さてはオリ主だなオメー???   作:水代

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多分カビゴンの生まれ変わりか何か

 ・えー毎度バカバカしいお話を一つ

 

 

 ピッピ族*1は基本的に山の奥で群れを作って暮らすポケモンであり、当然そのピィも群れの一員であった。

 ただそのピィが少し変わっていたのはとにかく食いしん坊だったことだろう。

 

 山の奥のほうは人の手も入っておらず、自然そのままの環境が残されている。

 そこにはたくさんの『きのみ』のなる樹が生えており、普段からピッピたちはその『きのみ』を食べて過ごしていた。

 その日もまた同じで『きのみ』のなる樹にピッピやピクシーが登り、『きのみ』を持って来てはまだ上手く樹に上がれないピィたちに渡す。

 ピィたちは列を作ってピッピたちを待ち、渡された順番に列の後ろへ行って渡された『きのみ』を食べていた。

 

 だがそんな順番待ちが待ちきれなかった1匹のピィはピクシーの背に乗せてもらい自ら樹に登ってたくさん実っている『きのみ』を思うがままに口に運んでいた。

 ピィなのにまるでカビゴンがごとき食欲でもって群れの仲間たちが食べるのを終えて住処に戻ろうという時でもまだ食べ続けている内にそのピンク色の丸々とした体は風船のように膨らんでしまっており、体が重く上手く動けない。

 

 そんなピィを見て、ピッピたちが仕方ないなあ、と苦笑しながら複数匹で身重(物理)のピィを降ろそうと樹を登っていると。

 

 ―――突然、影が降って来た。

 

 誰一人……誰一匹? すらも反応できないままに気づけば樹の上にいたはずのピィの姿は消えていて。

 

 薄桃色の丸々とした体が遠目から『モモンのみ』か何かと間違えられたことに気づいたのは、直後頭上を羽ばたいていった鳥ポケモン……そしてそのクチバシに加えられたピィを見た時だった。

 

 ピィィィィーーーーー!

 

 普段からカビゴンの化身のように食べることに以外には無関心な傾向にあったピィだが、さすがにこの状況であいきゃんふらい、などと楽しめるわけも無かったらしくピッピたちの耳にピィの悲鳴が届いたが、高速で空を飛んでいくポケモンのそれに追いつけるはずも無く、空の彼方へとピィの姿が消えていって―――。

 

 ―――あ、これよく見たら『きのみ』じゃないじゃん。

 

 とばかりにピィが吐き捨てられ山の麓へと落ちていった。

 

「ピィ! ピィィ!! ピー!!!!」

 

 という話をピカチュウ→アカリ経由で通訳してピィから聞いたわけだが。

 なんか良く分からないけどめっちゃ怒ってるのは分かる。でも何に怒ってるのかはよく分からない。

 

「えっと、アカリ? なんて言ってる?」

「ん」

「ぴか! ぴかぴか! ぴかー!!!」

「気持ちよくうたたねしてたの邪魔されたって」

「そんな理由……」

 

 多分今すごく呆れたような表情してるなあ、という自覚が出るくらいには何とも言えない。

 まだ赤い額をさすりながら最早影も形も見えない鳥ポケモンを追って空を見ながら怒り狂っているピィを見つめ嘆息する。

 

「ピィ! ピー!!! ピィ……ピィ……」

 

 散々文句を言ったのか荒々しく呼吸をするピィ。

 ピィってこうもっと大人しくて臆病なイメージだったんだけどなあ、と思いつつも個性的な子だと笑ってしまう。

 

「……ピィ」

 

 と途端に両手でお腹を抑えて元気を失くす。

 あまりにも落差が激しく、もしかしてどこから怪我でもしたのか、と思った直後。

 

 ぐぅー。

 

 ピィのほうから何か聞こえた。

 え、さっき体型が変わるくらい食べたって言ってなかった?

 と思ったが、現在進行形で両手で抑えたピィのお腹からぐうぐうと腹の音が聞こえてきていて。

 

 あからさまに悲しそうな表情をするピィに思わずたじろぐ。

 別に野生のポケモンなので放っておいても良いのだが、かといって本当に放っておくと後々気になってしまいそうだった。

 仕方ないなあ、と内心で苦笑しながら鞄の中を探して適当にお菓子を取り出す。

 

「食べる?」

「ピ……? ピィ!」

 

 一瞬なあにこれ? とばかりに首を傾げたピィだったが、それが食べ物……それも野生環境ではまず食べることの無いだろう人の世界のお菓子であることに気づき、目を輝かせた。

 包装を剥いて中身のお菓子だけはい、と渡せばピィが満面の笑みを浮かべてそれを受け取り……一瞬にして手の中のお菓子が消える。

 

「え?」

「ピィ!」

 

 もっとちょうだい、とばかりに手を出してくるピィにあれ? 今渡さなかった? と首を傾げる。

 よく見ればピィの口元にお菓子の食べかすがついている……ということはまさか今の一瞬で食べたのだろうか?

