「おーほっほ! やりますわね! けれど次もそう上手くはいきませんわよ!」
高らかな宣言と共に投げられたボールから飛び出したのは。
「ベイベーイ!」
『はっぱポケモン』ベイリーフ。
ジョウト地方の初心者用ポケモン、チコリータの進化系だ。
先ほどのフシギダネと比べると『どく』タイプが無い分戦いやすいが進化して能力が高くなっている分難易度は上がっている……といったところか。
「ベイリーフ、『あまいかおり』ですわ」
「ベイベーイ!」
アカリとヒトカゲが相手の初手を警戒している最中で、何の躊躇も無くベイリーフに指示を出す。
ベイリーフが放つ『あまいかおり』にヒトカゲの警戒が緩むが、即座にアカリが反撃の指示を出して。
「『かえんほうしゃ』」
「カーゲ!」
ぼう、とヒトカゲの口から放たれた炎がベイリーフを襲う。
だが『あまいかおり』によって気が緩んだせいか、僅かに狙いが甘い。結果的に命中はしたが直撃は取れなかった……ダメージ的には7割くらいといったところか。
それでも『こうかはばつぐん』の高威力技だ、それなりにダメージはあったはずだが。
「ベイベーイ!」
痛手ではあるが許容範囲内とばかりにベイリーフが『ひかりのかべ』を張る。
これで特殊攻撃技のダメージは大きく軽減されることになる。
「ヒトカゲ」
「カゲ!」
ヒトカゲの全身が炎に包まれ、同時に突進する。
『ニトロチャージ』の突進にベイリーフが四足歩行見合わない軽いステップで横に動き直撃を避ける。
元の威力の低さも相まってあまりダメージにはならないままにベイリーフが即座に『リフレクター』を張る。
これでほとんどの技のダメージが半減されることになった。
それを理解しているアカリは次の指示を出し、ヒトカゲが『ほのおのうず』でベイリーフを拘束する。
ダメージ自体は軽微だが『ほのおのうず』は拘束中にスリップダメージを発生させる。
これは『リフレクター』や『ひかりのかべ』では軽減されないので現状では有効なダメージソースとなっていた。
だがその隙にベイリーフが『こうごうせい』で大きく回復していく。
させまいとヒトカゲが『かえんほうしゃ』でベイリーフを攻撃するが、『ひかりのかべ』でダメージが軽減しているせいか回復量のほうが大きいようだ。
やはりシンプルに能力値が足りない。
それに気づいた時、アカリが一瞬目を細めて。
「ヒトカゲ……
一言呟いたその瞬間。
「なんですって!?」
徐々に姿を変えていくヒトカゲ、その意味を理解してローザ姉が目を見開く。
いや、これはボクも驚いた……確かに今まで進化させていなかっただけで進化に必要な力は十分つけていたが、それでも今のは完全にアカリとヒトカゲが自分の意思で進化のタイミングを決めていた。
ゲームでもZAなんかは自分で進化タイミングを決められたが現実的にはだいたい自動で進化する。進化キャンセルというか止めることはできるが逆に促すことはできない……と思っていたのだが。
―――ホントトレーナーに関しては天才的だよね。
分かってはいたつもりだったが、それでもまだ足りないくらいには。
* * *
拮抗していたはずの力関係はヒトカゲのリザードへの進化によって完全に崩れる。
さらに火力の上がったリザードの『かえんほうしゃ』によってついに『ひかりのかべ』で半減してもなお攻撃のダメージが『こうごうせい』の回復力を上回った。
他の搦め手も使ってリザードを押しとどめようとしたベイリーフだが、あらゆる搦め手を文字通りの
そうしてローザ姉の最後の1体として出て来たのはホウエンの初心者ポケモンであるキモリの最終進化系であるジュカインだった。
これまでの2体と比してあまり搦め手を得意としないアタッカータイプのポケモンであり、恐らくこれまでの2体で散々搦め手で苦戦させておいて3体目で純アタッカーで抜いていく……というコンセプトなのだろうが、よりによってアカリ相手にスピードタイプのポケモンで勝負したあたりでもう結果は見えていた。
以前のカスミ戦の時のボクもそうだが、シンプルにスピードで勝負してくるような相手は大半がアカリのピカチュウの劣化にしかならない。
散々バトルしてきたボクもそういう相手は得意だし、アカリだって自分でそういうタイプを使い続けてきたのだからスピードタイプのアタッカーに対して慣れ切っており、当然自分がされて嫌なことというのも分かりきっているためジュカイン相手の対処にもさほど苦労はしていない様子であっさりと封じ込めた。
「悔しいですわ~!」
と嘆くローザ姉だったが、すぐに気を取り直してアカリにバッジを渡す。
そうして続きざまにボクの番となり、アカリと入れ替わりにフィールドへと向かう。
途中でフィールドから戻って来るアカリとすれ違い……。
「がんばって」
「え……うん」
珍しいアカリの言葉に一瞬きょとんとしてしまうがすぐに頷き手を振って別れる。
これで4度目のジム戦だがこのタイミングでアカリに声をかけられたのは初めてな気がする。
