さてはオリ主だなオメー???   作:水代

5 / 32
ゲームでは描写されないものは割と多い

・主人公の隣にいるんだからお前がイベントに巻き込まれるのは必然

 

 

 はっと我に返るとすでにキャンプが始まっていてアカリと手を繋ぎながら歩いていた。

 何を言っているのか分からないと思うがボクも何が起こったのか分からない、催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。

 で、なんでこんな状況に? と思ってアカリに聞いてみると、あの後オーキド博士がやってきてさあキャンプに出発だ、となってもまだ呆然としていたので手を引いてくれていたらしい。

 感謝しながら先導役のオーキド博士と共に先を行く3人へと視線を向ける。

 

 ヒマワリと名乗った少女は色の濃い金髪が特徴だった。

 金というより黄に近いような長い髪を後ろでまとめたポニーテールの少女。

 初夏ながら田舎のマサラタウンでは早朝は比較的気温が上がらず涼しさも感じるため最初に会った時には被っていた麦わら帽子を片手に持っていた。

 髪の長さで女の子らしい印象を受けるが、あの髪をまとめて帽子を被って隠してしまえばなるほど、確かにぱっと見て少年に見えるかもしれない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 ―――いや、ポケスペのイエローじゃん?!

 

 最初に見た瞬間のボクのこの衝撃をどう言い表せば良いのか。

 漫画と現実の人間ではやはり別物なのだが、それでも確かに漫画で見た時の印象がぴったりとあてはまってしまうが故に無意識が同一視してしまっていた。

 服装とかに多少の違いはあるのだが、それでもやはり全体的な印象が合致し過ぎる。

 

 シゲルと名乗った少年はもうそのまんまである。

 

 同時に思うのはこの世界ってどういう世界なのか、だ。

 一言にポケモンの世界と言ってもポケモン自体が寿命の長い作品であり、いくつもの派生作品が存在する。

 

 『ゲームとしてのポケモン世界』『漫画としてのポケモン世界』『アニメとしてのポケモン世界』

 

 これらは全て地理や出てくるポケモンなどが同じなだけで登場人物やら歴史やらが全く異なっており、ボクはこの世界を『ポケモンの世界』と判断したが、どの作品をベースにした世界なのかというのは知らない。

 というか無意識に原作ゲーム……或いはアニメあたりかと思っていたのだが、イエローというキャラクターは『ポケットモンスタースペシャル』という漫画にしか出てこないキャラでありこのポケスペという作品の世界観がわりとぶっとんでいて原作世界観をぶち壊してくるせいで、この判別を間違えるとかなり問題になりそうなのが怖い。

 

 そしてシゲルというのは初代のライバルの名前の選択肢の1つであり、同時にアニメの初代ライバルの名前でもある。

 前を行くオーキド博士との会話を聞くかぎりだとやはり設定通りというか、オーキド博士の孫らしく先ほどから博士を『爺さん』呼びしている。

 こちらに関してはもまた混乱の種であり、そもそも去年調べた時にこの街出身のトレーナーで『グリーン』という名の人物が2年前……今だと3年前に旅だった、というのが分かっていたのだが、この『グリーン』というのが原作ライバルの名前であり、ボクはてっきり『グリーン』がオーキド博士の孫なのだと思っていた。

 

 だがオーキド博士の孫の『シゲル』が存在するのならば、じゃあ『グリーン』って誰なんだよ? という疑問が出てくる。

 

 さらにトドメを刺してくるのがフタバである。

 

 フタバは外見的には黒に近い茶髪のロングヘアの普通の女の子だ。特徴と言えばモンスターボール柄みたいな帽子と肩掛けのバッグ。

 将来的にゲームでいうところの『ミニスカート』とかそんな感じになりそうな子。

 でももうこの流れなら分かると思うが。

 

 この子どう見ても『リーフ』である。

 

