・試合前準備!
その日は朝からタマムシシティ中が賑わっていた。
基本的に毎日賑わっているタマムシシティだが、今日は特に人の賑わいが凄い。
ポケモンセンターの自室の中なのに窓の外から人々の楽しそうな声が聞こえてくる。
「ボクたちも……そろそろ行こうか」
きゅっと、固くしっかり靴の紐を結ぶ。
手荷物の中身を覗き、全て揃っていることを確認する。
最後にホルスターに6つ、ボールが入っていることを確認して。
「……もう6つか。早かった、いや遅かったのかな?」
アカリの手持ちがまだ3匹と考えると大分早かった気がする。
けれどまあ、そういう運命だったのだろう。
どのポケモンとの出会いを思い出しても、例え何か一つボタンをかけ違えて全く違う出会いだったとしても、最終的にはこうなっていた気がする。
何より大事なのは出会ってからだ。出会って、それからボクたちがどうしたのか、それが何よりも大切だから。
「今日はよろしくね、みんな」
ボクのそんな掛け声に、ホルスターに入れたボールがかたりと揺れた気がした。
* * *
アカリと合流しタマムシシティを歩く。
今日の目的地は初めて行く場所ではあるが、どうせこの大勢の人の流れが導いてくれる。
道を行く誰もがタマムシシティで行われる今日の大会について口々に語っているのが傍からでも聞き取れた。
ここにいる誰も彼もが、ボクたちのバトルを見るのだと思うとなんだか不思議な気分だ。
そうして流れに沿って歩いて行くと大きな建物が見えた。
円形の……一言でいえばドームだろうか?
タマムシスタジアム、そう名付けられたその施設はタマムシシティでいかにポケモンバトルの大会がよく開かれているか、それを象徴するかのような場所だ。
実際、一般トレーナーが一番よく出る大会といえばタマムシかヤマブキのどちらかだろう。
単純な規模もそうだが、頻度もそうだ。
参加人数20人未満くらいの小規模な大会ならどちらかの都市でだいたい週1回は開かれている。
さらに月1回くらいで参加人数50人前後の中規模な大会が。
3~4か月に1回くらいは参加人数100人超えの大規模な大会が開かれている。
他の街で大会が無いのかと言われればそうではないが、例えばマサラタウンの大会などあってもよくて地域懇親会くらいの規模にしかならない。
他所の街から人を集めても受け入れるだけの場所が無い、それだけの人数がバトルできる施設も無い。
そしてそれを取りしきれる行政組織も無い。
トキワシティならば……とも思うが、トキワシティはセキエイ高原に最も近い街だ。
あの街に集まるのはポケモンリーグに挑戦するために腕を磨くエリートトレーナーばかり。ポケモンリーグを前にライバルに手を曝すことを嫌うトレーナーもまあまあいるので、都市の規模の割に人が集まらなかったりする。
要するにポケモンリーグ一本狙いのガチ勢が集まっている場所なので、興行的な大会にはあまり集まらないのだ。
そういうわけで必然的にこのカントーで規模の大きい大会といえばタマムシ、ヤマブキの2大都市となる。
とにかくこの2都市に関しては金がある。そして金の使い道もある。
だからこの両都市が開催する大会は賞金、或いは賞品のグレードが高くなる傾向にある。
逆にそのランクを揃えられない他都市の大会はどうしても同じ都市内のトレーナーを対象とした……要するに地元の大会レベルになりやすく、人の噂にもなりづらい。
となるとポケモンバトルの大会といえば……というイメージはどうしてもタマムシ、ヤマブキと結びつく。
「勝とうね、アカリ」
「ん」
事前に参加の受付を済ませてたのでトレーナーカードを提示すればそれであっさりと受付は終わる。
大会に参加しているペアは16組。それを通常のトーナメント形式で勝ち上がりしていくので4回勝てば優勝となる。
16組……つまり32人ってちょっと少ない? と思うかもしれないがタッグバトル、という部分で弾かれたトレーナーが多かったらしい。
単純なダブルバトルではなく、タッグバトル。
つまりポケモンが2匹必要なのではなく、1匹以上ポケモンを所持したトレーナーが2人必要なのだ。
しかもその辺の見知らぬトレーナーと組んだのでは連携に難があるし、何よりそれで仮に優勝しても絶対分配で揉める。
そういうわけで意外と人数が集まらなかった大会だったが、そのあたりは考慮済みというか明日からはトレーナー歴2年目以降のトレーナーだけが出れる大会が始まるらしく、要するに今回の大会はその前座みたいなものらしい。
扱いに多少思うところが無くも無いが、まあ賞品は十分納得できるものが揃っているのだから。
それはさておき、大会だ。
