・プロとアマの境界線
まだ疲労感の残る体だがそれ以上の興奮で体を動かす。
というのもタマムシジムに勝利し、レインボーバッジをゲットしたことにより、ボクもアカリもこれで4つ目のバッジを獲得したことになる。
ジムバッジというのは4つ目で折り返しとなり、5つ目からは難易度が跳ね上がったりするのだがそれはある種ここがプロとアマの境界線となるからだ。
ジム挑戦においてジムバッジの数において
ジムバッジ5つ目からはジムリーダー側も制限は全て無くなる。
正確にはジムリーダーの本気のパーティというわけではないが、或いは本来の手持ちも交えた制限の無い面子を揃えてくるのは事実だ。
ジムバッジを集めることは地方リーグへ挑戦するための……つまり地方最強のトレーナーの座を目指すための過程だ。
故に前半4つのジムで
制限をつけた状態のジムリーダーと戦い、その才能を、知識を、技術を、経験を試される。
そして見事に4つのバッジを獲得するとその時点で『セミプロ』クラスと認められる。
これは正式な称号だとかそういうわけではないのだが、プロトレーナーの間ではそういう通称で通っている。
というのも、バッジが4つ揃えることがプロになるための足切りだから、逆にいえば揃えた以上はプロトレーナーを目指すものとして十分な資質を持つと認められる。
ただし8つ揃えていない以上リーグ戦に参加することはできず、だからプロ未満ではあるが故に『セミプロ』。
そして先ほどから言っている通り、ここがアマとプロの境界線となる。
4つ未満はアマチュア。
4つ以上はプロ。
これで何が変わるのかと言えば
これは極端な話だが『はかいこうせん』の技マシンを10歳の子供が買おうとしてできるのか、という話になる。
ゲームだと何の問題も無く買えていたが、現実に考えて高威力の技マシンなど誰彼構わず販売などできるわけがない。
そもそも『ジムバッジ』を持たないトレーナーは技マシンの購入ができない。
技レコードは購入可能だが、それも一部限定的なもののみだ。
ジムバッジを1個以上獲得することで改めてプロ志望のトレーナーとして認識されるようになる。
たかが1個で? と実機プレイヤーなら思うかもしれないが、1個取るにしてもポケモンを育成する力、そしてポケモンを運用する知識が必要とされる。
ただ強いポケモンを振り回すだけで勝てるかもしれない、だがそもそも強いポケモンを振り回すのにもトレーナーとしての資質が求められる……そういうものだ。
それに強力な技というのはそれ相応にポケモン側にもスペックが要求される。
ゲームならタマゴから生まれたばかりのヒトカゲが『だいもんじ』を何の過不足も無く使いこなしているが、現実には『ひのこ』を発するところから始めて徐々に育てて『かえんほうしゃ』あたりが限界だ。
それはレベルというよりは根本的に種族の問題だ。
確かに覚えさせようとすれば覚えるがそれだけの強力な技を使うのにヒトカゲの体に相応の反動を与える。
『だいもんじ』ほどの大技を反動無く自在に放つことができるのはそれこそリザードンに進化してようやくだろう。
トレーナーとして経験を積むとそういう機微も理解できるし、ポケモンへの負担を考えた育成もできるようになる。
だが新人トレーナーがいきなりそんなことを考えるかといわれると残念ながら難しいと言わざるを得ず、故に最初からポケモンへの負担が大きい技の技マシンやレコードは新人トレーナーが簡単に入手することができないように購入が禁止されているのだ。
因みに購入禁止であって譲渡などそれ以外の手段で入手すること……つまり所持自体は別に禁止されていない。
例えばニビシティで行われていたタケシグランプリのような大会で技マシンを獲得するのは合法だ。
まああの大会もある程度ラインナップは抑えられていたというか新人トレーナーが入手しても問題ないレベルのものしか無かったが。
要するに大会で勝てるくらいの知識や経験があれば無茶な育成もしないだろうという判断なのだろう……一々禁止していると後発のトレーナーが育たないとかそういう理由もあるのかもしれない。
とにかく重要なのは『バッジ数が少ない間は購入できるものが限定される』ということであり、同時に『4個以上のバッジを所持していればそれらの制限が解除される』という事実だ。
買い物の時間をたっぷりとるために午前中にジム戦を終わらせたのだ、このままタマムシデパートに直行して午後からは楽しい楽しい買い物の時間である。
