作品名:星のカーピィ
199×年にカントータマムシシティに本社を置く『ニンテイドー』より発売された2Dアクションゲーム。
流れ星と共に『おつきみやま』にやってきたピィをモデルとした架空のポケモン『カーピィ』を主人公とし、平和なカントー地方を脅かすカロス地方からの侵略者グラサンマフィアスタイルのデデンネたち『デデデ団』とその首領『デデンネ大王』との戦いを描いた壮大なストーリーが展開される。
子供向けのキャッチーな絵柄とシンプルな操作性によりカントーではそこそこヒットした。
なお当然のことではあるが原作ゲームが存在しないことをいいことにフリーダム転生者が作ったパロゲーの1つである。
パクリゲー? 盗作? 著作権侵害? 異世界にそんなの関係あるはずないじゃないですかヤダー。おっとどこからか電話が……え、に、任●堂法務部?! 馬鹿な、ここ異世界だぞ!!?
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続編『星のカーピィDX』が200×年に発売予定とされていたが制作会社のスタッフが全員失踪したため発売されることは無かった。
・無鉄砲な足音
一晩ピッピたちの幻想的なダンス*1を思う存分堪能し、満足した心持ちのまま就寝し翌朝を迎える。
やっぱり旅に出て良かった、とマサラタウンにいては見ることのできなかった自然の神秘に充足した心地になりながらキャンプ道具を荷物に仕舞う。
これでもうオツキミヤマでやりたいことは終わったのでアカリに山を降りることを提案し、アカリも頷いたので早速洞窟を通って麓まで戻る。
洞窟から出たのだからそのまま降りれないのかとも思ったが、どうやらピッピたちが踊っていた広場から少し離れるとどんどん急な斜面になっていて、時折崖などもあってどうにも人が降りれるような場所では無かった。
幸い洞窟は昨日通ったばかりなので道順もだいたい分かる。
登りと違って降りなら小一時間……は言い過ぎだろうが、2時間もかからず降りることはできるだろう。
「ピィ~♪」
ボクたちの前方で朝から食パン10枚食べ、周辺に生えていた『きのみ』をドカ食いし、さらにボクの鞄の中のお菓子まで食い漁った暴食の権化は満腹感にご機嫌になりながら自分で出した大きな『スピードスター』の上に乗ってふわふわと浮かびながら移動している。
いや、それ何? そんなことできたの? いやそれ以前にそんな技覚えてたの? とか色々言いたいのだが、このピィに関してはもうなんでもアリな気がしてきたのでツッコミを諦めた。
しかし食べ過ぎで体はまん丸。
そして『スピードスター』という星の形をしたエネルギー塊を生成する技の上に乗っかって自分の腹をぽんぽんとご機嫌に叩くその姿。
「ボクってさ」
「ん?」
「基本的にポケモンにニックネームとか付けないんだけどね」
「うん」
「あいつのニックネーム、カ〇ピィにするよ」
「……ん。良く分からないけど、危ないからダメ」
「……そっか」
「ん」
普段はポケモンの知識以外ぼんやりとしか出てこないボクの前世が『カ〇ビィだこれ?!』って激しく主張してくるので思わず飛び出した世迷い言だったが、アカリにあっさりと却下された。
コイツだけ世界観の違う住人な気がしてならないのだがポケモン図鑑を起動すればちゃんと目の前のポケモンがピィという種族であることを認識しているので間違いはないのだろう……甚だ納得いかないが。
もやもやとした気持ちを抱えながら洞窟の中を歩く。
暗い洞窟の中はしんと静まり返っており、ボクたちの靴音がやけに響く。
ライトで照らされた先を確認しながら歩いているが、実際のところ洞窟の中の景色など同じようなものばかりで、はっきりいって昨日通った場所を同じかと問われれば断言はできない。
それでも先導のピィが迷う事無く進んでいるのでそれを信用して歩いている。実際少しずつ降っているのは分かるので多分大丈夫だろう、と任せるままにしている。
そんなピィが突然止まる。
「……ピィ?」
迷った……というにはその表情に不安は無い。
ただしきりに周囲をきょろきょろと見ている。
まるで何かを探すように、何かに気を取られているかのように。
―――直後。
どっどっど、という聞きなれない重い音が洞窟に響いた。