珍しいこともあるものだ、ともう一度思いながら……少しだけテンションを上げてフィールドの端、トレーナーゾーンに立った。
「お~ほっほっほ! まさか就任してすぐにアナタとこうしてジム戦する日が来るとは思いませんでしたわね、リンドウ!」
「まあそうかもね、ローザ姉がこっちに来るなんて旅に出た時は思ってもみなかったし」
先ほどのバトルの疲れも無さそうなローザ姉が元気いっぱいに高笑いしているが、まったくもってこんな日が来ることを予想もしていなかった。
けれどそれもまた良し、先が見えている旅なんて退屈でしかない。
波乱万丈過ぎるのも嫌だけど、それなりに刺激は欲しいなんて贅沢なこと言ってみたり。
「ふふ……じゃあローザ姉、全力で勝ちに行かさせてもらうよ」
「お~ほっほ! やってごらんなさいな! 返り討ちですわ!」
ルールは公式戦準拠。
ただし使えるポケモンは互いに1体までとする。
「行きなさいな! ロゼ!」
「行くよ、シャンデラ」
こちらは予定通りシャンデラを。
そしてローザ姉が投げたボールから飛び出したのは『ロイヤルポケモン』ジャローダだった。
ジャローダの進化前のツタージャが最初にもらう初心者用ポケモンであること、出身がイッシュ地方であることを考えれば恐らくローザ姉が最初にもらったポケモンなのだろう。
つまりジムリーダーになるまで上り詰めたローザ姉が最も長く共に戦ってきただろう相手……ジム戦の個体と違ってニックネームまでつけていることを考えれば本気の手持ちなのは間違いない。
強敵だ、そのことを確信すると同時にシャンデラが動く。
それに負けじとジャローダも動く。
指示も無い『へびにらみ』によってシャンデラの動きを止めようとしたジャローダだが、先に動いたシャンデラのほうが少しばかり早かった。
飛び出した『みがわり』がジャローダからの視線を遮り、技を無効化する。
「あら、やりますわね」
「そっちもね」
言いつつそれならばと『ひかりのかべ』で守りを固め、それに対応するようにこちらは『めいそう』で火力を上げる。
直後に放たれた『ソーラービーム』、溜めも無く即座に放たれたそれに驚きながらも『かえんほうしゃ』で迎撃する。
「さすが……」
「そちらも中々ですわ」
先ほどからローザ姉が一度も指示を口にして
いない。
さらにいうならジャローダがローザ姉を見ることもしていない。
つまりそれ以外の方法で指示を出しているわけだが、恐らく付き合いの長さでローザ姉のやりたいことを『なんとなく』察して動いている。
単純な絆の強さ、それを察することができるだけにその手強さも理解できてしまう。
それでもボクとシャンデラは同じ存在だ。
絆なんてレベルではない、文字通り
問題は単純な『すばやさ』で負けているせいで一々追いつかれる点だが。
「そこは読みでカバーかな」
こちらの動きを極力減らしながら相手を動かす。
今必要なのはそれだ。
俊敏に動き回るジャローダの動きを捉えるのは簡単なことではないし、ベテラントレーナーのローザ姉の思考を上回るのも簡単なことではない、が。
「そんなのこの先ずっとだしね……」
アカリと共にポケモンリーグに挑むのならば、ボクより格下のトレーナーなんていないだろうし、ボクの手持ちたちよりレベルの低いポケモンなんていないだろう。
ボクたちはこの先もずっと格上に挑み突けるのだ。
もしそれが終わる時は1つだけ。
―――カントーの頂点に立った時だけだ。
だから格上相手に臆することなんて意味がない。
どうせ戦う以外に術がないのだから、必要なのはどうやって倒すか、それだけだ。
「準備運動は終わりだ、シャンデラ」
紐を通し首にかけた指輪を握りしめる。
「さあ、ここからが本番だ」
直後、指輪が激しく光を放ち。
「ボクたちの限界を超えていこう」
それに共鳴するかのようにシャンデラの全身が光に包まれていく。
「シャンデラ」
呼びかけるボクの声に、シャシャ、と笑ったような声を返すシャンデラを見つめ。
「メガシンカ!!」
叫ぶように告げた言葉に、シャンデラを包む光に亀裂が走り、やがて岩でも砕けたかのように剥がれ落ちた。
「シャシャシャ!」
そうして光の中から現れたその姿は腕のようなものが複数に増え、さらにその身に灯す炎を随分と大きくしたようなメガシャンデラだった。
* * *
メガシャンデラ。
その姿を見て先日の大会の優勝賞品で何を選んだのか察する。
なるほど、なるほど、教えたのはローザ自身ではあるがまさかこうもあっさり優勝して商品を掻っ攫って来るとは、自分の従姉は予想以上に優秀だったらしい。
「うふ……うふふふ……あはははははは、
転生してからは努めて抑え込んで来たはずの素が零れ出るくらいに笑えてくる。
そんなローザの口調の変化に反対側のフィールドでこちらを見ていたリンドウが目を丸くして。
「―――?」
何かをぼそりと呟いた。