幸いにして大会の賞金で懐は温かい。持っていない技マシンも多いし、これで育成が捗るというものである。
「前に買えなかった技マシン全部買おう!」
「ん」
「……の前に」
「ん?」
ぐう、と鳴ったお腹を抑えてアカリへと向き直り。
「どっかでご飯食べても良いかな……お腹空いちゃったよ」
いつもながらの無表情に、どこかジトっとした視線を感じてしまった。
* * *
・人とポケモンの距離感
タマムシデパートはタマムシ最大の商業施設であるが、そもそもタマムシシティはカントー随一の商業圏だ。
故にタマムシデパート以外にも多種多様なお店があちこちに点在しており、道を歩いていると必ずどこかにお店が目に入って来る。
空腹に負けてふらりと立ち寄ったのは洋食系のレストランだった。
昼にはまだやや早い時間帯だけあってか、或いは単純にあまり流行っていないのかは分からないが空席が目立つ店内をウェイトレスに案内されてソファー席に座る。
メニューから軽食を注文しながらアカリと昼から何を買うかを話しているとふとアカリの視線が窓の外へと向いていることに気づく。
「どうしたの?」
「……ん、あれ」
アカリの視線を追うように窓の外を見ると店の窓ガラスに張り付くようにこちらを見つめるポケモンの姿。
愛嬌のある丸い顔に突き出るようにとんがった両耳、何より見覚えのあるフォルムに
ダラダラとその口から流れ出るヨダレからこちらを見る視線の理由があまりにも簡単に察することができて……。
「『ひかるおまもり』大活躍では?」
「なんの話?」
スマホのアクセにつけているお守りを一瞬ちらりと見やりながら再び窓の外を見る。
「また珍しいポケモンが出たね」
「そう、なの?」
アカリの疑問にスマホの図鑑アプリを開いて差し出す。
そこに表示されたずんぐりとした姿のポケモンと窓の外にいるポケモンを二度、三度と見比べた。
「ゴンベってポケモンだよ。カビゴンの進化前って言ったら分かる?」
「ん」
カビゴンはさすがに知っていたらしい。
まあ時々テレビに映ったりするのだがとにかくインパクトが強いポケモンだし、なにより巨大カビゴンドールは子供の憧れの品だ。
ポケモンバトルに場においても目覚ましい活躍を見せる強力なポケモンでもあるのでそちらの方面で知っていた可能性もあるが。
そのカビゴンの進化前がゴンベ。
分類は『おおぐい』ポケモン。
基本的にこの世界でも色違い個体ってかなり珍しいはずなのだが……。
この数日で2匹目の色違いと出会うとかこのお守りのご利益は相当なもののようだった、ゲーム時代に欲しかったねこれ。
「でもこんな街中にいるなんて珍しいね」
「でも、野生……だよ?」
「だから余計に、ね」
図鑑で調べてみても『おや』の名前が登録されていないのでどうやら野生のポケモンらしい。
そうこうしている間にウェイトレスが注文した料理を運んできて……それから窓の外のゴンベに気づく。
「また来てるの? 困ったわね」
「まだ? 今日が初めてじゃないんですか?」
「そうなのよ、前にあんまりにもお腹空かしてるみたいだったから見かねて料理を出してあげたら何度も来るようになっちゃって困ってるのよ」
あー可哀相だからって餌付けしたら餌場だと勘違いされて居着いてしまった感じか。前世でもよくあった話ではある。
と、困った様子で呟くウェイトレスがボクたちを……その腰のホルスターに下げたボールを見やり。
「アナタたちトレーナーならあの子をどうにかしてくれないかしら?」
そんなウェイトレスの頼みにどうしたものかとアカリに視線を向けるとアカリが荷物から空のボールを取り出していた。
「アカリ、どうするの?」
「ゲットしたい」
そのまま席を立って店の外へ。
窓から様子を伺うが、いきなりバトルするようなことも無くゴンベへ声をかけてまずは普通に勧誘している。
まあ街中でいきなりバトルするのも常識的に考えてどうなのだろうという部分はあるのでこれは真っ当な対応だろう。
バッグから『きのみ』を出しての勧誘だったがゴンベが嫌々と首を振って窓越しにこちらを……というかテーブルに置かれた美味しそうな料理を指差している。
それからしばらくアカリとゴンベのやり取りが行われたようだが窓の外のことなので何を話しているかまでは分からない。
ただ最終的にゴンベが頷いてアカリの持つボールの中に入ったので交渉は成立したらしい。
やがてアカリが戻って来る。後ろからは捕まえたばかりのゴンベがとてとてと歩いてついてきていた。
