さてはオリ主だなオメー???   作:水代

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なんだその怪しい組織は……。

・トキワの街へレッツゴー!

 

 

 ゲーム時代だとマサラタウンからトキワシティまで道路を歩いてすぐの距離だったわけだが、マサラタウン自体がゲーム時代より1000倍以上規模が大きいのもあってマサラタウンからトキワシティまでの距離も随分と遠くなっていて、子供の足では半日かけてたどり着けるかどうかというところ。

 まあ隣街がそんなに遠いのは大変なことであり、当然ながら前世と同等の文明レベルを持つこの世界では交通事情がしっかりと整備されており、大半の子供は親と車で向かうか、或いはマサラタウンからトキワシティへ向かうバスがあるのでそれに乗っていく。

 

 トキワシティはゲームだと森の囲まれたひなびた田舎街だったが現実にはカントーでも5本の指に入るほどの大規模都市だ。

 カントーでもまだ数が少ないトレーナーズスクールの1つがある街であり、同時にカントー有数の大企業ロケットコンツェルンの本社がある場所としても有名だ。

 あとこれはある程度以上大きな街ならどこも同じなのだがジャス〇とかダイ〇ーとかいう名前の大型ショッピングセンターがある。転生者先輩たちハッスルし過ぎである。

 それから一般人にはあまり関係無いが、ボクたちに関係あることといえば『トキワジム』があることだろうか。

 

 まあまだ8歳のボクたちには早い話だから置いておくとして。

 

 前振りで分かっているかもしれないが、今日はバスに乗ってトキワシティへとやってきていた。

 というのもあのポケモンキャンプで出会った自分以外の転生者であるヒマワリのところへと遊びに行くためだ。

 時間を見つけて遊びに行くみたいな約束はしていたのだが、やはりトキワシティまで行こうとすると中々に時間がかかるためお互いの時間を擦り合わせている間に気づけば一か月近く経っていたがそれでもようやく互いの都合がついたので早速今日やってくることにした。

 

 当然のようにアカリもついてきているが、まあこの子はいつものことなので気にしないとして。

 

 バスに揺られて1時間。

 ようやくたどり着いた先は大都会だった。

 隣のアカリが見たことも無いほどの人の数に目を回してしまうほどの大群衆。

 それが街のあちこちで忙しなく歩き回っていて、なんというか空気が違っているように感じた。

 ボク自身覚えてはいないが、けれど前世で知っているような気がする馴染んだ空気だが対称的にマサラタウンとは真逆の雰囲気にアカリは気圧されたようにボクの服の袖を掴んで背に隠れていた。

 何となく急かされるような街の空気にどことなく居心地の悪さを感じる田舎者丸出しなボクたちだったが、ヒマワリから教えられた目印を頼りにようやく彼女の家にたどり着く。

 

 どことなくこじんまりとした印象を受けるヒマワリの家だが、多分それは敷地が狭いからだろうと気づく。

 マサラタウンのように土地の余った田舎ならともかくトキワシティのような都会では家と家の間隔が非常に狭い。

 何だったら家に窓から隣の家の窓まで届きそうだった。

 民家の密集したまさに住宅地といったマサラタウンではまず見ないような地域にヒマワリの家はあった。

 

 玄関口でインターフォンを鳴らせばすぐにヒマワリが家から出て、ボクたちを見て破顔した。

 

 ヒマワリに誘われるままに家の中に入ると、まあ取り立てて何か言う事も無い普通の一般家庭だった。

 強いて言うならばピカチュウをゲットしているからか、アカリの家と同じように家電やコンセントなどに絶縁加工がしてあることだろうか。

 でもまあそれくらいならば正直この世界だと普通のことなので、本当に言う事も無い普通の家だった。

 

 ただ1つを除いて。

 

 ―――今日はおじさんが来てるんですよ。

 