 『リーフ』は原作ゲームの一つにして初代のリメイク作品『ファイアレッド・リーフグリーン』の『女主人公』でありそのデフォルトネームの1つだ。

 つまりこの子はゲームのほうの原作キャラクターということになる。

 

 ポケスペ出身のイエロー。

 アニポケ出身のシゲル。

 ゲーム出身のリーフ。

 

 見事なまでに別々の作品のそれでも『公式キャラ』が揃っている。

 こんなの朝まで呑気に今日からキャンプだーと浮かれていた頭に叩き込まれたら、情報が処理しきれずにフリーズしてしまっても仕方ないと思う。

 いや、にしてもなんでこうも見事に同じグループに集まってるんだろう?

 

 疑問に思いつつ隣を見やり、不思議そうに首を傾げるアカリを見て大きく息を吐く。

 まあいいや、別に原作のキャラクターが現実にいたからってどうという話でも無いし、今はこのキャンプを楽しもう。

 思考を切り替えながらアカリの手を引き、目的地に着いたのか立ち止まっている4人の元へと急いだ。

 

 

 * * *

 

 

 ゲームにおいてポケモンの生息地はポケモン図鑑の『分布』で表記されるわけだが、つまりある種のポケモンがどのあたりに生息しているのか、というのはある程度分かっていてその上でそれが公表されているわけだ。

 だが現実においてこの『分布』というのは『一般の人が踏み入ることのできる場所にいるポケモンの生息図』というのが正しい。

 

 実際マサラタウンからトキワシティまでの道にはコラッタやポッポなどのゲーム序盤でよく見かけるポケモンしか『分布』に表記されていないが、未進化ポケモンがいるならその進化系も当然いるわけで、そういうのはだいたい人が整備した道路から外れた野生環境の奥地のほうにいる。

 奥地のほうは野生のポケモンの領域故に一般の人が立ち入ることは無いいわゆる『未開発地域』という扱いになり、その辺りに生息するポケモンは『分布』には記されない。

 

 これと同じようなことが各地にあって、実際のところ『分布』で表記されているのは『人が踏み入って調査が終わった場所』に過ぎないのだ。

 

 なのでゲームだと最初の街でしかないマサラタウンの周辺を歩いてみてもゲームだといなかったのに、みたいなポケモンは多い。

 キャタピーやビードルなどという森や山ならどこにでもいそうなのからタマタマなどのちょっと分布が限られているポケモン、はたまたニドランなどのポケモンもいるし、場所を変えればディグダやイワーク、サイホーンなども見ることができた。

 

 また森のかなり奥地のほうのため子供同伴の今回は見せることはできないが、場所によってはガルーラやラッキーのような非常に珍しいポケモンもいるらしい。

 

 ガルーラ……おやこあい……う、頭が。

 

 という当時のトラウマは置いておき、マサラタウン周辺だけでも実に多様なポケモンが生息していることが分かる。

 まあこのあたりの森は基本的に大人から立ち入り禁止にされている場所のため、普段は近づくことも無いのだが。

 

 ―――へへーん、オレはこのあたり探索したことがあるけどな。

 

 と鼻にかけた様子で胸を張るシゲルだが、オーキド博士が頭が痛そうに手で抑えていた。

 どうやら普段からフィールドワークと称して入ってはいけないと言われている場所に出入りしているらしい。

 子供が1人で危ないようにも思えたが。

 

 ―――ま、おれさまにはコイツがいるからな。

 

 とボール片手に自慢気だった。

 どうやらシゲルもポケモンを持っているらしい。

 ボクたちも持っていることを言えば、自分だけ特別だと思っていたらしいシゲルがちょっと不機嫌になるが、隣でイエローがあははと苦笑して。

 

 ―――実はボクも持ってまして。

 

 とボールを片手に見せてくる。

 それに呼応するようにフタバもまた肩掛けのバッグからボールを取り出し。

 

