、なんて。

 そんな考えが甘かったか。

 まあそれはそうだ。目の前にいるのはジムリーダー。

 即ちカントーのトップトレーナーに数えられる強者だ。

 

 バトルはすでに始まっている、その事実に気づくのが遅れたのは同格以上との経験の少なさか。

 或いはアカリとのバトルに慣れ切ってしまったせいで受け身主体になってしまったからか。

 

 まあ端的に言えば。

 

 ―――()()()()

 

「撃ちだせ! ドサイドン!」

 

 気づいた時にはすでに遅い。

 握った拳の中ですでに()()は終わっている。

 その両の拳をがっちりと合わせ、手を開けばエネルギーはすっかり溜まっていて、合わさり一瞬にして巨大な岩の塊を形成。

 

 砲弾のような勢いで『がんせきほう』が発射された。

 

「守れ!」

 

 咄嗟の指示でシャンデラが『まもる』。

 躱す暇すら無かった、その態勢を作るより速く撃ちだされた。

 いっぱい食わされた、その事実に歯噛みしながら次の指示を出そうとして。

 

「『まもる』は強力な防護だが発動の早さに反して終わりが遅い」

 

 タケシの言葉に表情が引きつりそうになる。

 『まもる』によって発生したバリアが消えていく、だがドサイドンはすでに次弾の装填を終えている。

 

「放て!」

 

 先ほどのような巨大な塊ではない。小粒の石の弾丸……『ロックブラスト』が放たれる。

 躱すのは……無理だ。

 

 ならば―――。

 

「縛れ」

 

 石の弾丸の軌道はバラバラだ。

 その中で直撃するだろう軌道のものを選択し、シャンデラに影で縛らせる。

 ヒトモシの頃ならともかく、進化した今そのくらいのことはできる。

 そうして技の硬直から解放されたシャンデラが一瞬遅れて飛来する石の弾丸を悠々と躱す。

 

「なんだと……」

 

 さすがに今のは予定外だったのがタケシが驚くがこちらとしては構っていられない。

 この世界においてバトル中に使える技は()()()()()()()()()だ。別に一つ技を覚えたら一つ忘れるなんて不自由なシステムは無い。

 ただし公式戦において実際に出して良い数は4つに絞られる。

 今に一撃で咄嗟に『まもる』を使わされたのは痛い。これでこちらの使える技は残り3つ。

 

 逆転の一手は確実に決める場面まで取っておく、とするならあと2つの技の選択で状況を優位に持って行きたい。

 

 そうなるとここで選ぶべき選択肢はおのずと決まってくる。

 

 ただしそれすら切り方を間違えればあっという間に追い詰められる。

 相手の使った技は『がんせきほう』と『ロックブラスト』。

 前者で『まもる』を切らされた、後者で『かげふみ』をバラされた。

 特に後者はいざという時のために取っておきたい手札だったが、こんな序盤も序盤に切らされてしまったのは痛い。

 ボクはアカリのように直感や発想で状況を変えられる天才ではない。

 

「……できないことを数えたって仕方ない」

 

 ボクはボクでしかない。

 ボクにできることはボクがやれることだけ。

 だから組み立てるのだ。

 

「シャンデラ!」

 

 指示を出す。

 本当は言わなくても指示は出せる。

 何故かは知らない、でもなんとなく口に出さなくても伝わるし、なんとなく言葉は無くとも分かる。

 アカリとピカチュウだってそう、パートナーってのは案外そういうものなのかもしれない。

 

 シャンデラが放つ巨大な『ほのおのうず』がドサイドンを捕らえる。

 ドサイドンはその圧倒的タフネスに反して鈍重だ。故にピカチュウのように避けるということはできない。

 タイプ相性を考えればダメージ的には半減。ただし身動きが取りづらくなる。

 ダメージを考えれば痛くは無い、が拘束されたという事実にタケシが顔を顰める。

 

「振り払え!」

 

