さてはオリ主だなオメー???   作:水代

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シンプルに強いって一番どうしようもないやつ

 ・ トーナメント決勝戦

 

 

 当たり前の話だが、トーナメントを勝ち進むごとにバトルとバトルの合間というのは狭まって来る。

 だが決勝戦となるとそれぞれ準決勝の勝者同士の戦いになるのだが、当然後半に戦ったタッグは決勝までの時間が短くなる。

 この間にポケモンの回復なども済ませる必要がある以上、あまり短いのは不公平となるので準決勝から決勝までは長めに時間を取られ、先に3位決定戦が行われる。

 

 3位決定戦を勝ち取ったのはボクたちの戦ったハンペンコンビ。

 

 まああのコンビはダブルバトルの完成度が高かったので妥当な結果と言えるかもしれない。

 結果的に準決勝から1時間くらいは間が空いて、いよいよ決勝戦となった。

 

「アカリ、準備は良い?」

「ん……問題ない」

 

 これが最後のバトルなのでアカリも出し惜しみは無しだ。

 当然相棒のピカチュウを出すことに決めている。

 まあスタジアム内で選手はポケモンをボールに入れることが義務づけられているため今はアカリの手の中だが。

 ボクも本当はシャンデラを出す予定だったが、ミュウがボールの中から出せと全力でテレパシーを送って来るので仕方なくミュウで行くことにする。

 

「強さは間違いないけど……連携できるかなあ」

「ん……合わせるから、大丈夫……のはず?」

 

 ただ基本的にミュウはゲットしたばかりのポケモンであり、根本的にポケモンバトルというものを理解しているのか怪しい。

 一応ルールは教えたが気まぐれ……というより幼子のような無邪気さがあるので、意識せずにルールを侵してしまう……ということはあり得る。

 知能だけなら人間と同等以上に高いのでそのあたりは自制してくれることを期待するしかない。

 

 何はともあれすでに他のボールは不正防止のために預けてしまったのだ。

 泣いても笑ってもミュウで行くしかない。

 

 バトルフィールドへと向かう通路を歩きながら頭の中を整理する。

 

 ミュウの使える技は膨大だ。

 そもそもゲーム時代からミュウが覚えられない技のほうが圧倒的に少ないというレベルでなんでも覚えることができた。

 以前にもニドキングに変身して技を使用していたが、変身先で技を使用することで野生環境でも色々な技を学び、身に着けていることはポケモン図鑑の解析によって分かっている。

 

 ―――禁じ手も……使えると言えば使えるんだよね。

 

 ゲーム対戦時代からミュウにだけ許された禁じ手があるのだが、リアル仕様で考えるとあまりにも強すぎるので倫理的問題としてそれやっていいの? という疑問がある。

 そもそもやる必要性すら無いのでは? という気もする。

 実機の対戦のようなレベルフラットルールなんてものは無いのだ。

 レベルというものを数値化できないこの世界だが比較することで体感的に強い弱いというのは理解できる。

 

 その上でいうなら、ミュウのレベルは100くらいあるかもしれない。

 

 以前にもいったが、ボクのシャンデラは体感で70以上はあると思っている。

 そのシャンデラと比較してもミュウは劣らない、どころか勝っており、その差を考慮するとこれ100くらいはあるのでは? という結論にたどり着く。

 

 何度も言うがレベルというものを数値化できない以上それはボクの感覚的な数値でしかない。

 さらにその上でいうならジムリーダーの本気クラスがレベル90前後……つまり四天王やチャンピオンは100を超えることになる。

 

 なのでミュウのレベル100という数字は決してカントー屈指の強さというわけではない。

 寧ろ上には上がいる、というレベルだ。

 けれどこんな新人トレーナーしか出ることのできない大会で出して良い数字ではない。

 

 正直アカリのピカチュウやボクのシャンデラですら過剰なレベルなのに、さらにその上とか蹂躙にしかならないのでは?

 

 まあそんなのは慢心なのでやるなら確実に勝つため徹底的にやるわけだが。

 

 つまり何が言いたいかというと、あれこれ小細工しなくても普通に『サイコキネシス』連発しているだけでも大半のポケモンには勝てるだろう、ということだ。

 

 ―――まあそこは、相手次第かな。

 

 油断はするつもりは無い、が客観的に見て実力的には負ける要素は無い……それが事実だった。

 

 そうして。

 

 決勝戦の舞台に上がった瞬間、わっと賑わう観客、そして騒々しい実況の声がボクたちを襲う。

 

 新人同士とはいえ、都市主催の大舞台、その決勝戦。

 会場のボルテージは上がり続ける。

 

 フィールドの対角線に現れたのは男女のペア……だと思う。

 

 いや、曖昧な言い方になるのだが全身を真っ黒なローブで隠しているため顔の認識すらできないし、体つきも良く分からない。

 ただ電光掲示板に表示された対戦相手の名前が『ミスター・アンノウン』と『ミス・アンノウン』なので多分男女なのだと思う。

 

 あーうん、その、ね?