広い洞窟の中で反響して音の元凶の位置は分からない、だが徐々に、徐々に、音は大きくなっていく。
「……ピィ!」
ピィが両手をかざし、『リフレクター』を貼る*2のと同時、ばぁん、と大きな音をたてて洞窟の壁が崩れる。
同時にどっどっど、と崩れた壁の向こうから何かが飛び出して―――。
「ホォォォン!」
「ピィ!」
ドォォォン、とピィの張った『リフレクター』とそれが激突し、『リフレクター』が割れるかと思うような音をたてながらも衝突を受け止め、それの足を止める。
そうして薄明りの中、派手に舞い上がった土煙の向こう側に見えたのは。
「サイホーン?!」
「……ん」
全身に棘が生えたようなその外見そのままの分類をされた『とげとげポケモン』のサイホーンだった。
* * *
・ゲームだと廃人がよくやってることだけど……
「でっかぁ」
今生でサイホーンを見たのは初めてだが、それでも図鑑の知識としては高さ1メートルほどという前提情報は持っている。
だが明らかにデカイ。少なくとも1メートル半は優に超えて2メートル近い。
ただでさえいかつい見た目なのにサイズのせいで余計に圧迫感が凄い。
同時、ボクの声に反応したかのようにギロリ、とその瞳がこちらを向く。
「うっそ」
「……あの目」
振り向くその瞳は真っ赤に染まっていた。
単純に充血しているとかそういうのではなく、不気味に赤い光が放たれている。
それが何か前世の知識が即座に教えてくれる。
「……オヤブン個体?」
「……なに?」
「えっと、とにかく暴れん坊ですごく強い個体」
「……分かった」
ゲームだとノンアクティブ系のポケモンですらオヤブン化すると途端に積極的にこちらを攻撃し始めるほどの狂暴性が垣間見えていた。
少なくともこのまま穏便に終わる可能性は正直低い。
なにより……目の前のサイホーンからひしひしと感じる強い敵意がその可能性を否定する。
「アカリ……」
「ん……分かってる」
アカリもまたそれに気づいている。
ピカチュウがいつでも動けるように態勢を低くしてサイホーンを睨んでいる。
ボクもまたいつでもポケモンを出せるようにボールを構えて―――。
「ピィ!」
サイホーンが一歩足を踏み出すより早く、ピィが怒ったようにその背に飛び乗り、直後サイホーンの足元から蔦が伸び、その足を絡めとる。
そんなのまで使えるの!? というボクの驚愕を他所に、『くさむすび』によってあっという間にサイホーンを拘束し、その背でふんすと満足気な表情でふんぞり返った。
「うっそぉ……」
「……すごい」
アカリが感心してしまうほどに多彩な技を使いこなすピィに、トレーナーであるはずのボク自身驚きを隠せない。
だがそんなボクたちの反応を前に、拘束されたサイホーンが鼻息を荒くしながら必死になって拘束から逃れようともがく。
だが助走も無く足の力だけで抜け出せるほど軟な拘束ではない、それでももがき続けるサイホーンの目からはどこか憎しみすら感じられた。
「なんか変だよ。なんでそんなに……」
「ん、そもそも、サイホーンここにいない、はず」
アカリの言う通りであった。
そもそもの話、『おつきみやま』はサイホーンの生息地ではない。
確かに洞窟などに住むポケモンではあるがカントーでの主な生息域は『イワヤマトンネル』、あとは『チャンピオンロード』などだ。
少なくとも図鑑分布が作られた時点でサイホーンは『おつきみやま』には生息していなかった。
なのにこうしてここにサイホーンがいる。
その理由を考える。
色々な可能性がある、だがサイホーンのボクたちを見る視線。そこにこめられた感情を考慮すれば……。
「やだなぁ……」
思考がそこに至ると同時に無意識に内心を吐き出した。
群れからはぐれたポケモンが別の領域に入ってしまって本来いるはずの無いところにいる……というのは偶にある話。
だが本来の生息域である『イワヤマトンネル』も『チャンピオンロード』も遠すぎる。
辛うじて『ハナダのどうくつ』という可能性も無くは無いが……あそこは『シロガネやま』に匹敵し得る魔境なのでそこの住人がピィ1匹に完全に手も足も出ない、というほど弱いはずが無い。
―――つまり自然にやってきたという可能性は限りなく低い。
そうなってしまえば、残る可能性などそう多くはないではないか。