よく聞こえなかった、というかそもそも気にならなかった。
ただただ楽しい。予想以上に、予定外に、楽しくなってきた。
「ロゼ」
言葉は最小限で良い。
それだけで数年の付き合いのこの相棒は全てを察してくれる。
「ロォォォォ!」
タマムシジムの天井はジムの特性に合わせてか日の光を取り込めるようにガラス張りになっている。
そのお陰で日が出ている時間帯、このジムの天井からは十分な日の光が差し込んでいる。
元よりジャローダという種族は『太陽の光から生成したエネルギーを長い体の中で数十倍に増幅させる』と図鑑説明にある通り、日の光から効率良くエネルギーを生み出せる種族だ。
さらに
ジャローダの特性は『しんりょく』、珍しい特性としては『あまのじゃく』。
ロゼの特性は
種族的才能が開花したのか、はたまた性質、或いは性格の影響か。
ロゼがジャローダに進化した時、世界的に見ても非常に珍しい特性が発露した。
「ロゼ」
「ロォォォォォォォォ!!」
特性『メガソーラー』によって一呼吸の間に日の光を膨大なエネルギーに変化し、『ソーラービーム』が光の柱となってメガシャンデラへと飛んでいく。
メガシャンデラは先程同様に『かえんほうしゃ』で押し流そうとするが、差し込む日の光を吸収し続け常時変化し続け放たれる『ソーラービーム』は途切れることなく放たれ続けられる。
しばらくは『かえんほうしゃ』で防がれていたがやがて技が続かなくなったのか少しずつだが逆に押し込んでいき、やがてシャンデラが吹き飛ばされる。
「……まじかあ」
メガシャンデラが押し負けたその光景にリンドウが思わず、といった様子で呟く。
まあ実際ゲームならあり得ないような光景、だがこれが現実だ。
相性不利を覆す方法なんて実際のところいくらでもある。
「さあ、一気に押していきますわよ!」
「ロォー!」
大きく手を挙げ、降ろす。
それは相棒への一つの合図だ。
「ロォォォォォォ!」
ロゼが大きく息を吸い込む、と同時にその周囲にキラキラとした光の粒子が浮かび上がる。
「リンドウ! それにアカリ! アナタたちが本気でトップトレーナーを、地方の頂点を目指すというのならば、これを覚えておきなさい!」
“
トレーナーとして上へ上へと行く中で絶対にぶつかることになる壁が『技数の少なさ』だ。
公式戦において1体のポケモンが出せる技は4つまでと限定されている。
このタマムシジムのような例外はあるが、そうでないならこの技数の制限は1匹の強いポケモンが飛び抜けないようにという制限だ。
技数が制限されるからこそある程度役割というものができてくる。
もし仮にこの技に制限が無ければアタッカー全員が『ちょうはつ』『みがわり』『まもる』を覚えて火力が無いポケモンは何もできないということになりかねない。
だが1体あたりのポケモンの技の数が4つ、さらにパーティ全体で6体というのはアマチュアならともかくプロトレーナーからすればあまりにも少なすぎる。
だがルールはルールだ。技は4つまで、それを無視すればルール違反での負け。
元よりポケモンの技とは明確に定義されているわけではないのだ。
『このタイプのエネルギーを使ってこれくらの威力でこんな風に起こる現象をこういう名前の技』として定義しているだけの曖昧なものだ。
高密度の『ほのお』タイプエネルギーを放射することができれば手から出そうが口から出そうがそれは『かえんほうしゃ』であると定義されるように。
『こうげき』と『とくこう』を上げながらHPを半分回復し、天候が『にほんばれ』状態の時効果がさらに高くなる効果を1度に発動できるならばそれはローザが名付けた『けだかいひかり』という名の技になるのだ。
さらにフィールドに浮かび上がる
その状態を『トラップレイ』と密かに呼んでいたとしてもそれはあくまで技としては『ソーラービーム』なのだ。
技一つの複数の技の効果を盛り込む。
だからこそ、今先達として教えてやらなければならない。
可愛い従弟だからこそ。
「『スカーレットストリーム』」
かつてイッシュの大会でこの技を披露した時、そう呼ばれたのを気に入っているのでそれからはこのコンボ技をそう呼んでいる。
「さあ、この真紅の奔流から抜け出す術はありますこと?」
フィールド全体を染め上げた紅を睨みつけるリンドウを見やり、そう告げた。
『けだかいひかり』はポケカから取りましたのでこれも公式ってことで(目そらし
あれ……ところで予定してたメガシャンデラ無双は???
ちょっとこの先のトップトレーナーたち相手のチュートリアルのつもりでこの先出てくる新システム出したら思ったより接戦に……?
手持ちポケモンの現在レベルとかあとがきに欲しい?
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いる
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いらない