さてはオリ主だなオメー???   作:水代

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超お嬢様風転生者系〇〇ちゃん

 ・B(erserk)2(nd)試験薬

 

 

 Bタイプ試験薬、或いはHタイプ試験薬と呼ばれるそれはとある()()()()()()ポケモンたちの神経毒を元に作られた『道具』である。

 その効果はBタイプが『物理』系の能力*1を上昇させ、Hタイプが『特殊』系の能力*2を上昇させる。

 

 ……だけならば他にプラスパワーのような道具がある。

 

 この薬の最大の特徴は服用者の『理性』を失わせることだ。

 さらにその状態である程度の命令を聞かせることができる……言わば『洗脳』のための薬に近い。

 ただし無制限に高まり続ける闘争本能のため戦闘以外での使い道は現状無い……が。

 

 

 …………。

 

 ……………………。

 

 …………………………………………。

 

 

 キョウチクトウが投げたボールから飛び出したのはかつてアカリたちも戦ったことのある紫色の棘だらけのポケモン……ニドキング。

 この時点で主力となる『でんき』技が封じられたことを悟る。

 だがそれ以上の問題は男がニドキングに刺した注射器から注入されたであろう薬。

 

 それを投与された直後からニドキングが我を忘れたように暴れ狂っている。

 以前も戦ったがニドキングは本来飛び抜けた能力を持たないが平均的に高い能力とテクニカルな小技、引き出しの多いポケモンだ。

 そんなポケモンがテクニックの全てを投げ捨てたようにただひたすらにタフネス頼りに殴りかかって来る。

 

 明らかに異常なのは分かる。

 

 だがそれならそれでやりやすい……そう思っていたのだが。

 すでに3度、ピカチュウの『アイアンテール』が直撃している。

 4度、『でんこうせっか』を当てている。

 多少強さに差があろうとそれでも倒せるだろう程度にはダメージを与えて……いない。

 

「……硬い」

 

 明らかにダメージの通りが悪いのが感覚として理解できる。

 物理技のダメージの通りが明らかに悪い。

 そう思って放った『くさむすび』はニドキングに大きなダメージを与えた。

 良く分からないが物理ダメージに強くなっている、代わりに特殊ダメージに弱いと見た。

 

 そう思いさらに2度、『くさむすび』でダメージを与えた。

 

 かなりダメージを与えた手応え、先程までのダメージと合わせてとっくに『ひんし』にまで持っていけているはずのダメージ。

 だが……倒れない。

 

「……どういう」

 

 明らかに倒れていもおかしくないダメージで倒れない。

 相手のほうが圧倒的に強いという感じはしない。実際、理性が飛んだように暴れ回るニドキングにアカリのピカチュウは圧倒している。

 相手の攻撃の大半は躱し、こちらの攻撃は当て続けている……寧ろピカチュウのほうが強いかもしれない、そう思っている。

 

 なのに、倒れない。

 

 ニドキングはすでにフラフラだ。

 見るからにダメージの蓄積が激しい。立っていられるような状況ではない……はずだ。

 だが倒れない、そして暴れ回る。

 

 まるで自分の命を度外視しているかのように。

 

「素晴らしいですねえ。 この圧倒的パワー! 圧倒的タフネス! 何より、死を恐れない心! ですが少しばかり理性が飛び過ぎていますか……これは要改善ですかねぇ」

 

 男の言葉に、歯噛みする。

 間違いない……このままニドキングに攻撃を与え続ければ……。

 

 死。

 

 それが脳裏を過ると同時に、ピカチュウへの指示が止まる。

 

「っ……」

 

 声が出ない。

 当然だが突然止まったトレーナーからの指示に、ピカチュウも戸惑う。

 だがその隙をニドキングは見逃さない。

 暴れ狂う勢いのままにピカチュウを押し倒し、その剛腕で薙ぎ払う。

 

「ピカァ!」

 

 悲鳴を上げるピカチュウの姿にはっとなる、咄嗟に反撃を指示するとピカチュウが『アイアンテール』でその腕を払い、そのまま急所となる頭へと叩きつけようとし―――。

 

「っ! 待って……」

 

 咄嗟に止める。止めてしまう、当然ピカチュウは攻撃を逸らす、トレーナーの指示に従って、攻撃を当てまいと思わず逸らす。

 だがニドキングはそれを見逃さない。いや、見逃すとか見逃さないとかそんな複雑な思考はすでに無い、ただ命の限りに暴れ回る、暴れ尽くす、それしかない。

 

 不味い。

 

 それを理解してしまう。

 ピカチュウは決して耐久力の高いポケモンではない。

 あのニドキングの強烈な物理攻撃を何度も受けていればこちらが先に根を上げる。

 

 だがだからといって攻撃を重ねればニドキングが持たない……。

 

 どうすれば良い?