まだタマゴから孵ったばかりの子供ならともかく、こんな立派な生態の……しかもオヤブン*3となるほど成長した個体が、自然にこんな場所に流れ着く可能性を考えるより。
この世界にはボクの知っている限りでも多くの転生者がいて、彼ら彼女らは全員が全員というわけではないにしろポケモンというゲームを知っている。
そしてボクはヒマワリのように転生者であるから、という理由だけで彼らを信用することはできない。
ただ同じ世界からやってきた、というだけの理由で彼らが無条件に信用に値するとは到底思えない。
この世界に生まれた転生者の全てが善人であるだなんてこと、信じられるはずも無い。
実際ボクは『トキワの森』で出会った。
キョウチクトウという名の悪意に。
本人の言によれば彼もまた転生者である。
つまり転生者だからといって皆が皆倫理観があるわけではない、中には悪意ある行動を平然と行う人間も当然いる。
そして
普通に倫理観があるなら現実には絶対にやらないような行為。
RPGの勇者のように人の家に土足で上がり込んで箪笥の中のものを漁ったり、壺を割ったりするなんて行為は現実ではただの犯罪であるように。
ポケモン世界において
かつてのゲーム内では、対人戦において必須とも言えたような要素、けれどそれを現実に持ち込めば当然のように問題がある。
勿論強いポケモンを求める、この一点だけ見れば厳選という行為も決して悪というわけではない。
なんだったらトップトレーナーの間ではある程度当然のように行われる行為でもある。
だがそれは彼らが
ゲーム廃人のような厳選行為を現実に持ち込むことは果たして責任感を伴うだろうか?
無作為にポケモンを集め、その中で必要なポケモンだけを抜き出し、残りはまるで厄介払いするかのように逃がす。
そんな行為に責任感があるわけが無い。
なによりこの世界において『ポケモンを逃がす』という行為はポケモンセンターなどを通じて行政に申請をする必要がある。
ゲームやアニメのようにその場でぽいと逃がすなんてことはできない。
極論だがレベル100のポケモンをその辺の道路に逃がしたら一体どうなるだろうか?
例えばトキワの森のような場所に『ほのお』タイプのポケモンを逃がしたらどうなるだろうか?
砂漠のような環境に『くさ』タイプを『みず』タイプを逃がせば、例えば例えば例えば。
倫理観の無いトレーナーはそういう手続きを面倒に感じて簡単にポケモンを捨てる。
使えないと思えば、邪魔になったと思えば、必要無くなったと思えば、あまりにも簡単にポケモンを手放す。
* * *
・手を伸ばす意味
―――この子、トレーナーに捨てられたのかもしれない。
顔を俯かせ呟くリン君の言葉に下唇を噛む。
目の前で猛るように、怒り狂うように、暴れるサイホーン。
私たちを見て、憎しみすら感じさせる強い視線を向けるその姿に、嘆息する。
一歩、前に進む。
「……寂しい?」
問いかける言葉が、騒々しく暴れるサイホーンに届く。
一歩、前に進む。
「……辛かった?」
サイホーンが激しく暴れる。
私の言葉はサイホーンの感情を逆なでしているだけなのかもしれない。
そう思いつつも、開いた口は、湧き上がる感情は、私の意思を無視するように言葉を紡ぐ。
一歩、前に進む。
「……好きだった?」
その言葉に、サイホーンがびくりと震えた。
その反応が何よりもその心情を語っていて。
一歩、前に進む。
「そっか……私もね、同じようなこと、思ったよ」
―――お父さんは私たちを捨てた。
本人にそのつもりは無いのかもしれない、でもやっぱり私からすればそれだけが事実だった。
昔はその事実を飲みこめなくて、ただ嫌いと否定することしかできなかった。
それでも歳を重ねるごとに、時間を重ねるごとに、事実を事実として飲み込んでいく。
その途中、当たり前だが苦しかった。辛かった。
嫌い嫌いと否定したところで、お父さんがお父さんであるという事実には変わりなんて無いのだ。
例え生まれて一度も会った覚えも無い他人みたいな人であろうと。
お父さんとお母さんが好き合って、私が生まれたその事実だけは確かで。
お父さんが居ないことに辛そうなお母さんを見る度に、お父さんが私たちを捨てた事実を突きつけられているようで。
それでも私はその事実を飲みこんだ。
そういうものだと、心に整理をつけた。