 ―――あ、私も持ってるよ。

 

 なんて軽く言うもんだから、シゲルがちぇっ、と拗ねた。

 というか何気に全員ポケモン持っているのか、という事実に驚く。

 以前も言ったが基本的に10歳になるまで子供にポケモンを持たさないようなマナー的なものがあるのでポケモンを持っている子供というのは案外少ないのだ。

 そこからはポケモンを持っているという共通の話題ができたからか、ヒマワリやフタバとちょこちょこと話すようになった。

 

 ヒマワリは最初に言っていたとおりトキワシティに住んでいるらしく、今回のキャンプのために忙しい両親に変わって叔父さんが連れて来てくれたらしい。

 趣味は絵を描くことと釣りで、今回のキャンプにも釣り竿を持ち込もうと思ったのだがさすがに荷物になり過ぎるのでダメだったのだとか。

 

 フタバは同じマサラタウンの子供だが、ボクたちとは別の地区に住んでいるため学校で出会うことは無かったようだ。

 フタバの両親はポケモントレーナーらしく、その子供のフタバもまた自然とポケモントレーナーになりたいと思っているらしく、10歳になったら旅に出るのだとか。

 ボクたちも旅に出る予定なので旅の途中で会うこともあるかもしれない、とも思ったのだがどうもフタバのほうが1歳年上らしく、そうなると1年早く旅に出ることになるので旅の道中で出会う可能性はあまり無いかもしれない。

 

 とそんなことを話しているとシゲルが輪から外れて寂しかったのかやってきたのでシゲルとも歩きながら話していたのだが、シゲルはやはりオーキド博士の孫らしく、10歳になったらポケモンを集めながら旅をしてチャンピオンになるのだ、と声高に宣言していた。

 ただオーキド博士の孫ということは多分同じ地区に住んでいると思うのだが、その割に見かけたことが無いなと思っていたのだが、どうやらシゲルもまたフタバと同じく1歳年上らしい。

 どうりで学校でも見ないと思った。クラス違いくらいならともかく違う学年ともなると会う可能性はぐっと下がる。

 そしていると思わなければ多分気づかないだろうから、今まで知らなかったのはそういう理由だろう。

 

 そうしてシゲルとも会話しながらしばらく歩いていると太陽がすっかり真上に昇るような時間になる。

 

 オーキド博士がキャンプ場に昼食が用意されているから向かおう、とのことで一度森から出て、キャンプ場へと向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

・若さってなんだ? 振り向かないことさ!

 

 

 キャンプ場はオーキド研究所の敷地内にあった。まあさすがに野生のポケモンがいつ出てくるか分からない場所で預かった子供たちを寝かせられないということなのだろう。

 舗装された道を歩き、キャンプ場に近づくにつれて香ってくるスパイシーな良い匂いに昼食がカレーであることを全員が察する。

 たどり着いたキャンプ場にはすでにテントが張られていて、いつでも利用できそうだった。

 

 研究所の大人たちによって用意されたご飯とカレーが配膳され、みんなで食べ始めてしばらくした頃にオーキド博士が全員に少し耳を傾けるようにと告げる。

 オーキド博士の説明によると昼食を食べたら今度は水辺のポケモンを見学しに行くらしい。

 事前に決められたルートを巡って夕方になったらオーキド研究所に行き、夕食とお風呂に入ってこのキャンプ場に戻って夜に就寝という流れらしい。

 

 夜に時間を持て余しそうな気がするが、まああまり暗くなるまで子供を連れ歩くのも不味いだろうし、そんなものかと納得。

 

 それより問題なのはテントが1人1張らしいということにアカリが不満そうなことか。

 もしかしてキミ、一緒に寝ようとしてた???

