サメメイドと極悪殺し屋ちゃん   作:─────

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サメメイドと極悪殺し屋ちゃん

「──レン?エレン?聞いてる?」

 

とある学園の昼休みのこと、一人のサメのシリオンの少女が机に肘をついて居眠りをしている。

彼女の名はエレン・ジョー、今をときめくJKであり、友人には秘密でヴィクトリア家政でメイドを務める少女である。

 

「……ん?なに?マリス」

 

そう呼ばれた灰色髪の少女はマリス・アルディナ、エレンの友人の一人だ。

 

「ごっめ〜ん!明日の放課後なんだけどさ、予定入っちゃって行けそうにないんだよね!私抜きの四人で楽しんできてくれる?」

「……あ〜、その日はあたしもパスかも」

 

いつもつるんでいる五人のうちから出た二人の欠席者に、他の三人が大きな声を上げる。

一方で、欠席者二人はその大声に動じることなく耳を塞いだ。

 

「……てか、二人ともよく放課後忙しいって言ってるけど、何してるの?」

「あたしはバイト」

「私は……バイトじゃないけど、お小遣い稼ぎかな。ほら、イマドキって感じの楽で楽しいやつ!」

「えっ?何それ何それ!教えてよ!」

「だ〜め、未経験者お断りのヤツでさ。私は運がいいからできてるの」

 

そんな話をしていると、マリスの携帯電話に着信が来て、彼女はその発信者名を見ると少しだけ真面目そうな顔をして

 

「ごめん、電話。またあとでね」

 

そう言ってその場を去った。

彼女は昼休みの終わりまで現れず、放課後も慌ただしく教室を去っていった。

 

──────────────

次の日の放課後。

 

エレンはヴィクトリア家政の依頼でバレエツインズにやって来た。

なんでも、このビルを買い取ったオーナーがこのビルの設備を点検して欲しいらしく、ヴィクトリア家政へと依頼が回ってきたのだ。

エレンは、ヴィクトリア家政の執行責任者であるライカン、そして同僚のカリンとリナと合流してバレエツインズへと足を踏み入れた。

その瞬間

 

「ぐわぁああぁぁ!?!?」

「こ、殺さないで!」

「ギャハハハ!私も仕事でやってんの、逃すと思う?」

 

けたたましい叫び声と、それを追うような笑い声がバレエツインズの内側に反響した。

逃げる足音はどんどんとこちらに近づき、ついにエレンたちの目の前に姿を現した。

逃げていたのは、ボロボロの服にヘルメットを被った典型的なホロウレイダーたち、彼らの体には複数の切り傷があり、そのどれもが急所を避けているがあまりに深いものであることから、下手人がわざと傷をつけ弄んでいた様子が見て取れる。

 

「……皆さま、ひとまず私どもの後ろに隠れてください」

 

ライカンがそう言うと、ホロウレイダーたちはこれ幸いとヴィクトリア家政の面々の後ろに身を隠した。

その直後、唐突に迫った殺気にライカンは咄嗟に鋼鉄の義足を振り上げた。

振り上げられた義足に、鋭い刃の付いたブーツがぶつけられる。

 

「……あれ?オオカミ?リストにはいないし……誰だお前」

「ヴィクトリア家政執行代表、フォン・ライカンと申します」

「……へぇ、飼い犬ね。私はコードネーム・ヴィルトゥオーザ、お前は依頼してくれなさそうだし、覚えなくていいよ」

 

そう言って身を翻しライカンと距離を取った人物は、黒いのっぺりとした仮面で顔を覆い隠しており、表情どころかその声すらも遮られくぐもっていた。

オーバーサイズのパーカーにフードを深くかぶっているため、その体型すらわからない。

両足の黒い厚底のブーツには爪先から脛、踵から腿にかけて直線の鋭利なブレードが取り付けられ、上下に駆動するように作られており、特注品であるように見える。

 

「ではヴィルトゥオーザ、あなたはなぜここに?」

「依頼でさ、そいつら片付けろって」

「……それにしては、随分と──()()()いるようにお見受けしますが」

「まぁね、どうせ殺すなら遊ばないと損じゃない?ほら、見てよこれ。バレエシューズ、みたいな?」

 

ヴィルトゥオーザと名乗った人物は、ブーツに付いたブレードを機構を用いて下降させ、先端を床に突き刺しそれを軸にしてその場でクルリと素早く回ってみせた。

その動きを見たホロウレイダーの反応からして、先ほどの動きともう片方の足のブレードでホロウレイダーを切り刻んでいたらしい。

回転の勢いで彼女の体に張り付いたパーカーはその内側の人物の女性的な曲線を明らかにした。

 

彼女はおどけた雰囲気を醸し出しながらも、その身から濃厚な殺気を放ったままライカンを見つめている。

ライカンが

 

「私どもは、このビルを買い取ったオーナー様からの指示でここへやって来ました。ですのでどうか、私どもの前で床を傷つけたり……棟内を血で汚すような真似はご遠慮いただきたいのですが」

 

そう言うと、少女は面倒くさそうに舌打ちをして、バレエツインズ内へと踵を返そうとした。

 

「あ、そう。んじゃあ、そもそも人払いしとくって契約だったのにそれすらされてないんだし、依頼はナシでいいかな。私はちょっと見学してから帰るね〜」

「……見学ですか」

「そうそう、色々あるんでしょ?ここ。ただ見て回るだけのつもりだから、問題があったらここに連絡よろしく〜」

 

止めようとしたライカンに自身の連絡先を渡し、彼女はその場を去ろうとした。

その時

 

「ナシだぁ?テメェのせいで兄貴が死んでんだぞ!」

 

味方が出来て気が大きくなったのか、ホロウレイダーの一人が大声で叫んだ。

その声に振り返ったヴィルトゥオーザはどこか気の抜けたような雰囲気があり、それを好機とみたホロウレイダーは自らの武器を掴みなりふり構わず突撃した。

 

「ッチ、るせぇよ耳痛えな」

 

その一言と共に刃の付いた足が振り上げられ、ホロウレイダーの腹を貫いた。

 

「……あ、汚しちゃった」

 

そして、彼女が気にしていたのは人を殺した事実よりも、溢れた血で床が赤く染まっていく事だった。

 

「ごめんね〜、ちょっとイラついちゃって。人間誰しも間違いはあるって、こと……で─────」

 

その時、ヴィルトゥオーザの動きが止まった。

エレンが仮面越しに彼女と目が合ったような気がした次の瞬間、彼女は踵を返し

 

「あ〜あ、依頼人に文句言わないと。今回は周囲に人がいない遊び場って聞いたから依頼受けたのに〜」

 

わざとらしくそんなことを言いながら、先ほどとは打って変わって猛スピードでその場を離れていった。

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