 

 そんなアカリの戸惑いをニドキングは待たず、けれどアカリの状態を……その困惑を理解したピカチュウが『アイアンテール』でその攻撃をいなし、ダメージを回避する。

 そこから相次ぐ攻撃を『くさむすび』で足を一瞬固定する。だが転ばせない程度にする。ダメージが発生しない程度に止める。

 よろめいたニドキングを押しのけるようにピカチュウが体当たりで押し込む。だが技ではないその攻撃、しかもピカチュウのような小柄な体躯ではダメージにはならない。

 でもそれで良い。ふらついたニドキングがたたらを踏む。攻撃の動作が遅れる。それだけ、でもそれで良かった。

 

 あの時……森でのリングマとのバトルを思い出す。

 リングマもまた命を顧みずに戦っていた。

 だがそれは止めた、止められた。リンくんの手で。

 

 どうやって?

 

 ゲットした。あの時、リンくんはポケモンをゲットすることで無理矢理に止めた。

 だがあのニドキングに同じ手は通じない。

 あのニドキングはあの男が投げたボールから出て来た、つまりゲットされた個体だ。

 ゲットされたポケモンにボールは通じない。

 

 ならどうする?

 

 考えても答えは出ない。

 『マヒ』させてしまう、という手も考えたがニドキングは『じめん』タイプだ。

 ピカチュウの『でんき』技は通じないし、『せいでんき』は『じめん』タイプには効果がない。*3

 後は『ねむり』状態にするというのも考えたが、手持ちのポケモンは『ピカチュウ』『ヒトカゲ』『サイホーン』の3体であり、どれも相手を『ねむり』状態にするような技は持っていない。

 

 どうすれば良い?

 どうすればニドキングを止められる?

 

 その答えが出るより早く。

 

「ふむ……そろそろこちらも試してみましょうかねぇ」

 

 呟き、男がもう一本の注射を取り出す。

 そうしてさらに一つ、ボールを手に取り。

 

「次の実験ですよ」

 

 投げたボールから出て来たのはニドキングに似た外見、ただしその体色は水色に近いポケモン。

 ニドラン種のメス個体の最終進化系ニドクインだった。

 

 不味い、不味い、不味い。

 

 さらにニドクインに男が手元の注射を刺し、その中身を投与する……同時に。

 

「オ……オォォォォン」

 

 頭部を掻きむしるようにニドクインが両腕で顔に爪を立てながら叫ぶ。

 明らかに様子のおかしいその様に背筋が凍るような感覚がした。

 

 ニドキング1体ですらこの状況なのに、さらに追加戦力が……。

 

 その事実にアカリの全身が震える。

 

 ―――敗北の可能性が脳裏を過る。

 

 負ければどうなるだろう。

 アカリは、ポケモンたちは……果たして無事に済むだろうか。

 ニドキング、ニドクインは……果たしてどうなるのだろうか。

 この男を野放しにすれば……果たしてどうなってしまうだろうか。

 

 元よりアカリはそう深く考え込む性質ではない、だがどうしても考えてしまう。

 

 やるしかない。

 頭の中には常にその選択肢が過っている。

 

 でもやりたくない。

 同時にその言葉が選択肢を遮り続けている。

 

 決断しなければならない。

 

 でも選択したくない。

 

 何度も、何度も、何度も、突きつけられた言葉を否定して、否定して、否定して。

 

「……ピカ……ピカピ!」

 

 荒い呼吸を何度と繰り返しながら限界が近いと訴えかけてくるピカチュウに、ついに否定しきれない現実が容赦なく襲い掛かって来る。

 きゅっと、心臓が痛くなるような感覚。

 分かっていたはずだ、こうなる可能性だってあることは。

 だからリンくんは何度も何度も念押しした。

 無理矢理にポケモンセンターに帰すことだってできたはずなのに、それでも自身の意思を尊重して……そしてリンくんの代わりにここにやってきたのは自分の選択なのだ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