 さすがにそれは不味いだろうが、この子がそういう男女の機微を理解してくれるとも思えないので後で言い含めないとな、と嘆息した。

 

 昼食を終えて一休みしたところでオーキド博士の先導の元再び歩きだす。

 

 マサラタウンの周辺は自然に満ち溢れており、ゲームには無かった川や森などがあちこちにある。

 そうした川辺を歩いてみれば『みず』タイプのポケモンがあちこち楽しそうに泳いでいるのを見ることができた。

 コイキングなどはどこでも見かけることのできる種だが、トサキントやニョロモは『分布』が限られているので、こうして人の手の入らない川辺などに行かなければ案外見る機会は少ない。

 因みにヒトデマンなどはモチーフからして海辺にしかいないポケモンなのだが、何故かメノクラゲ系統は川にもいる。

 

 そうしてしばらく歩いて思うのは、野生ポケモンが多く住む自然の中ではあるがどのポケモンものんびりとした様子で過ごしており、とても長閑(のどか)な光景が広がっていること。

 恐らく獰猛なポケモンの生息域に近づかないように事前にルートを決めているのだろうとは思うのだが、ゲームなどで野生のポケモンの領域を歩いているとポケモンが襲い掛かって来るイメージが強いので、現実とのギャップに少しだけ不思議な気分になった。

 

 まあ先も言ったが恐らく決められた巡行ルートから外れればボクの想像するような野生の領域となってしまうのだろう。

 そういう意味で事前に調査し、安全なルートを設定してくれたオーキド博士たち研究所の人たちに感謝だ。

 

 とはいえ朝から歩きっぱなしなのでさすがに疲れてくる。巡行ルートも全部が全部舗装された道というわけではない、寧ろ森などの足場の悪いところのほうが多いので歩きづらく、足の裏が痛くなってくる。

 旅に出る時は基本歩きになるのだからそうなるとこの辺りの対策も必要か、と考えふとアカリは大丈夫かなと視線をやれば多少疲れた様子ではあったが表情は相変わらず無表情なのでまだ大丈夫なのだろう。

 ただアカリ以外の……特に女の子2人はさすがにしんどそうな表情をしていた。

 

 先導役のオーキド博士もその辺りを理解していたのだろう、この辺りで休憩でもするか、と言ってみんなを木陰に連れて行きレジャーシートを広げた。

 それからおやつに持ってきたらしいお菓子の類を広げ、水筒に入ったお茶を紙コップに注ぐとみんなで分けて食べるのじゃぞ、と言っては配膳した。

 広げられたお菓子に自分も食べたいと言わんばかりにアカリの持っていたモンスターボールが揺れ動て主張してくるが、アカリがダメ、と一言告げると動かなくなってしまう。

 可哀相ではあるがルールはルールなので、代わりにオーキド博士に少し包んで夜に手持ちの子に食べさせてもいいか許可をもらうと、他の子たちも同じことを思ったのか結局半分以上は持ち帰りとなってしまった。

 

 そうして一息入れれば子供らしくあっという間に体力も戻って来たので夕方までさらにぶらりぶらりと森の中や川辺を見て回り、そうして夕日が差してくるくらいの時間帯にオーキド研究所へと戻った。

 

 今日一日でどれだけ歩いたのだろうか。

 子供の足だから案外たいした距離でも無いのかもしれないが、丸一日歩いていたのでそれでも結構な距離を歩いた気がする。

 お陰で足が重い。それでも明日には回復しているのが若さというものなのだろう。

 

 一先ずお風呂に入ってさっぱりしてから夕飯にしよう、とのことでお風呂に入ったらロビーに集合と告げてオーキド博士が去っていく。

 入れ替わるように研究員の人が案内するよ、とやってくる。どうやら研究所には男女別にシャワールームがあるらしく、今日はシャワーでお風呂は済ませるらしい。

 そうして更衣室に入るとシゲルに驚かれた。何で驚いているのかと思えばボクのこと女だと思っていたらしい。

 女みたいな恰好してんじゃねえよ、と毒づかれたが今日の服装はキャンプということで半そでパーカーにオーバーオール、あとは日差し対策に帽子と土埃対策に伊達眼鏡くらいでそこまでお洒落しているわけでも無いと思うのだが。