 ボクたちは家に入るとそのまま2階のヒマワリの部屋に連れて来られたので見ることは無かったが、なんだが一階が賑やかな気がしてヒマワリに問えばそんな答えが返って来る。

 曰くそのおじさんが数人の連れと共にやってきていて、今一階でヒマワリの両親たちと世間話に花を咲かせているのだとか。

 そうなんだ、とその時はそのくらいにしか思っていなかったし、ボクたちもまたヒマワリに家で遊んだりお喋りしたりと1、2時間くらい楽しんだ後、折角トキワシティにやって来たのだから〇ャスコにでも行こうという話になった。

 本当ならばトレーナー関連のショップに行きたいところだがまだ正規のトレーナーとしての資格が無いのでたいしたものは買えないのでそこは諦めるしか無かった。

 ヒマワリは地元民だけあって歩いて案内してくれることになり、ヒマワリの部屋から出て一階を通り抜けようとした……その時。

 

 ―――おや、どこか行くのかいヒマワリ君?

 

 そう問うてきた男の顔に一瞬違和感を覚える。

 あれ、こんな感じの人どっかで見たこと無い?

 それに気づかなかったのは()()()()()との差異だ。

 その違和感の正体に気づいたのはヒマワリの返した一言だった。

 

 ―――そうだよ、()()()()()()()()

 

 先月ヒマワリやシゲルにフタバといった存在を知ったことでキャンプの時のように呆然、とまでは行かなかったがそれでも一瞬思考が飛んだ。

 髪を降ろしているところを見たことが無かったので違和感で終わっていたが、その名を聞いてようやく気付く。

 サカキである。多分髪型を完全に上げてオールバックにすればボクの知識の中にあるその姿になるのだろう。

 

 原作全シリーズにおけるロケット団の首領にしてトキワジムのジムリーダーサカキの姿がそこにあった。

 

 

 * * *

 

 

 ・原作再現委員会

 

 

 デパートについて早速互いの興味のある店を回る。

 アカリは基本的にポケモン関連の店に向かってポケモン用のオモチャやらポケモンフーズだとか、後はポケモンドールなどにも興味津々で触れている。

 そんなアカリの様子を一瞥し、ようやく話ができるとヒマワリへと向き直る。

 

「で? なんで?? サカキ様なんで???」

 

 そんなボクの困惑にヒマワリはたはは、と笑う。

 そしてそんなヒマワリの口から出てきた言葉に衝撃を受けた。

 

「えっとですね、リンドウさんの懸念を先に払拭しておきますと、おじさんはロケット団のボスじゃありません」

「……はえ?」

 

 サカキがロケット団のボスじゃないとかじゃあなんでロケット団いるんだよ。

 という当然の疑念。

 

「おじさんは確かにトキワジムのジムリーダーなんですけど、それ以上にロケットコンツェルンの社長なんですよ。ただこのロケットコンツェルン、別にロケット団とは基本的に関係無いみたいです」

「???」

 

 最早意味が分からないと頭の中が疑問符でいっぱいになる。

 そんなボクを見ながらまあそうですよね、と苦笑しながらヒマワリが説明を続ける。

 

「ボクもおじさんのことを知ってからそれとなく詮索してみたんですけど、本当に真っ当にジムと会社を経営しているみたいです。ロケット団らしき繋がりがある形跡も無いし。だからおじさんは関係無いと思います」

「……うーん、どこまで信じたものか。っておじさんは?」

 

 何か妙な言い回しだな、と思いヒマワリに視線を向けると、ヒマワリがどこか気まずそうな表情でこくり、と頷いて。

 

「実はボク……ロケット団のボスに心当たりがあります」

 

 そんなとんでも無いことを言う。

 

「リンドウさんは他の転生者に会ったこと、無いんですよね?」

「うん、ボクが会ったのはキミだけだよ」

「まあボクもそんなに多いわけじゃないんですけど……」

 

 そう前置きしながらヒマワリが顎に片手を当てながら少し俯く。

 

「キャンプでリンドウさんに色々聞いてから転生者についてパソコンで調べてみたんです。そしたら……あったんです」

 

 ―――原作再現委員会っていうのが。

 

「原作、再現……委員会?」

 

 何だろうそれは、というのと、まあ読んで字のごとくか、という2つの思考が同居する。

 読んで字のごとく、原作を再現する存在と考えて良いのだろうか?