「……っ! ピカ、チュウ」

 

 押し殺した声で、震えた腕で、ニドキングを指差し。

 

 そうして。

 

 

「助っ人参上ですわよ!!!」

 

 

 横薙ぎに放たれた『リーフストーム』がニドクインを吹き飛ばし、同時にニドキングとピカチュウの間を遮った。

 

 

 * * *

 

 

 ・超(←ここ大事)お嬢様ぱわー

 

 

「お~ほっほっほっほ! 何やら状況は良く分かりませんがアナタ!」

 

 ずびし! という効果音が付きそうなくらいに勢いよく、突然現れた少女が男……キョウチクトウを指差す。

 前触れの無い突然の乱入に誰もが驚き、立ち止まっている中少女が朗々と声を張り上げる。

 

「どう見ても不審者ですわね! つまりアナタが悪ですわね!」

 

 どう考えても言いがかりなのだが、この場の状況的には正しいその言葉に何とも言えないアカリ、そして対象となった男……キョウチクトウはふむと首を傾げ、少し考え。

 

「まあ、問題ありませんかねぇ」

 

 呟き、再びニドキングとニドクインへと指示を出す。

 動き出すニドキングたちに少女はすぐさま自身の隣にいる長い蛇のようなポケモンへと指示を出す。

 

「お~ほっほっほ! しゃらくせえですわ! やーちまいなさいな! ジャローダ!」

「っ……! 待って」

 

 事態についていけていなかったアカリだったが、先程よりさらに威力の上がっていそうな一撃が放たれる気配に咄嗟に止めに入ると当然ながら少女はそんなアカリに怪訝な視線を寄越す。

 

「なんですの? 邪魔しないでいただけるかしら?」

「待って……ニドキングが、死んじゃう」

「はい?」

 

 アカリの言葉に少女が首を傾げ、迫って来るニドキングへと視線を向ける。

 その体についた傷、そして表情、受けているだろうダメージ。それらを見て取った少女の目が大きく見開かれる。

 

「なんですの? あのニドキング、とっくに『ひんし』になっててもおかしくないじゃありませんの」

「……多分、あいつの薬のせい、だと思う」

「っち、しかたねーですわね! さすがに悪人のポケモンといえ殺すのは思うところがありますわ! ならジャローダ!」

 

 即座に『リーフストーム』を止めるがそれを待たないニドクインから『れいとうビーム』が放たれる。

 だがそれに反応してピカチュウが『10まんボルト』でそれを相殺する。

 相殺した時に爆発が起こり、煙が充満するがその煙を突っ切ってニドキングがこちらに襲い掛かり……。

 

「『へびにらみ』ですわ」

 

 向き合うジャローダの視線に真っすぐ突っ込んできたニドキングの体が硬直する。

 さらにぬるりと地を滑るように這いながらニドキングの足元をその尾で引っ掛けて転ばせると『リフレクター』でその上から蓋をした。

 それでももがくニドキングの手足を『くさむすび』で完全に拘束するとニドキングは最早何もできないとばかりにうごうごと身じろぎした。

 

「さーすが私ですわね! ぱーふぇくと! ですわ!」

 

 体を逸らせながら胸を大きく張る少女だが、実際アカリがどうすれば良いのか悩みに悩んでいた相手をこうもあっさりと手玉に取り、身動き一つできないまでに拘束してしまう手管は自らさすがと言うだけのことはあった。

 残るはニドクインだがすでにやり方は見せてもらったのだ。『くさむすび』も『リフレクター』もピカチュウでも使える技だ。

 

「ピカチュウ」

「ピッカァ!」

 

 やることが分かったならばアカリもピカチュウも迷いはない。

 『ばちばちアクセル』で素早くニドクインの裏を取り、そのまま『アイアンテール』でその頭を殴る。

 頭部はだいたいのポケモンの急所だ。当然そこを殴られれば一瞬だが隙が生まれる。

 そうしてふらついたニドクインの足元を『くさむすび』で引っ掛けて転ばせると同時に上から『リフレクター』で蓋をしてさらに『くさむすび』で手足と頭を拘束。

 

「……よし」

「ピカ!」

 

 あっという間に終わってしまった一連の流れに、気づけば少女が目をまん丸にしてアカリを見ていた。

 