 

 シャワールームに入ると妙にこちらを見ようとしないシゲルに首を傾げながらも熱いシャワーを浴びながら軽く伸びをし、ゆっくりと体を解していく。

 これ明日筋肉痛じゃないかなあ、と嘆息しながら今日一日外を散策していたせいかあちこちと土で汚れてしまっている体を念入りに洗い、髪の手入れまでしっかり済ませてから上がるとすでにシゲルは服まで着替えて更衣室から出てしまっていた。

 

 遅くなったかな、と思いながらも特に集合時間も決まってなく、ゆっくり入っておいでとだけ言われていた状態だったのでまあ大丈夫だろうと新しい服に着がえて古いほうの服を荷物にまとめるとロビーへと戻る。

 みんなを待たせてしまったかと思ったが、どうやらシゲルとアカリ以外まだ戻っていないらしい。

 お待たせ、と声をかけながらロビーに戻るとシゲルが遅えよ、と不機嫌そうに呟いた。

 

 そんなシゲルとじっと見つめていたアカリだったが、その髪が湿っぽいのに気づく。

 アカリの元へと向かい、ちょっと失礼とその頭に手を伸ばして髪に触れてみればしっかりと乾かされていないし手入れも雑だ。

 嘆息しながらアカリをロビーのソファーに座らせると荷物からタオルを出してしっかりと水気を拭き、その後携帯用の小型ドライヤーと櫛を出して髪を梳きながらドライヤーで髪を乾かす。

 本当なら保湿クリームも使いたいのだがさすがに今やると手がべたつくのでまた後にすることにして、アカリにちゃんとコンディショナーやトリートメントを使ったのか問い詰めればそっと目を逸らされたので使ってないと思われた。

 

 この調子ではスキンケア用のあれやこれやも全部やってないな、と嘆息しているとそれを見ていたシゲルが女子かよ、と呟くがアカリはまごうこと無き女の子である。まだ若いからと油断していると将来的に苦労するのは分かりきっているのだから今の内からしっかりと仕込まねばと使命感に燃えているとお風呂を終えたらしい残り2人の声が聞こえてきた。

 

 どうやらこれで揃ったようだ、と一先ずアカリにあとでね、と告げると相も変わらず表情は変わらないが面倒そうな雰囲気を見せた。

 

 

 * * *

 

 

「リンドウ、何やってるの?」

 

 夜、夕食を終えて人心地つくとみんなで宿泊場所のキャンプ場へと向かう。

 キャンプ場は昼間の使った場所だが、テントが5つ並べられていて、その手前に大きな木製の机とデッキチェアが置かれており、寝る前に団欒ができるようになっていた。

 

 そうしてデッキチェアの一つを借りてボールからヒトモシを出すと、その口元に指先を出す。

 するとヒトモシが小さな口を開けてその指先を咥えて、もごもごと口を動かす。

 傍から見ると良く分からない光景にフタバが首を傾げて問う。

 

「ご飯、かなあ」

「ポケモンフーズならさっき食べたよね?」

 

 当たり前だがボクたちの昼食時にも、夕食時にも手持ちのポケモンたちも一緒にご飯を食べている。

 なのでお腹が空いた、というわけではないのだが……。

 

「うーん説明が難しいんだけど、ポケモンフーズは生きるために必要な食べ物で、これは成長するのに必要なもの、かな?」

 

 実際ボク自身これがどれくらいの意味を持っているのかなんて分からない、がやらないとヒトモシが欲しがるのだから多分必要なのだと思う。

 ヒトモシがボクの指を咥えて何をやっているのかといえば、ボクの生命力の吸収だ。

 これに関しては捕まえた次の日から定期的にやっていることであり、確かに図鑑説明でも『生命力を吸い取る』と書いてある。

 母さんに聞いてみたが『ゴースト』タイプのポケモンにはそういう手合いが多いらしく、しっかり育てたいなら怠らないほうが良いらしい。

 