 

「転生者のスタンスの違いっていうんですかね……つまり『この世界に原作は存在するかどうか』というのがポイントみたいです」

 

 曰く、この世界がポケモンの世界を元にしたただの現実か、或いはポケットモンスターを原作とした二次創作世界か、という解釈の違いがそのままスタンスの違いとなっているらしい。

 何が違うのかと言われれば『原作ストーリー』だろう。

 カントーのストーリーならば主人公が旅に出てポケモンジムでバッジを集めながら道中で出会うロケット団を倒しながら最終的にロケット団のボスを倒しロケット団を解散させる、そして最後のバッジをゲットした主人公はポケモンリーグへ。

 この辺のストーリーは特に3世代あたりから明確になっていて、3世代以降のメインシナリオは全て『伝説のポケモン』へと集約されていくようになっている。

 故に『原作ストーリー』が存在するか否か、というのは割と重要な話ではある。

 何せもしもストーリーで主人公が失敗すれば世界が滅亡するような展開もいくつかあるのだから。

 

 『現実派』と呼ばれる彼らはこの世界があくまで原作を下地にしただけの現実に過ぎないと言い、原作のようなストーリーが起こるにはあまりにも多くの偶発的要素が必要であり、すでに転生者によって改変されまくったこの世界でそんな偶然が起きる可能性は低く、原作は無視して現実を生きるのが重要、というスタンス。

 

 『原作派』と呼ばれる彼らはこの世界は原作を下地にした二次創作世界であり、原作ストーリーは起こりうるものでありそれに対して備える必要がある。そしてそれは主人公などといういるかどうか、またどんな人間かどうかも分からない相手に頼るのではなく原作知識を持つ転生者たちで対処したほうが良い、というスタンス。

 

 ただしこの現実派、原作派の論争にはほとんど決着がついている。

 この世界に原作ストーリーなんて存在しない。

 正しくいえばこの世界はゲームでは無い、ただの現実だ。

 世界中に転生者たちが根差した今のこの世界において原作のようなストーリーが展開される可能性は無視して良い程度の確率でしかない。

 

 その最たるものがチャンピオン。

 

 例えば現在のカントーのチャンピオンは『もょもと』という名の推定転生者だ。

 この時点で原作とは差異がある。それにヒマワリの存在のように推定『原作キャラ』枠に転生した転生者というのがそれなりにおり、彼ら彼女らが原作と同じ行動を取らなければそれだけでストーリーは異なる展開となる。

 

 こういった事情から『原作派』は衰退していき、『現実派』が大多数を占めてこの論争は終わりを向けた。

 

 だが一部の転生者がこんなことを考えた。

 

 ―――『原作ストーリー』が展開されないと自分たちの『原作知識』は役に立たないではないか。

 

 或いは一部の転生者はこんなことを考えた。

 

 ―――このままでは『原作』の展開が見れなくなる、原作で大好きだったあのシーンも見れないではないか。

 

 そして一部の転生者はこんなことを考えた。

 

 ―――『原作』通りの展開が起きないと好きだったキャラとの接点が無くなってしまうではないか。

 

 誰も彼も自分勝手に自由気ままに生きている転生者たちだからこそ、その不都合に気付いた時こう思ったのだ。

 

 ―――そうだ……自分たちで原作を再現してやればいいのだ。

 

 自分たちの不満は『原作』をなぞってやれば解決する、だが今のままでは『原作』が始まらない。

 だから自分たちの手で『原作』を再現してやれば良い。

 

 あまりにも酷いマッチポンプだが、フリーダム転生者たちに制動をかけてくれる人はおらず……そして生み出されたのが『原作再現委員会』だった。

 

 

 * * *

 

 

 ・アカリちゃんお洒落大作戦

 

 