 えぇ……と内心ちょっと動揺しながらも先ほどのよりも大きなお菓子を渡して……また一瞬で消えた。

 

「ピィ~♪」

 

 美味しい~♪ と言わんばかりに両手で頬を抑えて笑みを浮かべているので多分ちゃんと味わってはいるようだ。

 食べ終わったピィがもっともっとと両手の大きく開いて催促してくるので仕方ないなあ、と再び鞄の中を探し―――。

 

「ピィ~!」

「あ、ちょっと」

 

 待ちきれない! と言わんばかりにピィが開いた鞄の中に飛び込んでいき、がそごそと鞄の中を漁り始める。

 慌てて止めようとと手を伸ばしたその瞬間。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あっ」

「ピ、ピィー……」

 

 光となってボールの中に吸い込まれていくピィに目を丸くしながらけれどピィと吸い込んだボールがかたり、かたり、かたりと揺れ。

 かちん、とロックがかかってゲットが完了してしまった。

 

「えぇ……」

 

 

 * * *

 

 

 ・怪奇桃色暗黒盆踊り

 

 

 何故か自分から勝手に捕まってしまったピィをボールから解放しピカチュウ通訳にて交渉した結果、毎日お菓子1ダースにてボクの手持ちとなることが決まった……いや、なんで?

 まあ良いんだけど。ボクがゲットしたというよりはピィがボクのお菓子欲しさについて来る気満々だった、という感じしかしないがそれでもピィが来たいというならボクとしては否はない。

 聞いた限りではバトルをすることにも忌避感も無いようだし、ピッピ族なのに性格がなんか荒々しいし、発掘現場までの道中で何度か野生のポケモンに襲われそうになったのだが、なんか襲いかかるズバットを相手にいきなり何故か覚えている『ずつき』で怯ませて何故か覚えている『メガトンパンチ』でぶん殴っていた。

 

 いや……ガラが悪くない?

 

 さらに『たいあたり』してくるイシツブテをひょいひょと躱しながら両手を叩いて『アンコール』して行動を縛りつけ、再度直進的に迫って来るイシツブテを軽く躱した挙句にひょいとその頭の上に載って『はねる』ことで謎のアピール。

 怒ったイシツブテがぶんぶんと手を振って落とそうとうとするともう用は済んだとばかりに『うたう』で寝かしつけても何故か覚えている『あくむ』を見せて散々苦しめてトドメとばかりに本当に何でか覚えている『アイアンテール』で無防備に眠るイシツブテの顔面を強打し、その一撃でイシツブテをあっさりと『ひんし』にしていた。

 

 いや……強くない?

 

 因みにここまでボクは一切指示を出していない。

 野生のピィのはずなのだが技が多彩過ぎるし、技の連携や組み立てが巧みだし、何よりレベルアップでは覚えない類の技もいくつか覚えている。

 どういうことかと聞いてみれば*2群れの仲間が使える技らしく、見てたらなんか使えたとのこと。

 

 ―――いや天才かよ。

 

 と思ってしまうくらいにセンスが高い。

 正直バトルのセンスだけなら昔のアカリのピカチュウより上かもしれない。

 想像以上の拾い者*3にびっくりしながらも山に住んでいるピィのお陰でこちらの想定以上に楽々と発掘チームは目的の場所にたどり着いた。

 

 これで依頼は完了であり、報酬の話になるがアカリは技マシンを、ボクは折角ピィをゲットしたのだから『つきのいし』を要求し、了承をもらう。

 といってもどちらも今は持っていないので後日パソコンへ送付する形になるらしいが……メールを送るくらいの手軽さで物質を転送できるなど本当に便利な技術である。

 一週間以内には送付するとのことなので、ハナダシティのポケモンセンターあたりで受け取ることになるだろう。

 

 しかし簡単に了承されたが『つきのいし』は何気に他の進化の石と異なり簡単には手に入らない貴重品だ。

 さすがは『オツキミヤマ』のすぐ傍にあるニビシティというべきか。

 