 世の『ゴースト』使いってみんなこんなことやってるの? って思ったんだけど、普通のポケモンバトルで相手を倒すことでその生命力の一部を吸収して補うのが普通らしく、トレーナーの生命力を与えるなんて普通はやらないとのこと。

 なので野生のポケモンとバトルしたりもしたのだが、どうもヒトモシはボクのが良いらしい。

 おっかないえり好みではあるが、幸い加減はしてくれているのでまあ良いか、と流してしまっているのが現状だった。

 

 ただし生命力を吸われると倦怠感などがある。感覚的には血を抜かれて貧血になるような感じだろうか?

 なので寝る前限定、さらに一度吸ったら日にちを置く、なおかつその日はしっかりと食べるようにしている。

 生命力と言っても別に寿命を吸われているわけではない。

 ものすごく分かりやすく言うと、みんなオラに元気をわけてくれ、みたいなものだ。

 

「ただ最近キミ頻度が多くない?」

「もしもし~♪」

 

 咥えられた指でヒトモシを突いてみれば美味しそうに笑みを浮かべているヒトモシ。

 以前までなら1週間に1回くらいで良かったのに、最近は3,4日に1回くらいになっている。

 そのせいで最近全体的に食べる量が増えた気がするのだが、その分ヒトモシに絞られているせいかあんまり身についたような感じは無い。

 頻度が上がったのはヒトモシが味を占めたからか……もしくは。

 

「まあ……良いけどね」

 

 普段からアカリとピカチュウ相手に激しいバトルを繰り広げてくれているのだ。

 その労い、報酬と考えれば……相手の実力からすれば安いものだろう。

 

「リンドウとヒトモシは仲良しなんだね」

「うん? うーん、ふふふ……そうかもね」

「もし~♪」

 

 出会いこそ奇抜なものだったと自覚するが、その後の関係は基本的に良好だと自負している。

 というか理由は分からないが捕まえる前からなつき度最大みたいな態度だったのでヒトモシに困らされたことというのはあまり無い。

 まあ『ゴースト』タイプは基本的に育てる上で癖ツヨなので親が元トレーナーのボクみたいな家庭じゃないと少し難易度は高かったかもしれないが。

 

「最初は戸惑ったけど、なんだかんだ1年近く一緒にいるしね。もうなんとなく何が言いたいのか分かるようになったよ」

「いいなあ、私もピーちゃんともっと仲良くなりたいな」

「ピ? ……ピィ!」

 

 フタバの腕の中でゆらゆらと眠気に負けて船を漕いでいたピィだったが、フタバに呼ばれたのかな、と目を覚まして笑みを見せる。

 もう十分懐いているように見えるけどなあ。と思わなくも無いがフタバとしてはもっと仲良くなりたいようだった。

 それから賑やかな声に誘われて視線を向ければ向こうでアカリのピカチュウとヒマワリのピカチュウが仲良く駆け回っていた。

 そんな両者の様子を少し離れたところでヒマワリがニコニコと見守っているがアカリの姿は無い。

 

「アカリ、もう寝ちゃったのか」

「そうみたい。さすがに今日は疲れちゃったし、私ももう眠いや」

「いやアカリめ……逃げたなあ? ちゃんと髪の手入れのやり方とかスキンケアとかもう一回叩きこむつもりだったのに」

「うーん、女の子としては共感できなくも無いけど、なんで男の子のリンドウのほうが私よりそういうのに詳しいのかちょっと複雑……」

 

 ボクのボヤキにフタバが苦笑する。

 それから少しの間互いが使っている美容品について語り合ったりしながらヒトモシが満足するまで時間を潰していればなんだかんだで良い時間になったので就寝することにする。

 ふと1人見かけないな、と思ってフタバに聞いてみるが知らないらしい。

 

