さてはオリ主だなオメー???   作:水代

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親方、空から女の子が!

 

 

 

・護衛依頼

 

 

 勝利の余韻を噛みしめる。

 ジムリーダー、その本気の1体に勝利した。

 勿論トレーナーとしてのその本領が6対6のバトルでこそ発揮されるため1対1のバトルでジムリーダーに勝ったくらいでジムリーダーよりも上だなんて口が裂けたって言えないわけだが、それでもジムリーダーというのはその地方のトップトレーナーに数えられる存在だ。

 そんな相手の本気のポケモンに1体とはいえ勝った、その事実はボクがこの先もトレーナーとしてやっていくにあたり大きな自信となった。

 

 ―――見事、俺の負けだ!

 

 タケシが大声で喝采をあげる。

 そしてこちらにやってくると手ずからバッジを渡してくる。

 手の中に置かれたバッジを見つめる。

 リーグ挑戦に必要なバッジの数は8個。つまりまだ1個目のこれは序盤も序盤。

 まだトレーナーとしてスタートを切ったばかりとも言えるような状態。

 

 それでもこの1個はボクにとって負けるかもしれないそんな状況に抗い続けて勝ち取った格別な1個だ。

 ぎゅっと握りしめて、大切にバッジケースに保管する。

 

 それからジム戦に勝ったということでアカリと共に『いわなだれ』の技マシンを受け取る。

 技レコードではない、技マシンである。先も言ったが貴重品だ。

 どうやら先日までの大会でボクたちが一通りの技マシンを持っていることは知られているらしく、ジムリーダーの本気に勝ったことも含めてこれになったらしい。

 

 いや、かなり正直嬉しい。

 

 というのも先日の大会を見れば分かるが、基本的に威力の高い技の技マシンというのは滅多に手に入らないのだ。

 そういう需要が高いものは技レコードでも1回10万単位の代物であり、『いわなだれ』のようなメジャーな技なら1度で使い切りの技レコードでも30万くらいはする。

 技マシンにいたっては一体どれくらいの値段になるのか想像もつかない。

 それをボクとアカリの分をぽんとくれるのだから破格の報酬といって良かった。

 

 そうして予想外の報酬にほくほく顔でジムを出ようとするボクたちをタケシが呼び止める。

 

 どうやら頼み事があるのだとかで、もし時間があるなら……とのことだがジム戦も終わったし特に用事も無かったのでアカリと顔を合わせて頷く。

 タケシ曰く、数日内にニビ博物館のメンバーが『おつきみやま』へと発掘調査に向かうのだが、道中の野生ポケモンから発掘チームを守るのに協力して欲しい、とのこと。

 報酬は博物館側とも応相談になるがジム側からなら技レコード、博物館側からなら進化の石あたりが主になるのだとか。

 発掘調査自体は1週間に渡るが、現場はポケモン避けがしっかりしているので現場まで送り届けてくれればそれで終了らしい。

 

 今の時期は新人トレーナーが急増してどこのジムも忙しい時期であり、ニビジムもジムリーダーのタケシ含め皆手いっぱいで人手が足りないのだとか。

 そこでタケシの本気の面子とも対等にやり合えるボクたちなら『おつきみやま』の道中くらいなら問題無いだろう、とのことらしい。

 

 ゲームだと強制的に通らされた『おつきみやま』だが現実において山の中を通らないと隣街に行けないなんて不便なことは無く、普通にニビシティ、ハナダシティ間の道路はあるのでそちらを歩いて通って行けば良い。

 逆に『おつきみやま』はゲームのように通路なんて存在しない、本当に天然の洞窟だ。

 ニビシティ周辺の山としては石材の切り出しも行われておらず、開発の手がほとんど入っていない。

 ただ太古のポケモンの化石が発掘されることもあって、一部のマニアの間ではそれなりに有名な採掘スポットらしい。

 あとカントーでは『おつきみやま』周辺にしか生息が確認されていない非常に珍しいポケモンがいるので、それらを求めるトレーナーも存在する。

 

 どうしようか少し悩んだが、ボクとしては急ぐ旅でも無いし『おつきみやま』を探検してみるのも面白いと思う。

 アカリにどうするか、と問いかけてみればアカリもまた問題無いとのことだったので、タケシに了承の意を伝えて今度こそジムを後にした。

 

 

 * * *

 

 

 ・ほのおVSでんき

 

 

