プラチナム・ライフ   作:妄想壁の崩壊

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捏造マシマシ!


39.白銀命は体育祭に行きたい(上)

 

もともと政子さんは旧早坂家復古派という反四宮家の人間で、交通事故で私くらいの年齢の息子を亡くしていたらしい。そして早坂家再興の夢は破れた。

 

すべてを諦めてただ四宮家に仕えるだけだった日々の中で、母と私に出会った政子さんは、母に説得され私が四宮家に排除されないように協力していたとか。

 

おっもぉ。名家の因縁を私に収束しないでくれぇ……いや、気にかけてくれることは嬉しいんだけどね。だから私のことしっかり鍛えたのか。いつか四宮に対抗できるように。

 

まぁ、今は黄光さんの共謀者なんだけどさ。それは良いの?

 

「構いません、四宮家の次期当主などむしろ命様の傀儡にしてしまえば良いのです 」

 

「思ってたよりもずっと、四宮家のこと嫌いなんですね」

 

「当然です、私は正統な早坂家の血を引く者。どんな相手であろうと心まで屈することはありません。め、命様は別、ですけれどね……?」

 

なんか聞き覚えあるなぁ! その言い方!

 

「もしかして、政子さんって四条家と親戚だったりする?」

 

「はぁ。そんなことは考えたこともありませんでした。ただ、私の父の代で四宮家の血を入れたとは聞いております。母は四宮家から送り込まれてきた女だったので。確か当時の当主の妹だとか言ってたような気が……」

 

あぁ、多分親戚だこれ!!!

 

太平洋戦争前後だから、80〜70年くらい前だろ。眞妃さんはこの前かぐやさんのことを再従祖叔母(はとこおおおば)って言ってたよな。

 

だから、四条先輩と眞妃さんの祖父母とかぐやさんがはとこ。てことは、その親の四条家双子の曾祖父母と雁庵さんの代がいとこ。その二人のさらに親の代が兄弟か。

 

政子さんの親の代はそのあたりだろうから……政子さんの母親は四条家の家祖と雁庵さんの父の妹なのか? つまり、この人雁庵さんの従兄妹……!?!?

 

と、とんでもない血筋だぁ。それに重宝されるのも納得する。下手したら四条より血の近い親戚だぞ、早坂家。

 

「命様、どうかされましたか?」

 

「な、何でもないですよ?」

 

待て待て、ただの妄想だこんなの。可能性の話に過ぎないし、政子さんに言ったら死ぬほど嫌がりそうだからな。

 

うん、黙っておこう。

 

「それで、肝心の私の母の話なんですけど、政子さんは連絡取り合ってないんですか?」

 

「全く。私があの方とお会いしたのは本当に一度か二度だけで……」

 

え、それだけで政子さんが私のことを守ってくれるだろうと信頼したってこと? どんな観察眼!?

 

「もう、地道に探すしかないか」

 

「そうですね。では早速──」

 

「あ、ごめんなさい。政子さん、私秀知院学園の体育祭見に行きたいから、報告は今度聞いて良いかな?」

 

しんどいことが連続してたからな、ここらで気持ちをリフレッシュしたいんだよ。

 

 

 

「良いぞー、御行ー!」

 

(なんで親父がここに……)

 

「兄さんー! カッコいいよー!」

 

(命ちゃん! 俺を観に来てくれたのか!? うぉぉぉ──!!!)

 

「わ、すごい迫力ですね、兄さんのソーラン節。網にかけられて捕獲される魚群の幻覚が見えますよ」

 

「妹に良いとこ見せようと必死こきやがって。まだまだおこちゃまだな」

 

私はお父さんの隣で体育祭を鑑賞しながから、自作の『Let's go! 御行!』うちわを全力で振った。

 

ふれっ、ふれっ、兄さん。頑張れ頑張れ兄さん。

 

「さて、息子の勇姿を背景に、俺も楽しむとするか」

 

──カシュッ!