「ん、ゲットできた」
「おめでと。なんか随分と長く話し込んでたね」
「……お腹空いてた、みたいだけど、美味しいものが、食べたいって」
「ゴンベが言ってたの?」
ん、と頷くアカリ。
ピカチュウ通訳便利だなあっと思いつつ、もしかして今ならボクもシャンデラ越しに通訳してもらえるんだろうか? と気づく。
「それにしても珍しいね、図鑑説明だとゴンベってとにかく量を食べるけど味には執着しないって話だったのに」
「ん……グルメなゴンベ、だったのかも?」
「そういうこともあるのかな?」
現実だとこういう個体差があるから面白い。
ゲームだと能力的なバラつきはともかく、キャラクター性なんて種族が同じなら全部同じになるのだから。
データ状の存在に個性なんて無いのだから仕方ないのかもしれないが……。
そうこうしている内に席に座ったゴンベがテーブルの上の料理に手を伸ばし始める。
「美味しそうに食べるね」
「ん」
「見ている分には気持ちいい食べっぷりね」
カビゴン系の種族ってなんでも丸のみにしてしまうようなイメージがあるが、目の前のゴンベはそういうわけではなくちゃんと一皿ずつ味わって堪能しながら食べているのが伺える。
ただまあやはりカビゴン系の種族というか次々と減っていく卓上の料理を見るにまるで足りる気はしないので追加で注文する。
「これ見るかぎりだとゴンベの食べる量でグルメって大変じゃない?」
「それなら安くて美味しくて量も食べられる良いレシピ教えてあげるわ!」
ぽん、と手を叩いてウェイトレスが一度店の奥へと去っていくと、再度戻ってきてボクたちにレシピの書かれたメモをくれる。
見たかぎりではよくある食材が書かれているし、調理法もそれほど難しくはなさそうで、これならボクたちでも作れそうだった。
「良いんですか?」
「ええ、最初にご飯あげちゃったのは私だしね。それとこれは解決してくれたお礼ね」
そう言ってウェイトレスがくれたのは直近で開催される『シルフトーナメント』*1の観戦チケット2人分だった。しかも結構良い席のやつだ。
「え、これ高いんじゃ」
「良いの良いの、友達と行く予定だったんだけど、急に用事だのなんだので行けなくなっちゃったし、払い戻しするにもかなり手間がかかるしね。良かったらもらってちょうだい」
確か結構良いお値段したはずなので少しばかり逡巡もするがそう言うならばと頷いて受け取り、1枚をアカリに渡す。
ポケモンバトルの大会とあってアカリも興味があるのけ手の中のチケットに視線が釘付けだ。
「それじゃあ、ありがとうね。ごゆっくり」
そう告げて去っていくウェイトレスの姿を見送りながらチケットをしまう。
元より次はヤマブキシティに行く予定だったのだが、思わぬ楽しみが増えた。
「目についたから入ったお店だったけど、なんか思いがけず色々あったね」
「ん……ラッキー」
「そうだね。アカリはこれで4体目か」
そろそろアカリの手持ち枠も限界が見えてきている。
これ以上ゲット数を増やすながら
だがバッジ5個目からはジムリーダー側も制限無しに本気でバトルしてくるので今までのような育成途中のポケモンで、とはいかないのが難しいところだ。
カントーにおけるポケモンリーグの開催まではまだ半年近くあるので出場したいのならばそろそろ計画的に動く必要があるかもしれない。
「……まあそれは追々、だね」
ぐうと鳴って主張をするお腹へと視線を落とし、全部後回しにするかと苦笑してテーブルに並んだ料理に手を伸ばした。
・アカリの手持ち
種族:ピカチュウ(相棒)♂ Lv78
特性:せいでんき(接触技を出した時、または受けた時に相手を確率で『まひ』状態にする)
補足:最強。相棒技使える。ピカブイ冒頭の6Ⅴ個体疑惑。
種族:リザードン♂ Lv38
特性:もうか
補足:トレーナーになって旅に立つ前にオーキド博士にもらったポケモン。
種族:サイホーン♂ Lv36
特性:いしあたま
補足:トレーナーに捨てられた。オヤブン個体。オツキミヤマでゲットした。
種族:ゴンベ♂ Lv25
特性:????
補足:色違い。野生のポケモンなのに妙にグルメ。
手持ちポケモンの現在レベルとかあとがきに欲しい?
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いる
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いらない