 

 準決勝とは別ベクトルで転生者臭すぎる……。

 

 というかまたコスプレ勢か。

 この大会の上位こんなやつらばっかだなあ、とかこんなイロモノと一緒くたにされたくないなあ、とかそんなことを考えつつ。

 審判の開始の合図に全員がボールを投げる。

 

 男の投げたボールからはゲンガーが。

 女の投げたボールからはフーディンが飛び出してくる。

 

 そしてアカリの投げたボールからピカチュウが。

 

 ボクの投げたボールから飛び出したミュウの姿に、会場が騒めいた。

 

 

 * * *

 

 

 幸いにしてミュウはこちらの指示によく従った。

 先制でピカチュウの『ばちばちアクセル』がフーディンを吹き飛ばす。

 フーディンはその極めて高い『とくこう』や『とくぼう』に比して純粋な『HP』や『ぼうぎょ』が低い。

 物理攻撃に対しては本当に紙耐久といってしまって良いくらいだ。

 

 だから先制の一撃は強烈な一撃となってフーディンに打撃を与える。

 

 そして相手のゲンガーがフーディンをフォローしようと動くより先に、ミュウが『サイコキネシス』で拘束しようとして……咄嗟の判断か、ゲンガーが足元の影に潜って消える。

 視認できない相手に対してはさすがにミュウも技が発動できない……ので即座に『シャドーボール』でフーディンへと追撃する。

 さすがにそれはもらえない、とフーディンが『テレポート』で避けてさらにピカチュウから距離を取る。

 直後にミュウの足元からゲンガーが飛び出して『シャドーパンチ』を打って来るが。

 

「受け止めて」

 

 突き出したミュウの片手がゲンガーの拳をあっさりと受け止める。

 威力の低めの必中技。ゲンガーの『こうげき』の低さを加味したとして、『こうかはばつぐん』となる技がこの程度、となると。

 

「ミュウ……叩け」

 

 ボクの指示にミュウが掴んだままのゲンガーを引き寄せながら……『サイコショック』によって受けた衝撃に地面に叩きつけられる。

 なんとか影に潜って追撃を逃れるゲンガーだが、再びフーディンの傍に出てきた時には全身を震わせながら荒い息を吐き出し、今にも倒れそうな状態だった。

 

 やっぱり、と内心で嘆息する。

 

 レベル差が酷い……多分あのゲンガーのレベルが50前後くらい。

 新人トーナメントの舞台としては十分過ぎる。多分こっちがシャンデラだったら相性的にももう少し苦戦したかもしれない。

 だがミュウ相手は無理だ。

 

 実機対戦でのフラットルールにおいてミュウのような種族値が全て100で統一された幻のポケモンというのは使いづらいところがあった。

 

 尖ったところが無い器用貧乏な数値。

 

 実際ミュウより種族値合計が高いポケモンというのは基本的には伝説のポケモンなどばかりだ。

 

 だが合計でミュウより低くとも、一つの能力で見れば……種族値100というのは高いように見えて一般ポケモンでもっと高い数値を持つポケモンがいくらでもいる。

 だからそういう尖ったポケモンとぶつかり合うと長所を生かし切ることも無く打ち負けるということが多々あった。

 

 だがレベルというものが無い現実において種族値が全て100のミュウはなんというか隙が無さ過ぎる。

 攻撃も防御も素早さも、タフさも含めて全てにおいて卒が無く、付け入る隙を見せない。

 シンプルに強い、だからこそそれを打ち破るにもシンプルな強さが必要になる。

 

 さらにいえばミュウはほぼ全ての技を使うことができる下地がある。

 

 つまりただでさえ能力的に付け入る隙が無いのに、覚える技も多過ぎて対応力が高い。

 ゲームにおいて器用貧乏だった存在は、けれど現実的に考えて万能と言うしかない。

 

 ―――これはもう無理だなあ。

 

 どうやっても負ける気がしない。

 

 ゲンガーが行動するより先に、ミュウが『ちょうはつ』を決めた瞬間、相手のトレーナーが崩れ落ちた。

 相手も今までの攻防で分かっていたのだ。ミュウのシンプルな強さに。

 だがバトルは能力値で負けているだけで勝敗が決まるような浅いものではない。

 けれどそれを見越した『ちょうはつ』でゲンガーの変化技を封じた。

 これでもう『のろい』だろうが『みちづれ』だろうが使えない。

 

 多分『みちづれ』でも指示しようとしていたのだろうが、『ちょうはつ』でそれをご破算にされたことで一瞬動きが止まり―――その直後、その体をピカチュウが吹き飛ばす。

 タイミングをずらした『ばちばちアクセル』が決まり、ゲンガーが吹き飛ばされ……耐えられない。

 

 『ひんし』となったゲンガーがボールに戻っていき、残ったフーディンが必死に足掻くが……どう足掻いても勝ち目はない。

 

 開幕で『サイコフィールド』でも張っていれば……開幕で『みちづれ』を使う判断ができていれば……或いはまだ可能性はあったのかもしれないが。

 