 ヒマワリ曰くロケット団のボスはこの『原作再現委員会』の転生者の可能性が高いのだとか。

 というか前から思ってたけどこの世界の転生者先輩たち本当にフリーダム過ぎる。

 このままじゃ原作が起こらないから自分たちで原作再現すっか、とかどういう頭しているのだろう。

 この世界を漫画や小説などと勘違いしているのではないだろうか。

 

 やっぱ転生者ってやべーやつらの集まりだな、というのを再確認したところでアカリがポケモングッズをいくつか買って戻って来る。

 無表情ながらもどこか満足そうな雰囲気を感じるので楽しんでいたのと思う。

 どこかご機嫌そうなアカリの様子を見て隣のヒマワリを視線を合わせ、互いに頷く。

 

 ―――やるよ。

 ―――オッケーです。

 

 そのまま次のお店へとアカリを連れ立って自然な流れでブティックに立ち寄る。

 そうしてさり気無くヒマワリがアカリの後ろに回る。

 

「……ん?」

 

 何かを感じ取ったのかアカリが立ち止まる。

 

「どうしたのアカリ?」

「……ん」

「ほら、奥に行きましょうよアカリさん」

「……ん」

 

 やや強引ながらもヒマワリに背を押されて歩き出すアカリ。

 そうして女性用子供服のコーナーにやってくる。

 

「買うの?」

「そうだよ、可愛い服がいっぱいだね」

「……ん」

 

 良く分かんない、と言いたげな短い返事。

 アカリがこういうのに興味が無いのは分かっている、十分承知している。

 だがこの1年ずっと思っていたのだ。

 

 ―――この子、着飾ったらイケる!

 

 服装や髪の短さ、それにあまり変わらない表情からどちらかといえば男の子っぽい印象を受けるアカリだが、よく見れば顔のパーツは十分以上に整っているし肌もプルプルで日焼けも無い。

 服装を可愛くするだけでもかなり印象は変わるはずだし、一緒にヘアセットも変えてみれば絶対に可愛くなると思う。

 

「ね、アカリ」

「ん……んっ」

「これ着てみようか?」

「ん……!」

「ダメですよ、アカリさん?」

「んっ……」

 

 可愛らしい女の子の服を持って自分へと近づいてきたボクの姿に何か察したのか警戒した様子のアカリだったが、すぐに後ろからヒマワリに肩を抑えられる。

 そのままずるずると更衣室へと引きずられていくアカリを笑顔で見送りながら他にも何かないかと探してみる。

 

「あ、エクステある……ボクの髪色は無いかな。あ、でも黒はある」

 

 出会った時からアカリは髪を短くしているのであまりヘアアレンジのパターンが無かったのだが、ここ1年ボクが伸ばそう伸ばそうと言い続けたお陰かセミロング手前くらいまでは伸びて来たのでヘアアレンジも色々できるかと思っていたがエクステがあるならロングへのアレンジもできそうだ。

 

「いやーヒマワリに感謝だね」

 

 アカリに可愛い服を着せたい、というのはボクの癖にも関係するのだがそれは今は置いておくとしてキャンプでヒマワリと話している時にふとアカリが女の子なのに普段からお洒落に興味も持たずにボーイッシュな服装ばかりしているという話をしたのだが、その時にヒマワリがなら今度遊びに来た時に近所のデパートにブティックがあるので一緒に行きましょうと誘ってくれたのだ。

 ただアカリ自身はお洒落に興味も無く動きづらい服装は避けるので普通にブティックに連れていっても逃げられるだろう。

 なのでまずはポケモングッズのショップに連れて行きアカリの機嫌を取っておいてアカリがウキウキ気分なところにそのまま流れで連れて行こう、という話になった。

 

 その結果が。

 

「おおー! 可愛い、可愛いよアカリ! 素晴らしい!」

「そうですよアカリさん、とっても可愛いです!」

「…………っ」

 

 白いフリルシャツに赤いスカートの可愛らしい少女がそこにいた。

 すごく可愛い、可愛いがまだここにさらにアクセをつけていけばさらに可愛くなるだろう。

 そういうわけで会計を済ませると珍しく恥ずかしがっているのか顔を赤くしているレアな表情をしたアカリと共に隣のアクセショップへ行く。

 そこで髪留めやリボンなどを買って先ほどのブティックにあったエクステと合わせると……。

 