 『おつきみやま』へ行くまでまだ時間があったので新しく加入した仲間のレベル上げをしようということになったのだが、先日のお祭りを終わってベテランのトレーナーがさっさと他所の街へと向かってしまった結果、今ニビシティ周辺にいるのはニビジムに挑戦しようとしている新人トレーナーばかりになってしまっていた。

 

 そのせいか街周辺でバトルを仕掛けてもいまいち手応えが無い。

 なまじジムリーダーの本気とバトルしていただけにその落差に拍子抜けしてしまっていた。

 

「結局こうなるのか……」

「ん?」

「いや、なんでも無いよ」

「ぴ~か~♪ ぴーかー♪」

 

 どこに隠し持っていたのか分からない扇子を両手に持って踊るピカチュウを横目にさて、と大きく息を吸い込む。

 対面のフィールドに立つアカリ、そしてその前に立つヒトカゲ。

 ボクの前でふんす、と鼻息を荒くするのはピチュー。

 同格以上の相手と戦おうとすると結局こうなるのは必然だったのかもしれない。

 

 まあそれはさておいて、互いのポケモンを良く見やる。

 まだ怪我が治りきっていなかった先日のバトル大会では出してやれなかったのでピチューも初めてのバトルにやる気満々だった。

 対してヒトカゲはこの短い期間にすっかりアカリに懐いてその指示を待っている。

 さすがというかなんというか、ヒトカゲをもらってまだ1週間ほどのはずなのにすでに信頼を勝ち取っている。

 トレーナーを疑わないというのは当たり前に見えてとても重要なのだ。

 

 指示に対して、それ本当? という疑念を持たれてしまえば一歩出が遅れる。

 実機で例えるならなつき度が低いと全ての技の優先度が1下がる、くらいに思えば良い。

 逆にアカリとピカチュウくらい固い絆があれば以心伝心とばかりにアカリが指示を出すより早くピカチュウが動き出している。

 つまり全ての技が一歩早い、実機で言えば優先度が1上がっている。

 

 ボクとピチューに果たしてそれだけの信頼はあるだろうか。

 森での一件である程度の信頼は勝ち取っているだろうが……さてはて。

 

「ま、いいさ」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()だけだ。

 対面のヒトカゲを見つめる。

 さて、どう動くか……それを考えてとあることに気づいて思わず笑った。

 ヒトカゲの向こう、そこに立つアカリも同じことに気づいたのか珍しく目を丸くさせ、ほんの少しだけ口元が吊り上がった。

 

「なんか、いつもと逆だね」

「……うん」

 

 いつもはボクが使う『ほのお』タイプのシャンデラで、アカリの使う『でんき』タイプのピカチュウを相手にどうやって戦うか散々頭を悩ましてきた。

 アカリもまたその逆だろう。

 だが今日はボクが『でんき』タイプのピチューを使って、アカリの使う『ほのお』タイプのヒトカゲを相手にどうやって戦うか今考えている。

 そうして思い出すのはアカリとピカチュウの動きの数々。

 どうやって戦えばいいのかそのお手本がまさしくそこにあった。

 

 勿論ピチューとピカチュウでは能力が大きく違うので全く同じようにとはいかないかもしれないが、それでもボクとピチューが目指す理想はまさにそこにあった。

 対してアカリもまたシャンデラとヒトカゲでは全然違うように見えて同じところも多々ある。

 特に速度に差のある相手と戦う時のやり方はある程度参考になってしまう、ボクのやり方がそのままアカリのお手本となってしまうのだ。

 

「ま、いいか……じゃ、行こうか、ピチュー」

「……ヒトカゲ」

 

 一瞬緩い空気が流れてしまうが、そこはそれ。

 即座に切り替え、ボクはピチューへ、アカリはヒトカゲへと最初の指示を出す。

 意気揚々と飛び出すピチュー、そして楽しそうに頷くヒトカゲ。

 

 ―――そしてそれをボールから出したイーブイが見ていた。

 

 

 * * *

 

 

 ・流れ星からの贈り物

 

 

 数日後にタケシから連絡があり、博物館の発掘チームと合流、一向で『おつきみやま』を目指すことになった。

 意外だったのは発掘チームの人たちが素直に了承したことだ。

 ボクもアカリもどう見たって子供なので何か言われるかと思っていたのだが……。

 

 聞いてみればジムリーダーであるタケシからの推薦であり、タケシからまだ子供ではあるが実力は保証すると言われているので問題無いらしい。

 ジムリーダー……というかポケモンジムというのはどうしても地域に密着するのだが、こういうところでその信頼が発揮されているらしい。

 要するにボクたちではなくタケシを信用しているということであり、そういうことならと納得する。

 

