サメメイドと極悪殺し屋ちゃん 作:─────
エレンがバレエツインズでヴィルトゥオーザと出会った次の日のこと
学校での昼休み、居眠りしようとしていたエレンの周りにいつもの三人が集まったタイミングで、灰色髪の少女マリスもやってきた。
彼女はエレンたちの前でわざとらしく胸を張り
「今日は、私がみんなにミルクティーを奢ってしんぜよう!」
ドヤ顔で言い放ったマリスの一言で、エレンの周りに集まっていた三人が一気に湧き立つ。
「えっ、ほんとに!?」
「ほんとほんと!この前の仕事が楽勝で、しかもボーナス付き!気分がいいから奢っちゃうよ!」
「やった〜!エレンも来るでしょ!」
「……ん?あぁ、うん」
幸いなことに、ヴィクトリア家政の仕事は期限に猶予がある上にキャロットが必要なため、エレンもその誘いに乗ることにした。
三人はルミナスクエアに向かい、お目当てのティーミルク屋へ向かう。
周囲の迷惑にならない程度にはしゃぐ三人は小走りで目的地へ駆け出した。
一方で眠たげなエレンと、マリスはその後ろをゆっくりと歩きながらついて行く。
先に到着していた三人は、トッピングを何にするかを話し合ってる。
すると
「全部乗せたら?そんくらい払えるよ」
と、マリスがニコニコ顔で言うのだから三人はもう有頂天だ。
好きなトッピング全部乗せの最大サイズのティーミルクを注文して幸せそうな顔でそれを飲んでいる。
「ほら、エレンも頼みなよ」
「……ん、いいの?こんな使って」
「良いの良いの、多めのお金は早めに使っとくが吉だからね」
「あっそ。じゃあ……」
エレンは彼女がいつも注文するサイズ・カスタムのティーミルクを注文した。
一方でマリスは一番オーソドックスな、カスタムもトッピングもないものを注文し、何食わぬ顔で飲み始めた。
すると、マリスを除く四人全員がギョッとして、その四人を代表してルビーが恐る恐る
「……ね、ねぇ、もしかして私たちに奢ったから、そんなことに──?」
「?いや、別にいつも通りだよ?あんな長い呪文唱えらんないし、トッピング付け足すと体型維持しんどくなるから」
「た、体型維持?ストイックなんだね……」
「そうそう、最低限しか食べないようにしてるからさ、お金余るんだよね〜。あ、そうだ!スクラッチしてきたら?私に奢ってもらえた日だし、ツイてるかもよ?」
それを言うと、三人はたしかに!と頷いて走り出し、またマリスとエレンが取り残された。
すると、マリスが言いづらそうに
「そういやさ、エレン?」
「……なに?」
「昨日さ、バレエツインズあたりにいた?」
その言葉に、エレンの動きが止まった。
その反応から何かを察したのか彼女は
「ごめんごめん、人には秘密の三つや四つくらいあるよね!私も仕事秘密だし、同じように秘密にしとくよ」
「……ありがと。でも、なんで知ってんの」
「私も昨日あの辺りにいてさ、美化活動……みたいな?会ったら気まずいし、あの仕事断ろうかな〜……あっ」
その時、何かを思い出したようにマリスは目を見開いた。
「断るなら今日しかないじゃん!?ちょ、行って来る!」
すぐ帰って来るから!そのあたりぶらついてて!
そう言いながら彼女は走り去った。
エレンがそれを他の三人に伝えると、軽い相談の後に全員でショッピングモールに行くことになった。
様々な店を歩く中、エレンの三人の友人のうち一人、ルビーが一つのストラップを手に取る。
「これさ、マリスに渡さない?みんなでおそろにしてさ。値段的にはお礼にならないけど、何もしないよりよくない?」
相談の結果、灰色のサメのストラップを買って彼女に一つ渡すことになった。サメがエレンで、灰色がマリスを連想させるとの理由だ。
それからかなりの時間が経ち、完全に日が落ちる少し前のこと、汗だくのマリスが走ってきた。
「……はぁ、ふぅ、ごめん。ちょっとトラブった」
「だ、大丈夫?なんかちょっと煙臭いし……」
「あ〜、歩きタバコの人とぶつかってさ、ごめんごめん」
「あっ、そうそう、マリスにこれ渡したくて」
心配する凛の横から、ルビーはストラップを差し出す。
「これ、みんなでお揃い。今日のお礼ね」
「……え?いいの、これ?」
マリスは心底驚いた顔で目を見開いた。
その反応は、このようなサプライズを人生で一度も受けたことがないかのように新鮮だった。
「うん!四人の友情と、マリスが奢ってくれたティーミルクの証!」
「……ありがとう。大事にするね」
彼女はそう言ってはにかんだ。