 だが情報が無い一発勝負のトーナメントにおいてそれは()()()()に過ぎない。

 

 ミュウの『サイコキネシス』に拘束されたフーディンが本日3度目の『ばちばちアクセル』を避け切れずに食らったところで勝負が決まった。

 

 

 * * *

 

 

 決勝戦が終わった後は表彰式となる。

 優勝者には優勝賞金と豪華賞品……なのだが、賞品に関しては正確にはカタログを与えられて、この中から好きに選んで後日渡す……という形式らしい。

 因みに賞金だけで50万もらえた。さすがタマムシシティ太っ腹である。

 さらに因みにこれがシングルの大会だったら賞金は100万らしい。

 

 前世だとポケモン対戦というのはシングルよりダブルのほうが規模が大きかった。

 世界大会などがあるのもダブルバトルだけだったのだが、現実においてはポケモンバトルの主流はシングルバトルであり、ダブルバトルは一部地方でやってるくらいの扱いらしい。

 

 まあゲームのように思考時間が60秒あるわけではないのだ。

 10秒にも満たない時間で2体分の指示を考え、実行する。その上で相手の裏を読むなんて並の人間にできることではない。

 それにゲームではあり得ないようなことだが乱戦状態みたいなことにもなるらしい。

 ゲームだと2体のポケモンが味方サイド、相手サイドで並んで攻撃していたわけだが、例えば直接攻撃をするなら相手に接近する必要がある。

 これが4体集まると4体のポケモンが攻撃のために近づき、互いにつかず離れずで攻撃したり避けたりする……こうなるとポジションが入り混じって敵も味方も分からないような状態になる。この状況で相手だけ範囲にとって攻撃する……なんてことは無理だ。

 

 なんだったら味方の攻撃で誤射が発生したり、同士討ちしたり……とにかく複雑なのがこの世界のダブルバトルだ。

 

 それに対してタッグバトルは比較的人気が高い。

 種類としては変則的ダブルバトルなのだが、何が違うのかと言われるとトレーナーの人数だ。

 ダブルバトルは1人のトレーナーが2体のポケモンを出して戦うのに対して、タッグバトルは2人のトレーナーが1匹ずつ出して戦う。

 サンムーン時代のバトルロワイヤルで2人組を作って戦うような感じだろうか。

 

 こちらはそれぞれのポケモンにトレーナーがついているので、コンビネーションプレーがより重要になる。

 

 フィールドの中で4体のポケモンがわちゃわちゃと戦っているのが人気らしいのだが、まあなんというかあれだ。

 

 多分感覚的にいうとスマ〇ラ(別ゲー)でも見ているような感覚だろうか。

 

 そういうわけで今回もタッグバトルだったらしいが、また別の月にシングルバトルの新人大会もやるらしい。

 参加条件は同じなので参加を検討しても良いのだが、シングルなので当然ながらアカリが出るなら敵同士ということになる。

 公式戦で戦うとしたらバッジを全て集めてからだと勝手に思っていたのでその可能性に思い当たった時に少し戸惑った。

 

 ともあれだ。

 

 大会が終わり、控室で荷物を片付けてアカリと通路を歩く。

 大会後の片付けにスタッフらしき人たちが忙しなく通り過ぎて行く。

 途中で慌てていたのかアカリがぶつかってしまった人がいたので互いに謝りながらスタジアムを出で、さて戻ってカタログでも見ようかとアカリと話していると。

 

「ん……?」

 

 突然アカリが立ち止まる。

 それからそわそわと忙しない様子で服やパンツのポケットに手を突っ込む。

 

「どうしたの?」

「……スマホ、無い」

「え?」

 

 そんなことをアカリが言い出す。

 念のためボクのスマホを探すが、すぐのポケットから出てくる。

 それからアカリのスマホに電話をかけてみる、が。

 

「電源、切ってる」

「あー」

 

 バトルの前に電源を落としてそのままにしてしまっていたらしい。

 多分タイミング的には控室だろうか? さすがに通路で落としたなら一緒にいて気づかないはずが無い。

 

「取りに行こっか」

「ん……行って来る、から。先、戻ってて」

「良いの?」

「ん」

 

 短く頷いて、スタジアムへと逆戻りするアカリの背を見送りながら、まあアカリがそう言うならとポケモンセンターへと戻る。

 

 ―――ああ、本当に。

 

 なんて馬鹿だったのだろうか。

 

 ―――なんて、短絡的だったのだろうか。

 

 考えれば分かったはずのことなのに。

 

 ―――未だにボクは、ゲーム気分が抜けていなかったらしい。

 

 幻のポケモンミュウ。

 

 その希少性を。

 

 その価値を。

 

 公の舞台で見せつけてしまった。

 

 その意味を。

 

 ボクは、何も分かっていなかった。

 

 その可能性に思い至ったのはそれから数時間後。

 

 

 どっぷり日も暮れて。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

手持ちポケモンの現在レベルとかあとがきに欲しい?

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