 だがドサイドンの巨体からしてそんな炎など何のこと無い、とノッシノッシと拘束を振り払いながら渦巻く炎を強引に突っ切る。

 まあそれは予想できていたのだが。

 

「シャンデラ」

 

 だからその進路にシャンデラを伏せさせている。

 炎を突っ切って一瞬目隠しされていたドサイドンが放たれた『おにび』に気づくのが遅れる。

 本来ならトレーナーであるタケシが気づくべき場面、だがタケシもまたドサイドンを()()()()()()()()()()()によってシャンデラに気づくのが遅れた。

 だからこれは当たる。『おにび』がドサイドンに命中し『やけど』にさせる。

 

 ここで『ラムのみ』*1とか持たせられていると厄介だったかもしれないがどうやらジム戦でそこまではやらなかったらしい、見事に『やけど』状態に苦しむドサイドン。

 『やけど』という状態異常は物理技の威力を低下させる効果もある、これで物理アタッカーとして決定力ががくんと落ちた。

 その事実を理解しているタケシも苦い表情だ。

 

 だが同時にこちらも追い詰められる。

 

 これで使った技は3つ。

 『まもる』『ほのおのうず』『おにび』。

 どれもドサイドンに決定的なダメージを与えられる技ではない。

 当然ながら残り1つの技をタケシも警戒するだろう。

 

 なにより『おにび』を確実に当てるためとはいえ近づき過ぎた。

 

 その接近を見逃すジムリーダーではない。

 

「揺らせ!」

 

 『やけど』に苦しみながらもドサイドンが床を踏み抜き打ち鳴らす。

 衝撃が『じしん』となってシャンデラを襲う。

 弱点タイプの一致技*2ともなれば一発で『ひんし』になってもおかしくは無かったが、『やけど』でダメージが軽減されてどうにか耐える。ただしもう『のろい』なんかは使えそうにも無い。

 使う気も無かったがまるで早撃ち勝負のように残り一撃、大きいのを当てたほうが勝ちのような勝負になっていた。

 

 ただしこちらに不利な点が一つ。

 

 同時はダメだ。

 恐らくお互いに大きいのをぶつけあうと先にこちらが負ける。

 ドサイドンの特性『ハードロック』は弱点となるダメージを軽減する。

 大きいのを当ててその上で『やけど』のスリップダメージを込々でどうにか倒せるかどうか。

 つまりこちらは当てて、相手は避けられる……このシチュエーション以外は負けだ。

 

 だからこちらから先に動くことができない。

 こちらが撃った技を一発耐えて返しの一撃で倒す、これは相手の勝ち筋だ。

 

 こちらの勝ち筋は相手の撃った一撃をどうにか躱してこちらの一撃を当てる。

 これだけ。

 

 だから互いに睨み合う。

 とはいえ長期戦はタケシに不利だ。

 なにせ今この瞬間もじわじわと『やけど』のダメージがドサイドンを削り続けている。

 故にタケシは動く、動かなければならない。

 

 『のろい』が使えるなら逃げ回っても良かったかもしれない。

 最初からその手段を使わないのはジムリーダー相手に逃げ切れるか分からなかったからだ。

 だが撃ち合いでこれだけキツいのならばその可能性も考慮しておくべきだったかもしれない。

 

 決着は近い、その事実を理解し。

 

 放たれる攻撃は『がんせきほう』だと予測する。

 今のドサイドンが撃てる最大の打点。そして当たれば『やけど』込みでも確実にシャンデラを落とすことのできる最強技。

 こちらはそれを躱して返しの一撃を当てる。

 

 ウエスタンカウボーイの早撃ちがごとき緊張感。

 

 だがそれも結局経験の足りない子供の思考だと教えられる。

 

 ジムリーダーとはどこまでもいっても専門家であるが故にジムリーダーなのだと。

 

「ドサイドン……巻き上げろ」

 

 その声にドサイドンが咆哮を上げる。

 同時に周囲の様相が変えていく。

 それが何を意味するのか、それに気づいた時……血の気が引いた。

 