 まあ警護の依頼といっても実際に野生のポケモンに襲われることはそう多くないらしい。

 当然ポケモン避けに『むしよけスプレー』などを持参しているしそれを使っていればだいたいのポケモンは近づいてこないからだ。

 実際『3番道路』を歩いていても近づいて来るポケモンなどはいない。

 警戒を怠っているわけでは無いが、もっぱらボクの頭の上のピチューが周囲をきょろきょろと見て危なそうなら声をかけてくるので道中はひたすら発掘チームの人たちを喋っていた。

 

 『おつきみやま』はポケモンの化石がよく見つかる場所であり、過去にも何度も調査が行われているらしい。

 ここで行われる調査は当然博物館側での学術調査の一環となるわけだが、それとは別にポケモンの化石からポケモンを復元する技術をグレンタウンの研究所が確立してからは太古のポケモンを求めてやってくるトレーナーというのもそれなりにいるのだとか。

 

 まあボクとしては前世の知識で知っている範囲ではある。

 確か『おつきみやま』で見つかるのは『かいのカセキ』と『こうらのカセキ』の2種類だ。

 それぞれオムナイトとカブトという種類のポケモンになる。

 

 しかし改めて考えても化石からポケモンを復元するってすごい技術じゃないだろうか?

 前世でいってみれば化石から恐竜を復元できるようなものだ……某恐竜映画待った無しな気がするのでそんな技術があっても実際に行われるかどうかは知らないが。

 

 ―――化石の発掘かあ、それも楽しそうだなあ。

 

 とは思うが、別に化石から復元されたポケモンが欲しいというわけでも無い。

 アカリにも聞いてみるが特にぴんと来ないらしいのでアカリも興味が無いようだ。

 ちょっと探してみたい気もするが、実際見つかっても博物館に寄贈するくらいしか使い道が思いつかないが、『おつきみやま』で手に入る化石の類など博物館には多数あるだろうしあまり意味があるとは言えないだろう。

 そもそもそういうのを調査するために発掘チームが組まれているのだ。

 

 探すにしてもそう簡単には見つからないことは明白だろうし、今回は見送ることにする。

 

 ただ前世の知識からだが『おつきみやま』といえばもう1つ、ゲーム内でイベントが存在した。

 いや図鑑の説明にもなっているのだからあれは現実にも存在するイベントのはずだ。

 時期的にはちょうど良いくらいなんじゃないだろうか、と予測しながら空を見上げる。

 まだ朝の時間帯なのでそこにあるはずのものは見えない。

 

 ―――見てみたいなあ、ピッピたちのダンス。

 

 満月の夜に行われると言われるピッピたちの踊り。

 その集合場所の1つがこの『おつきみやま』であることをゲームとしての知識で知っている。

 当然ながら簡単に目にすることのできるものでは無いが、この旅を楽しむならば是非とも1度は見てみたいものだった。

 多分ポケモン関連のイベントなのでアカリも興味を示すだろうし、『おつきみやま』で発掘チームと別れたらそれらしい場所を探してみても良いかもしれない。

 

 そんなことを考えながら『おつきみやま』へ向かっていたのが原因なのだろうか?

 

 『おつきみやま』の麓を超え発掘チームが調査予定の場所へと繋がる洞窟の入口にたどり着いた、その時。

 

 ピィィィィーーーーー!

 

 どこかから甲高い音が響いた。

 

「え、今の何?」

 

 周囲を見渡してみるが音の元凶は見当たらない。

 だが今なお響く音……その原因が近づいてきて。

 

「ピチュ!」

「え?」

 

 ピチューの鳴き声に、思わず顔を上に向けたその瞬間。

 

「ピィィィィ!」

「あっ」

 

 目の前に広がるピンク色の小さな何か。

 直後に顔に受ける衝撃に体が重力に引かれ仰向けに倒れると直後にボクのお腹の上に再びぽふん、という衝撃。

 

「リンくん……っ」

「だ、大丈夫……いや、何? えっと」

 

 何が起きたのか、それを把握するために痛む顔を抑えながらお腹の上の重みに視線を落とすと。

 

「ピィィ……」

 

 ボクのお腹の上で目を回して気絶するピンク色の小さなもふもふがいた。

 

 

 




最後のサブサブタイトル40秒で支度しな! と悩んでしまった。

サブタイ見て女の子……? と思った人。
♀個体なので女の子……これは間違いないね。
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