「すごい! これなら誰が見たって完璧に女の子だね!」

「良いです良いです! アカリさんすっごく可愛いです!」

「…………」

 

 恥ずかしそうにボクの背中に顔をうずめる可愛い生き物が誕生した。

 滅多に見れない照れるアカリの姿に心の中で記憶のカメラで激写しまくっていると。

 

「……リンくん」

 

 アカリがボクの袖を引いて。

 

「……お揃い、しよ」

 

 むう、と頬を膨らませたアカリがそう告げて。

 

「ハイヨロコンデー」

 

 可愛さが振り切って死んだ。

 

 

 * * *

 

 

・黒くて数が多くてあっちこっちに潜んでるアレ

 

 

 アカリちゃんは可愛い。

 アカリちゃんはとても可愛い。

 アカリちゃんは最高に可愛い。

 

「はっ!」

 

 意識を取り戻す、危ない。アカリの可愛さに脳がやられていた。

 アカリのおねだり通りにアカリと同じフリルシャツにスカートに着替えたのだが、アカリがふと。

 

「……お揃い、えへ」

 

 なんていつもの無表情を崩して微笑みながら言うのだから脳が可愛さにやられるのも仕方ない話だ。

 因みにヒマワリもお揃いになっていた。こっちも可愛い! とてもグッド!

 こうして傍から見れば美少女3人組完成……と言いたいがまあ8歳児なので精々美幼女3人組だろうか……まあ1名男が入っているが。

 

 それにしてもトキワシティくんだりまで来た甲斐があった。

 いつもとは違う自分の恰好に気恥ずかしさを覚えながらもボクやヒマワリとお揃いなことにご機嫌なアカリを見ているだけで一日が終わりそうなくらいに素晴らしい光景だ。母さんに頼み込んでお小遣い貰っておいて本当に良かったと思う。

 

 それから3人で色々な店を冷やかして回る。

 特に手持ちのポケモンたちの着せ替えで盛り上がり、最終的にアカリのピカチュウに帽子と眼鏡、尻尾には黒いリボン。ヒマワリのピカチュウ、チュチュには頭と尻尾にピンクのリボン。そしてランプラーには頭に白いリボンを買って結んであげることになった。

 

 こういう装飾品は『持ち物』としてはカウントされないらしいがボールで一緒に取り込むことはできる。

 ただバトルで技に巻き込まれると破れたりするのでそこは気を付ける必要があるようだった。

 

「あちゃ……」

 

 と、その時視線を感じたので後目にそっと見やれば、そこにはこちらを見てニヤニヤと哂う黒ずくめの男たちの姿。

 嘆息する。だってそうではないだろうか。折角可愛いリボンをつけたのに、早速解かなければならないらしい。

 ランプラーのリボンを解くと荷物に入れる、それを見てアカリとヒマワリがどうしてと問うが答えを返さずに歩きだす。

 首を傾げる2人だったが、しばらく歩いてショッピングセンターを出てさらに少し歩いたところで―――。

 

「おい」

 

 声をかけられる。

 3人で振り返ればそこには全身黒づくめの男が2人。

 胸には大きくRのマークの入ったそれはゲームでも良く見た相手で。

 

「うわ、ダサ……」

「……は?」

 

 思わず出てしまった正直な感想に目の前の男たちが一瞬で苛立った様子を見せる。

 いやでも仕方ないでは無くないかな?