「やられた……『すなあらし』!」

 

 考えうる限り最悪の展開、予測していた前提が全てひっくり返った。

 『すなあらし』という天候によって引き起こされる効果は主に2つ。

 

 1つは『いわ』タイプのポケモンの『とくぼう』を上昇させること。

 これによってシャンデラの一撃でドサイドンに与えることのできるダメージは下がる。

 元のドサイドンの耐久を考えれば大きくとは言わないがそれでも確実に下がる。

 これによって『やけど』のスリップダメージで稼ぐ必要のあるダメージが増えた。

 つまり先ほどまでの想定より長期戦になった。

 

 そしてもう1つ。

 『いわ』『じめん』『はがね』タイプ以外のポケモンに対するスリップダメージの発生。

 その威力はだいたい『やけど』と同じくらい。

 だがすでに『じしん』を一発もらってしまったシャンデラでは未だスリップダメージしか受けていないドサイドンより長く戦うことができない。

 つまり先ほどまでの想定より短期戦にしなければならなくなった。

 

 この状況でまだ冷静にそんな一手が出てくるのかと思うのと同時に未だに自分がゲーム脳になっていることを自覚する。

 なにせゲームではまず発生しないシチュエーションだ。カバルドンなどの『すなあらし』を起こせるポケモンと組み合わせるならともかく、ドサイドンがわざわざ自分で『すなあらし』を使うというのは中々起こり得る状況ではない。

 だが現実にはアリなのだ。実際この一手でこちらの想定は一気に変わった。

 

 たった一手でこちらは追い詰められた。

 

「……あはは」

 

 笑いがこみあげてくる。

 やっぱりアカリみたいにはいかないなあ、とこんなプロを相手にあっさりと勝って見せたアカリの凄さを改めて実感しながら同時に思考が高速で回りだす。

 この状況でできることは多くは無い。

 限りなく詰みに近い状況。

 

 だが同時に()()()()()()()()()()()

 

 そして()()()()()()()()()と思う。

 

「どうしようも無いなボクは」

 

 薄々自覚していたことではあるが。

 

 ボクという人間は……どうしようも無く負けず嫌いだ。

 

 

 * * *

 

 

・どうしようもなくイカれた選択

 

 

 追い詰めた、と確信する。

 全く今回の挑戦者はどうなっているのかと内心の嘆息を表情には出さないようにしながらもけれど思わずにはいられない。

 受付で登録した情報によれば今年登録されたばかりの新人トレーナーだという。

 つまりまだ10歳の子供。にも関わらず連れるそのポケモンはジムリーダーの自分と比較して遜色ないほどに強力だ。

 先ほどの子供はピカチュウという決して強いとはいえないはずのポケモンで自身の一番の自慢のイワークを倒した。

 そして今目の前で対峙する子供はシャンデラというカントーにはいないはずのポケモンでプロと比較しても十分過ぎる戦略でもって()()()のドサイドンを追い詰めかけた。

 

 だがその立場はすでに逆転した。

 

 『すなあらし』によってあのシャンデラが動ける残り時間は僅か。

 焦って攻撃を仕掛けて来ればドサイドンを削りきれずに反撃でお終い。

 かといってこちらが削れるのを待てばシャンデラも同じだけ削れる、そうして時間と共にチャンスは減っていくのでタケシとしては大きな一撃の直撃にだけ気を付ければどうやっても勝てる。

 こうなれば最早イージーゲームだ。

 ここからの逆転は……無いわけではないが、タケシが許さない。

 

 さあ、どうする?