 というのも『つきのいし』とは簡単に言えば隕石だ。

 流れ星の中でも特にエネルギーを秘めた石が『つきのいし』と呼ばれる。

 なので他の進化の石のように環境の中で自然と生まれるものではなく、空から降って来るのを待つ必要があった。

 

 そして『オツキミヤマ』とは『流れ星が落ちる山』として知られており、カントーでも『つきのいし』の一大産地だ。

 まあ隕石落ちてきているだけで生産しているわけでもないので産地という言い方もあってるのか良く分からないのだが……。

 ゲームだとピッピのダンスを見た後ピッピたちが囲んでいた岩を破壊すると『つきのいし』がゲットできたので、あれも地上に落ちた流星をピッピたちが囲んでいたのかもしれない。

 

 まあこうして折よく『つきのいし』もゲットできたので無理にそれを探す必要も無いのだが、それはそれとしてピッピたちのダンスは見たい。

 

 そういうわけでピッピたちの群れにいたのだろうピィに尋ねてみるとちょうど今夜、山の上のほうでピッピたちのダンスが見られるらしい。

 まさにジャストなタイミング。日数的にそろそろかなと思っていたが、数日は待たされることも覚悟の上だったがなんとも良い時期だった。

 アカリも興味があるようなので早速向かうことにするが、地元民(?)のピィの案内があるので1時間も経たずに洞窟を歩いて山の上のほうまでやってくる。

 

 そうして案内のままに洞窟を出ると広がっているのは山稜の一部にある不自然に広がる平地だった。

 緩やかな射線を描いているはずの山稜に本当に不自然なくらいに平地があってしかもその中央にどんと大きな黒々とした岩がある。

 多分あの岩がそうなのだろう、と予想しながらも空を見上げればまだ随分と日が高い。

 

 ピッピたちのダンスは満月の夜に行われる。

 

 つまりあと半日くらいは待つ必要がある。

 そういうわけで少し離れた場所にキャンプを作る。

 テントを建て、焚火を起こし、キャンプ用の椅子を2人分取り出して腰かけると山登りの疲労がどっと押し寄せて来た。

 沸かした湯でココアの粉末を溶かし、少し冷ましながらマグカップに注いでいく。

 自分とアカリ、2人の手持ちのポケモンの分を作ると全員に配り椅子に座りながらほっと息を吐く。

 

 山稜から下の見やればそこに広がるのは緑に彩られた自然豊かな光景。

 ニビシティ周辺の岩山とはまた異なる、草木が深く覆い茂った山々。

 

「絶景だねえ……」

「……ん」

 

 アカリと2人、のんびりとした時間を過ごしながらお腹が空いたと叫びピィのお菓子を与えつつそのまま夜まで待つ。

 そうしてとっぷりと日も暮れて辺りが闇に包まれた頃になると焚火を消して、真っ暗な闇の中でその時を待つ。

 しばらくしてピィがそろそろだと教えてくれるのでキャンプから離れて広場へと向かう。

 

 人がいるとピッピたちが逃げてしまう可能性を考えて、草木の影からこっそりと広場を見やると、どうやらすでに始まっていたらしく、中央の岩を囲んでピッピたちが踊っていた。

 

「……うわあ」

「……すごい」

 

 ピッピたちの体がぼんやりと光る。それに連動するかのように中央の岩もまた薄い光が放ち、広場全体を淡く照らす。

 そんな幻想的な光景に感嘆の声を漏らす……のは良いんだが。

 

「……あの」

「……うん」

「あれ、何?」

 

 踊るピッピたち、その後ろで楽しそうに手を叩くピクシー。

 そして仲間同士で手を繋ぎクルクルと楽しそうに、はしゃぐように踊るピィ。

 まるで月夜のフォークダンス。

 

 ―――のさらに後ろでぐうぐうと腹の音を鳴らしながら怒りの表情で謎の動きを見せるピィ。

 

「……あの子、いつの間にあっちに行ったの?」

「……さあ?」

 

 さっき夕飯食べたばっかじゃなかったっけ?

 とか。

 さらっと仲間に混じってるけど、誰も突っ込まないの?

 とか。

 

 色々気になってることはあるんだけどなんというかその。

 

「……桃色暗黒盆踊りだ」

「……なにそれ?」

 

 言葉にするなら多分そんな感じだった。

 

 

*1
ピィが発見されるより前に分類されたためカントーのポケモンはこの手の中間進化が種族分類されていることが多い。

*2
ピカチュウ通訳便利過ぎる。

*3
誤字にあらず




食欲の権化……暗黒盆踊り……ッ! 閃いた!
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