 ゲームだと分かりやすい目印として機能していたあの服だが、現実に見るとマジでダサい。

 

「ガキが! オレたちが誰か分かってて舐めた口聞いてんだろうな!」

「え、ロケット団でしょ?」

 

 返したその言葉に、まさか本当に知っているとは思わなかったのか男たちが一瞬虚を突かれたような表情をし、すぐにこちらを見て哂う。

 

「そうだ、お前のその珍しいポケモンをオレたちロケット団に寄越せ、そうすれば痛い目見なくて済むぜ」

「……え、馬鹿じゃないの?」

「は??」

 

 またしても考えることなくほとんど反射的に言葉が飛び出すが、これは仕方ないと思う。

 だって男たちの言っているランプラーは確かにカントーには生息していないはずの非常に珍しいポケモンだろう……何故かボクの夢の中にいたけど。

 だがランプラーである。これがヒトモシならまだしもランプラーである。

 ゲーム換算推定レベル41のポケモンである。

 

 一応言っておくがこの世界において最終進化したポケモンを持っているトレーナーはエリートトレーナークラスに分類される。

 

 御三家の最終進化がレベル30~36くらいだが、そのレベルでもエリート扱いなのだ。

 レベル41というのがどれだけやばいのか推して知るべしである。

 だが目の前の男たちはそれを分かっていないのだ。

 思わず馬鹿と言ってしまうのも無理も無い話だった。

 

「ガキが……痛い目みたいようだな」

「大人を舐めてんじゃねえぞ……」

「いや、舐めてんのそっちでしょ」

「「はあ???」」

 

 もはや完全にキレた様子で男たちがボールに手をかけて……。

 

「ランプラー」

「らーん♪」

 

 それより早く『はじけるほのお』が飛ばされる。

 驚き慌てた男たちが飛び退るがその際に持っていたボールを落としてしまう。

 

「し、しまった」

「汚ねえぞガキが!」

「いや、なんで待ってもらえると思ってんの? こっちもうポケモン出してるのに?」

 

 トレーナーへのダイレクトアタックなんてポケスペなら当たり前のことなのに、どうしてこいつらはポケモンを出している相手に対して悠長に会話から入っているのだろう、本当に疑問に思えてしまう。

 そのまま『はじけるほのお』で2人の男を追いまわすランプラーから視線を外して転がったボールを拾う。

 いくら悪人の物とはいえ、このままパクるのはさすがにヤバイので後でジュンサーさんに渡すとしてひとまず持っておく。

 

「アカリ、後ろからは?」

「……来てない」

「え、えっと……どうなったんでしょう?」

 

 状況を把握し後背を警戒するアカリとピカチュウ、そして状況が呑み込めずついてこれていないヒマワリとチュチュ。

 だが説明している間も惜しいとランプラーに次の指示を出そうとして。

 

「クソ! ふざけるなよ、ガキが!」

 

 男が横っ飛びにダイブしながらいつの間にか持っていたボールを投げる。

 そうしてボールからポケモンが飛び出して……こちらを威嚇する。

 

「デルビルか、良いポケモン持ってるね」

()()()はここまでだぜ、こいつでてめえのポケモンをいたぶってから奪ってやるよ」

「……いや、無理でしょ」

 

 呟きながらランプラーに目配せすると、それで意図を受け取ったのかランプラーから紫色のエネルギーが放たれるとエネルギーが幻影となってデルビルに襲い掛かる。

 デルビルのタイプ相性は『あく』『ほのお』とランプラーのメインとなる『ゴースト』技と『ほのお』技を半減して受けれる……が『ナイトヘッド』という技はレベル分の固定ダメージを与えタイプ相性に軽減されない。

 まだヘルガーに進化していないので推定レベル20前後。そしてこちらが41以上なのであのデルビルが天才的なHP(タフネス)を持つ個体でも無いならばだいたい一撃で『ひんし』寸前にまで追い込まれることになる。

 案の定デルビルはHPを大幅に削られてふらふらになる。

 

 ゲームなら別にHPが1(ひんし寸前)だろうが何の支障も無く動けたが、現実に考えてそんな状況で万全に動けるはずも無く大ダメージにデルビルが荒い息を吐き動きが鈍る。

 そこにランプラーが追加とばかりに『はじけるほのお』で追撃したことにより、何もできないままにデルビルが『ひんし』となった。

 