それができたのはリン君が居てくれたから。
毎日のように顔を合わせて、寂しさを感じる暇も無いくらいに遊んで。
私に楽しいをいっぱいくれた、リンくんが居てくれたから、私は私のままでいられた。
今でもお父さんに対して思うところが無いわけではないけれど。
旅の最中、出会えたらバトルしてピカチュウと一緒に思い切り
そんな風に思えるようになった、なれた。
きっとサイホーンも同じなのだ。
その怒りの中には、その憎しみの中には、どうしても隠し切れない寂しさが隠れている。
「好き、だったんだね?」
「……ォォン」
「悲しかった、だよね?」
「ォォォォン」
人間に捨てられたポケモンが、人を恨む……そういうことは偶にある。
辛い目にあって、苦しい思いをして、悲しみに打ちひしがれて。
そういうポケモンがこの世界では稀に存在する。
でもこのサイホーンはそうじゃない。
いずれそうなる可能性もあったかもしれない、でも今はまだそうじゃない。
苦しくて、痛くて、辛くて、悲しくて。
それでもまだサイホーンはどこか人に期待している。
本当に人に絶望してしまえば、その時抱くのは憎しみではない……敵意だ。
もう望が無いからこそ、人に期待なんてしないから、ただ敵としてしか見なくなる。
憎しみとは裏返せばまだどこかで期待を抱いている。
だから、大丈夫。
「……私と一緒に、行こう」
「……ォォン」
ずっとずっと、リン君がそうしてくれたように。
「私が、キミに寄りそうから」
「……ォォォォン」
信じたい、裏切られるのが怖い、期待したい、でもまた捨てられるかも。
いくつもの感情が渦巻いて、身動きの取れなくなったサイホーンにさらに一歩、歩みよる。
そうして、震えるサイホーンの体に手を伸ばし。
「約束、するよ」
「…………」
「……いい子」
ゆっくりとその頭を撫でる。
子供をあやすように。
昔、リン君が私にしてくれたみたいに。
荷物から空のボールを取り出し、サイホーンの前に置く。
「私は、強いるつもり、無いから。もし、嫌なら、良い」
強い個体なのは分かる。
だから野生の中でもそれなりに幸せに暮らしていけるかもしれない。
でも、それじゃ人への信頼は一生戻らない。
ただのお節介なのだろうし、これが必要なことかと問われれば決して頷くことはできない。
でも。
「ただ、放っておけない……ううん、
ピィに目配せする。困ったようにピィが後方のリン君に視線を向け、リン君が多分頷いたのだろう、直後にサイホーンを拘束していた蔦が解けていく。
自由になった体にサイホーンが僅かに戸惑う。だが逃げることはしない、かといって攻撃することも無く。
ただ静かに戸惑い、目の前に置かれたボールを見ていた。
サイホーンがかつてトレーナーの手持ちだったのなら置かれたボールの意味を理解しているはずだ。
そして、だからこそ戸惑っている。
どうすれば良いのか、戸惑い、悩み、足が止まる。
私は……何もしない。
語るべき言葉は尽くした。
元より口が上手い性質ではない。
ただ後はサイホーンの選択に委ねて待つしかできない。
サイホーンがもう一度、人を信用してくれるか否か。
じっと、サイホーンを見つめ、ただ待ち続ける。
十秒経ち、二十秒経ち、それでも見つめ、待つ。
ずっと、ずっと、ずっと。
もう一度、サイホーンが勇気を出してくれるまで、待ち続け。
「……ォォン」
サイホーンが震える足で、頭で、こつん、とボールのスイッチを押し、その体が光となって吸い込まれるその瞬間まで、ただ見続け。
かちん、と音がなった。
この世界にオヤブン個体について。
そもそもLAとかZAとかでオヤブン個体について世界観的な設定がほぼ無いのでとりあえず独自解釈ですが要するにモンハンにおける歴戦の個体とかそっちの感じですね。
成体になった、或いはなるまでの間にたくさんバトルして勝利して特に強くなった個体の総称。
特に短期的に勝利を重ねレベルアップした影響で急激な能力の向上を持て余し狂暴性が増している状態。目が赤くなっているのは興奮して狂暴になっている状態。
ゲームだとサイズ値最大で固定だけど、本作においては特に固定はしてない。単純に強くて勝ち続けた個体がなる。
ただし野生環境だとだいたいの場合、サイズがでかい=強いなので解釈的には間違いでも無い場合が多い。