サメメイドと極悪殺し屋ちゃん 作:─────
エレンがカリンを連れて発電室へと入ってから約五分。
外から絶え間なく聞こえる銃声と悲鳴、高笑いにカリンはビクビクと震え続けていた。
そして、始まった時と同じように唐突にそれら全ての音が止まり、さらに三分ほど待つと……
「ただいま〜。私が恋しかった?」
あはは、と渇いた笑いとともに別れる前とあまり変わらない様子のヴィルトゥオーザが遅れて発電室にやってきた。
しかし、その姿にはいくつか違和感がある。
「……その服」
「あ、わかる?全部返り血だよ。すごいでしょ?」
グレーだったパーカーは真っ黒に染まっていた。
そして、それら全てが血が染み込んで変色した結果だと本人の口から聞き、カリンはエレンの後ろにサッと隠れ、エレンはドン引きした様子を隠そうともしなかった。
「えっ?なんでそんな表情するのさ、ひど〜い!」
「血塗れになるような戦い方するからでしょ……」
「二人はしないの?楽しいのに〜。……カリンちゃんはチェンソーだし、エレンはハサミ…、血飛沫を飛ばすのにピッタリなのに〜」
「誰もやらないって……」
エレンの言葉に、ヴィルトゥオーザは残念そうにわざとらしく項垂れる仕草をした。
フルフェイスの黒いマスクで覆われた表情の代わりかのように、彼女は大袈裟な動きで誰よりもわかりやすく感情を表現している。
そんな一連の動きの最中、エレンは彼女のパーカーのフードの隙間から何かが垂れたのを見た。
最初はパーカーのフード部分の紐かと思ったが、彼女の動きが落ち着いた途端、それがが灰色の髪の毛だとわかった。
その灰色の髪はエレンの脳裏に友人の姿を浮かび上がらせた。
「……まさかね」
「ん?なに?エレン、どうかした?眠くなった?」
「違うから。……なんでもない」
その時、リナのボンプであるドリシラとアナステラがパエトーンのボンプを運んできた。
「あ、パエトーンだ!さっきぶり〜」
「う、うん。さっきぶりだね……道中の死体は──」
「もちろん私だよ〜」
元気に手を上げて答える彼女の様子に、パエトーンのボンプ越しに非難のオーラが伝わってくる。
ヴィルトゥオーザは悲しげに泣くフリをしつつ発電室に三人を案内するが、発電機からはエネルギーモジュール、つまり燃料が取り外されていた。
「あちゃあ、面倒だね。パエトーンちゃん、そのボンプ燃料にしていい?」
「いいワケないでしょ!?この子はうちの大事なボンプなの!」
「そっか、じゃあ燃料を探さなきゃだね」
すると、パエトーンのボンプからアシスタントによる電子音声が流れ、近くに空間の裂け目が存在すると警告した。
「ん〜、じゃあさっきは私が頑張ったから、次は二人がお願いね!」
そう言いつつも、ヴィルトゥオーザはパエトーンのボンプを抱えて一番初めに空間の裂け目に飛び込んだ。
裂け目の向こう側に辿り着いた彼女は、その瞬間に周囲にいたエーテリアスを銃器である程度片付けたが、それ以降はエレンとカリンに任せきりだった。
「……戦わないの?」
パエトーンがそう聞くと彼女は
「血も出ないし叫ばないし、面白くな〜い。それにさ、あの二人で十分でしょ」
そう言ってあくびをした。
結局カリンとエレンの二人でエーテリアスの掃討が終わり、パエトーンの指示の元、三人はエーテル燃料を一人一束抱えて発電室に帰るのだった。