「げ、やられやがった!」

「おい、この役立たず、何負けてやがる!」

「うるせえ、だったらお前がやれよ!」

「はん、ならこいつでてめえら全員ぶっ殺してやるよ!」

 

 そう言って男が投げたボールから飛び出してきたのはゴルバットだった。

 え、こんなやつが進化ポケモン持ってるんだ、そんな驚きがあった……が。

 

「アカリ」

「ん」

「ぴっかあああ!」

 

 ゴルバットが行動するより早く『ばちばちアクセル』が突き刺さる。

 ランプラーと同じく推定レベル40を超えた相棒ピカチュウの『こうかはばつぐん』な一撃にゴルバットもまた何もできないままに『ひんし』となった。

 

「ど、どどど、どうなってやがる!?」

「なんだこのガキたち、馬鹿みたいにつええ」

「いや、ランプラー見た時点で察しろよ」

 

 なんてツッコミを入れながらランプラーに『あやしいひかり』を指示する。

 最早使えるポケモンもいなくなったのか後ずさろうとする男たちにランプラーが近づいて―――。

 

「らんら~ん」

 

 揺らめく炎が男たちの視界をグルグルと回していき、平衡感覚が保てなくなったのか男たちが崩れ落ちた。

 

「うーん……しょっぱい経験値だ」

 

 脳内で経験値バーがちょびっとだけ伸びたような想像をして。

 ボクもまだまだゲーム脳だな、と嘆息した。

 

 

 * * *

 

 

 騒ぎを聞きつけてやってきたジュンサーさんに事情を説明しながら男たちの持っていたボールと未だに目を回す男たちを引き渡してヒマワリの家に戻る。

 戻った途端、ジュンサーさんから連絡が行っていたのかヒマワリの両親が心配しながら出迎えてくれた。

 それからまだ帰っていなかったらしいヒマワリのおじさんも。

 最近物騒だねえ、としみじみ呟くサカキ様の姿に何とも言えない哀愁を感じてしまったのは原作でのカリスマ溢れる姿を知っているからだろうか。

 

 そんな綺麗なサカキ様に何とも言えない表情をしていると、ふとアカリが静かなことに気づく。

 いや、アカリはだいたいいつでも静かというかあまり喋らないのだが、それでもいつもなら一言二言くらいは喋るはずなのにどうしたものか、と視線を向ければ。

 

 ―――リンくん……。

 

 悲しそうな表情でピカチュウに尻尾に巻かれていた(過去形)焼け焦げたリボンを見つめていた。

 バトルに耐えられるような高級品ではないと説明はしていたのだが、咄嗟の事態だったので忘れていたらしい。

 ちゃんと説明しきれていなかったボクにも責任はあるような気がするので一つ溜め息を吐き出し、ランプラーに結ばれていたリボンをピカチュウの尻尾に結んでやる。

 アカリが目を丸くして、良いの? と尋ねるので頷けば。

 

 ―――ありがとう、リンくん。

 

 柔らかな表情で笑みを浮かべるアカリを見やり。

 

 今日のアカリは表情が良く変わるなあ。

 

 そんなことを考えて、ボクもまた笑った。

 

 

 





【挿絵表示】

アカリチャンカワイイヤッター



【挿絵表示】

アカリチャンノヨウボウニヨリオソロイニナリマシタ




遅くなりました……。
ようつべで暗殺教室のアニメ一挙放送やってたので全部見て。
原作読みたくなったのでコミック全部読んで。
二次創作漁って一通り読み終わって。
そしてまた原作読みたくなったので二周目して。
その後殺せんせーQとかいうのがあることを知って勢いのままに全部買って読んで。
しかもアニメがあって全部見れると知って全部見て。
テンションのままにまだ二次創作漁ってたらこんなに日が開いてた……。



というわけで前回も言った番外編らしきものです。
旅を始める前に原作再現委員会の名前を出しておきたかった。

因みに『この世界のサカキ様はロケット団のボスじゃないです』。
これはマジ。
分かりやすく言えば子供が誘拐されなかったポケスペサカキ様みたいな感じ。
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