「……ん?」

「あーっちゅう間ですわ! なんですの今の!?」

「見本、あったし」

「ですわよね! さすが私ですわ! お~ほほほ!」

 

 自分に少しでも分があるとすぐに自画自賛する少女にアカリが首を傾げつつも視線を男へと向けるが、男はこちらを見ていなかった。

 自らのポケモンが2体、あっという間に行動不能にされたことに驚きつつも男は手元の機械を覗き込んでこちらを気にした様子も無かった。

 一切気に掛けられていない、その事実に怒った……少女が声を張り上げる。

 

「ちょっと! そこの悪人! バトルの際中に余所見なんてお行儀が悪いですわよ!」

「そういう、問題?」

 

 アカリが首を傾げるが少女は気にした様子も無い。

 少女に声をかけられた男がこちらを一瞥し……笑む。

 

「ああ、いやあ、申し訳ありませんねぇ。中々に良いデータが取れましたので。ええ。ええ……ええ。早速このデータで薬の改良をしなければなりませんので。今日はここまでということで」

「ふざけんじゃねーですわ! 誰が逃がすかっての……ですわ!」

 

 ずびし、と少女が男を指差すと同時にジャローダが動き出し。

 

「いやあ、今日はここまでですよ……転生者(どうるい)のお嬢さん」

 

 呟きと共に男の被るベールからぷしゅう、と紫色のガス(クリアスモッグ)が噴き出し始める。

 

「不味いですわ! こっちに!」

 

 即座に少女が反応し、アカリの手を引いてジャローダの後ろに回る。

 そうしてジャローダが『たたきつける』で地面を叩き、風を起こしてガスを吹き飛ばす。

 そうしてガスが消え去った後には―――。

 

「っち、逃げられちまったみたいですわね!」

 

 誰も居なかった。

 

 先ほどまで地に伏していたはずのニドキングとニドクインも。

 

 両者が暴れ街が壊れた痕跡だけが、確かに両者がここにいたことを証明するかのように。

 

「……終わった」

 

 呟き、張りつめていた糸が切れたかのようにアカリの体が揺れるが建物を背に体を支え、何度も深呼吸しながら気持ちを落ち着ける。

 そうして視線をあげれば少女がこちらへとやってきていた。

 

「大丈夫ですの?」

「ん……ありがとう、助かった」

「問題ありませんわ! 見て見ぬ振りなど私の名折れですわ!」

 

 と自分で声に出してふと思い出したように少女が手を叩く。

 

「言い忘れてましたわね、私の名はローザ! イッシュから来ましたの!」

 

 よろしくあそばせ、と胸を張る少女……ローザにアカリもまた頷き。

 

「アカリ……うん、よろしく」

 

 少しぶっきらぼうに返した。

 

 

*1
『こうげき』と『ぼうぎょ』

*2
『とくこう』と『とくぼう』

*3
ゲームだと発動するけど原理考えると無理じゃね? ということで現実だと無し




なんかできそうなのでリフレクターとくさむすびで終わらせたけど、できなかったら当初の予定通り超お嬢様パンチ☆でニド夫妻の顔面にメンタルハーブ叩きつけてた。


Q.ローザちゃんってどんな子?
A.こんな子


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B・H試験薬

Bタイプが『こうげき』『ぼうぎょ』の上昇及び『とくこう』『とくぼう』の下降効果。
Hタイプが『とくこう』『とくぼう』の上昇及び『こうげき』『ぼうぎょ』の下降効果。
両タイプ共通して『HPが0以下になってから一定ダメージを受けるまで『ひんし』にならない』効果。
因みにどちらのタイプも『状態変化』として扱われるし、この効果は『メンタル』系効果に分類される。
まあ本能解放からの暴走させて生命の危機に対しても生存本能が働かないとか洗脳されてるとか完全にメンタル効果だからね。
要するに洗脳して火事場の馬鹿力を発揮させ続けるような効果。
まあ間違い無く体に悪い。
どう考えてもこれ『こんらん』系統の『状態異常』では? って気もするけど『状態変化』なので普通の方法では解除できない。

因みに因みにシステム的な話をするなら
Bタイプは『バーサーク』状態、Hタイプは『ヒステリー』状態として扱われる。
まあそれぞれの英文字の頭文字取ってBタイプとHタイプ。こういう中二的なのは転生者の嗜みだね(
多分これリンくんちゃん側だと一生知らなそうな設定だからここで出しとく。
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