「シゲルももう寝ちゃったのかな?」

 

 夕飯後に各自の好きなタイミングでここにやってきているので真っ先に出て行ったシゲルの姿はそれ以降見かけていない。

 シゲルが出て行ってからボクがここに来るのに多分30分も差は無いと思うのだが、ボクが来た時にはすでにいなかった。

 まだ寝るには早い時間だからどこか行ってるのかな、とも思ったがこんな時間まで戻ってきていないというのならもう寝てしまっているのだろう。

 そうしてフタバがテントに入っていくのを見送りながらボクもまた自分のテントへと向かう。

 遊んでいたピカチュウたちもヒマワリがもう寝るとのことでそれぞれの元へと戻っていき、誰も居なくなったキャンプ場に静寂が戻ったことに僅かに寂寥感を感じながらもテントに入り、用意されていた寝袋に包まる。

 

「じゃ、おやすみ、ヒトモシ」

「もし~」

 

 傍で眠るヒトモシに声をかけてから目を瞑ると、一日分の疲れにヒトモシに元気を取られた影響からか、途端に眠気が襲ってきてあっという間に眠りについた。

 

 

 * * *

 

 

・原作キャラが3人……来るぞ!

 

 

 明けて翌日のこと。

 

 ―――どうしてこうなった、と言わざるを得ない。

 

「オレに指図すんじゃねえ! 女男が!」

「っと」

 

 ぱしん、とシゲルの肩を掴んだボクの手を振り払うように叩き、感情的になって侮蔑的物言いをするシゲル。

 思い切り叩かれたせいで痛む手に僅かに顔を歪めながら、どうしたものかと内心で嘆息する。

 別に侮蔑されることは仕方ない。それがおかしいと自分でも自覚してやっているのだから。

 

 ただ、そのことでボクよりも遥かに怒っている子がいたのは予想していなかった。

 

「…………」

「ああ? なんだお前!」

 

 いつもの無表情とは違う、明確に怒りの感情をにじませた表情のアカリが一歩ボクの前に出て睨むようにシゲルをじっと見つめる。

 何やってんのアカリ!? そんな言葉をボクが口にするより早く、シゲルが怒りに表情を歪ませ叫ぶ。

 

「やんのか! 昨日マグレで勝ったからって調子に乗んじゃねえぞ!」

「…………」

 

 無言の圧で応えるアカリに沸点を超えて感情のままに怒鳴るシゲルがモンスターボールを片手に取ると、アカリもまた同じようにボールを手にする。

 

「良いぜ! どっちが上か教えてやるよ!」

「…………」

 

 シゲルが鼻で笑いながら、アカリが視線をさらにきつくしながら。

 互いがボールを投げる。

 

 本当に……どうしてこうなるんだ。

 

 こういう時に限って居なくなってしまった……いや、居なくなってしまったからこうなってしまったのか……オーキド博士のことを恨めしく思いながら、目まぐるしく動く事態に深く息を吐いた。

 

 




夏で熱いし半袖着ていこうかな?→半袖パーカー
森を歩くだろうし長ズボンが良いよね→オーバーオール
日差し対策もしないと→帽子
あと砂埃で目がやられないようにね→眼鏡

リンくんちゃん「対策ばっかであんまりおシャレする余裕無いかな?」

の結果シゲルの性癖は歪むのは仕方ないこと、リンくんちゃんと同じクラスの男子たちと同じコラテラルダメージなのだ。



【挿絵表示】



この子が同じ男子ってことで距離感近く気安く接してくるわけですよ。
他の男子からするとアカリちゃんのこと言えないくらいお前も距離感ガバいよって話。
でもリンくんちゃんからするとそれってクラスに馴染むための人付き合いみたいなものなので本人的には別に特別ってわけでも無いという……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。