前提として今大会は基本的にバトルで使用できるポケモンは1体のみ使用の変則的なダブルバトルだ。
つまり出したポケモンが相性が悪かったから裏に変える*1、ということは基本的にできない。
それから事前情報にもあったがこの大会はトレーナー歴が1年未満のトレーナーのみが出場できる。
ここが少しややこしいのだが、トレーナーになった日と旅に出た日というのは異なる。
例えばボクがトレーナーになったのは去年の誕生日の翌日。旅に出たのは今年の4月だ。
つまりボクがこのトレーナー歴1年未満という条件から外れるのは次のボクの誕生日の翌日となる。
これはトレーナー資格自体は10歳から取得できるというカントー地方における法律のため。
つまり同じトレーナー歴1年未満といってもトレーナーとして過ごした時間には大きな差異がある。
或いはボクたちのようにトレーナー資格を取る前からポケモンを保持していて旅に出た時にはすでに育ったポケモンがいる、という可能性も普通にある。
そういうわけでピカチュウとシャンデラのコンビで蹴散らして終わり……とはいかないかもしれない。
ピカチュウもシャンデラもすでにジムリーダーの本気のポケモンを相手にできるレベルがあるのだから、普通に考えればここまで育てきっている……ということは無いと思うのだが。
実際、シャンデラがあそこまで育っているのはピカチュウがいたからだ。
加速度的に成長し続けるピカチュウをどうにかこうにか相手にし続けるためにあの手この手と対処をしていたからこそここまで育った。
逆にピカチュウがここまで成長し続けたのはシャンデラがいたからだ。
またトレーナーが未熟だった時から何度となく負け続け、自分の欠点を改善し続けて最終的には互角の強さを得た。
ボクもまたそうだ、アカリに負けないように強くなった。
アカリもまたボクに勝つために強くなった。
ボクたちがお互いが一番のライバルだった、ライバルで居続けるだけの力があった、だからこそお互いが競い合えた、互いを磨き続けることができた。
もっともボクのトレーナーとしての才能はアカリのそれに比べれば劣るのだろうが……だからといってそれがバトルの勝敗に直結するかといえばそんなことはない。
足りない才能は別の何かで補えば良い。ボクもまたそれに気づいたからこそ劣等感に苛まれるようなことも無くアカリと一緒にいられる。
正直これは割と奇跡的な関係なのだと思う。
だいたいの場合、どちらかのトレーナーが段々と勝ち続けて最終的に一方的になってしまうのが常なのだ。
ボクたちのように本当に勝って負けてを延々と続けているトレーナーたちというのは本当に中々いない。
或いはそれができたとしてもどこかで才能の上限に行き当たる。その時点で片方が脱落し、もう片方は次の相手を求めて去る。
今回のタッグバトルの中で果たしてどれだけのぺアがボクたちと同じ域にいるだろうか。
分からない。
「ボクさ」
「ん?」
分からないが……。
「キミ以外に負ける気はしないかな」
「……私も、リンくん以外には、負けない」
それでも。
「じゃあ、勝ちに行こうか」
「……うん」
負ける気はしなかった。
* * *
・おでん食べたい
大会が始まる。
32人を16人に振り落とすための戦い。
ボクたちの最初の相手は同年代の男の子2人組。
白いバンダナが特徴のシライシと前世じゃちょっとお目にかかれないくらいの尖り具合のツンツン頭のタキガワで
投げたボールから飛び出してきたのはガーディとニョロモ。
「オレのガーディが苦手な『みず』ポケモンはアイツのニョロモが」
「ボクのニョロモが苦手な『くさ』ポケモンは彼のガーディが対処してくれる、これで負けは無いね!」
と言っていたがこちらはボクがピィを、そしてアカリが初手警戒でピカチュウ。
どうやら『でんき』タイプに対しての対策はしてなかったのでピカチュウの『でんきショック』1発でニョロモがダウン。
相方がワンパンされたことに動揺したシライシが指示に詰まる。当然ガーディの動きも遅れ、その隙をついたピィが『てんしのキッス』でガーディを『こんらん』状態に落とす。
『こんらん』してしまい指示が上手く届かないガーディにさらにピカチュウが『でんこうせっか』で吹き飛ばし、その隙に何故かピィが突然『ゆびをふる』からの『だいちのちから』を引き当ててガーディに止めさしていたがボクは『ゆびをふる』なんて指示してないことだけは明記しておく。
大会が続く。
16人を8人に振り落とすための戦い。
続いての対戦相手は男女のカップルらしい、自称ラブラブチームのダイスケとコンナ。
先ほどの相手とは違い、どうやら15歳前後くらいのコンビだろうか?