 

 だが同時に期待する部分もある。

 ここまで戦って良く分かるのは先程の子と違って今戦っている子……リンドウは明確に戦術を練って戦っている。

 自分のポケモンとこちらのポケモン、両者に何ができて、何ができないのか、それを考慮しながら常に考え2手3手先を見ながら戦っている。

 恐らく初手の『がんせきほう』が上手く決まっていなければ『まもる』を引き出せなかった、つまり使える技の幅が増えていた。

 そうなれば逆転の可能性も大いにあったかもしれない。

 そのくらいにはタケシは相手の子供を評価していた。

 

 そんな子がこのまま何もできずに負けるだろうか、否である。

 

 きっと何か考えている。

 シャンデラというポケモンについてタケシは詳しくは無い。

 存在は知っていても専門でも無いタイプのポケモン故に何ができて何ができないのか、大よそ程度にしか知らないのだ。

 

 だが同時にこうも思う。

 すでに技を3つ使い残りは1つ。

 この状況を引き延ばすのに仮に回復技があったとしてもそれを使えばドサイドンを倒す技が無くなる。

 ドサイドンとて『やけど』でじわじわと削れているが反撃の手段の無い相手となれば強引に当てることは難しくない。

 

 となれば相手の残り体力を考えれば次の1手が最後の1手と考えても良いだろう。

 

 だがたった1手でドサイドンが落ちることは無い。

 

 相手が『くさ』タイプや『みず』タイプならともかく、シャンデラがこの『すなあらし』の中でドサイドンを1手で落とすことは限りなく不可能だ。

 

「さあ……どうする?」

 

 気づけば同じ言葉を口に出していた。

 それは期待か、或いは油断か。

 自分でも良く分からない。

 

 ただこのまま終わる、それだけは無いと確信していた。

 

 

 * * *

 

 

 頭の中がかつてないほどに素早く回っていた。

 負ける、このままでは確実に。

 その思いに焦れば焦るほどにけれど思考は明瞭に働き続ける。

 『エナジーボール』それがボクの用意していた最後の切り札。

 当てれば『やけど』ダメージ込みで特性の上からドサイドンを一撃で落とせるだろう文字通り必殺だったはずの一撃。

 だがこの『すなあらし』によってダメージが下がった、下がってしまった。

 必殺の一撃は必殺足り得ないものとなった。

 

 手札を探す。

 必死になって。

 この状況を打破できるための一手を探して、探して、探し続け。

 

「……約3%」

 

 ぽつり、と思考が口を突いて零れた。

 

「……約6%、それから約12%。実数値は不明、だけど」

 

 刻々と削れ続けるシャンデラのHP(体力)。それを実感しながらもけれど不思議と焦りが消えていく。

 頭の中でピースが一つまた一つと組み合わさっていく。

 難解で複雑な数字と情景、そして予測がパズルとなって一つの絵を作る。

 

「はは……博打が過ぎるね、これは」

 

 本当に参った、と自嘲しながらけれど決心が急速に固まっていく。

 もうこれしかない、というわけでない。

 単純な話『エナジーボール』をドサイドンの急所にぶち当てれば勝てる。

 だがそんなもの当たり前のようにタケシも警戒している。

 だってそれは現状で唯一と思えるタケシの負け筋だから。

 

 ボクは違う。

 

 ボクはそうは思わない。

 

 先ほど自分をゲーム脳と(なじ)ったばかりだが、それでもそんな知識だってボクの力の一つだ。

 

 だから、やると決める。

 これしかないと決心する。

 タケシの予想を外す、タケシの戦略の上を行くにはこれしかない。

 

 決めて、あとは……タイミングだけ。

 

 残り時間が僅かなシャンデラに視線を向けて。

 

「行けるよね?」

 

 短く問いかけた。

 

*1
状態異常を全て解除するきのみ。

*2
自分と同じタイプの技の威力が1,5倍になるポケモンの仕様。




ゲームだと先行シャンデラがエナボ撃ってだいたいお終い、或いはチョッキ持って一発耐えてじしんで終了だが現実はゲームじゃないのでこうなります。

そもそも警戒してる相手には攻撃が直撃しません。
『かわせ!』は使えなくても『直撃は防げ』でダメージは半分くらいになります。

逆にいえば警戒してない相手、できない状況においては乱数値最大くらいのダメージになります。
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