この大会は別に10歳限定というわけではない……トレーナーになって1年未満が対象なので14歳でトレーナーになれば15歳くらいでもこの大会に出れるだろうが、ちょっと珍しいような気がした。
まあそんな
あーそれっぽい、とは思うけどよりによってタッグバトルでタイプ被りってどうなんだろう?
まあ問題は無い。
アカリのサイホーンが『とっしん』して相手の連携をかき乱し、その隙をついてボクのライチュウが『サイコキネシス』でニドリーノを叩く。
レベル差も多少あったが、それ以上に種族値の差というものが大きくタイプ相性もあって一撃でニドリーノが『ひんし』になる。
一気に追い込まれたコンナがニドリーナに必死に指示を出すが、冷静に詰めていってあっという間にニドリーナを『ひんし』に追いやった。
大会が続く。
8人を4人に振り落とすための戦い。
準決勝となる舞台の相手は……なんというかこう、すごく主人公ぽかった。
ハンスという名の少年は金髪のオールバック、しかも目が赤い。
鋭い目をしており、腕には謎の円盤が……いや待って、それデュエルディスクでは???
もう片方の少女ペンデュラも銀髪ロングで緑と赤のオッドアイで……なんかこうプリティでキュアキュアな日曜の朝にテレビで出てそうな女の子が使ってそうな宝石で象られたアミュレットを持っている。
なんか……世界観違うよこの人たち。
一体ボクはどこの時空に迷い込んでしまったのだろうか、と一瞬不安になったがいざバトル開始の合図と共に投げ込まれたモンスターボールにボクは心底安堵した。
ハンスが繰り出してきたのはなんとエルレイドだった。
カントーでは見ない珍しいポケモンだ。ボクも驚いていたが、観客も驚いていた。
アカリだけは一瞬目元が揺れた……くらいの反応だったが。
ペンデュラが繰り出してきたのはピッピ。
ただしこのピッピが想像以上に厄介だった。
『てだすけ』や両壁、『いのちのしずく』でエルレイドを徹底的にサポートした。
さらにどうやら特性が『フレンドガード』だったらしく、その上持ち物で『しんかのきせき』持ちだった。
びっくりするくらいガチ仕様だったのだが、『かげふみ』シャンデラとかいう虚構の産物は想定外だったらしく、ピッピのサポート虚しくエルレイドがシャンデラの『シャドーボール』を受けきれずに『急所に当たった』ことで壁の防護を貫いて『ひんし』……攻撃技が一つもないピッピだけ残ったところで、という時点でペンデュラもギブアップした。
因みにこの2人、試合後に少しだけ話したのだがどうやら転生者っぽい。
それもいわゆるコスプレ勢みたいな感じで、世界観が違うだろと言いたくなる恰好もそのせいだったようだ。
そうして舞台は進み。
―――決勝戦となる。
手持ちポケモンの現在レベルとかあとがきに欲しい?
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いる
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いらない