 

隣でお父さんが缶ビールをあける音である。

 

「ここでビール飲んで良いんですか?」

 

「あぁ、これはノンアルだからな。酒類に該当しない」

 

そういう問題なのか?

 

「そこの父兄の方! 校内での飲酒はお控えください!」

 

ほら。案の定怒られてるじゃないか。

 

「いや、これノンアル……」

 

「そう言う問題ではありません! モラルの問題だと──あ、命ちゃん!」

 

「ミコさんにこばちさん。お久しぶりです」

 

後ろを振り向けば、体育服を着た伊井野ミコさんと大仏こばちさんがいた。以前喫茶店に来た二人である。

 

「ご、ごめんね。風紀委員会の仕事が忙しくて喫茶店に行けてなくて……決して命ちゃんのことを忘れたわけじゃないからね!?」

 

「それはどう言う意味の弁明ですか?」

 

「私は数日前に行った」

 

「こばちゃんの裏切り者! だ、だったら私はシャンパンタワーを……」

 

「うちそう言うのやってないです。来てくれるのは良いんですけど、変な注文しないでくださいね。毎回耳かき棒持って来ても、私耳かきやりませんから」

 

「「そんな……」」

 

私をなんだと思ってるの???

 

「命さん、次の種目が終わったら私たちと一緒に校内を見て回らないかしら。その後の一年は午後まで競技もないし」

 

「良いんですか? 正直助かります。風紀委員が一緒にいると、変な人に絡まれることもないでしょうから」

 

「現に変な人が隣にいるように見えるけど……?」

 

「あ、これ父です」

 

「どうも、命ちゃんパパです」

 

「「嘘──ッ!?」」

 

うん、やっぱりそう思うよね……。

 

 

 

「お昼になったし、購買に案内するね」

 

「そうですね、私もお腹がすきました」

 

校舎に入る前に、私は日傘を閉じた。今日のコーデは政子さんが決めたかわいい系の服装だ。フリルのついた日傘が良く似合う。

 

「命さんの服装、いつも貞淑というか……肌の露出が全くないのね」

 

「私は肌が弱いので、あまり日差しは浴びたくないんです」

 

そういう事にしている。実際日光を浴びて汗かいたら、化粧が落ちて傷跡見えちゃうかもしれないからな。

 

「変、ですかね?」

 

「いいえ、むしろよく似合っていると思うわ」

 

「うちの生徒もみんな命ちゃんを見習ってくれれば良いのに……ほら! あの人たちとか! スカート短すぎるよ!」

 

ミコさんが指を差した方向から女子生徒が歩いてくる。三人ほどのギャルの集団だ。

 

「お昼学校抜け出してコンビニ行こー。ミルクティー飲みたーい」

 

「うちスマホの充電なくなってきたから、モバイルバッテリー借りよ。愛もコンビニ行くでしょー?」

 

「うん行くー、読みたい雑誌あるからそれ買おっかなー」

 

ギャルギャルしい愛さんじゃないか。学校だとあんな感じなのね。

 

「な、不必要に学校を抜け出すなんて校則違反です。待ちなさい!」

 

「「げっ……風紀委員」」

 

「さっきの話を詳しく聞かせてもらいますよ!」

 

ズンズンとギャル三人衆に詰め寄っていくミコさん。ちょ、ストップストップ。

 

「ミコさん、ちょっと耳を貸してください」

 

「め、命ちゃん?」

 

私はミコさんが暴走する前に呼び止めた。頭ごなしに注意するのは逆効果だよ。

 

「ここで注意しても、彼女たちは見てない場所でこっそり行くだけです。だったらコンビニに行くことは黙認しつつも、その過程で問題を起こさないように注意するべきでしょう。ね?」

 

「あ……えへへ……」

(命ちゃんの囁きボイス……好きぃ……)

 

ちゃんと私の話聞いて???

 

「そこの三人、学校を抜け出してコンビニに行くなんて校則違反──」

 

「「うっ……」」

 

「──ですけど、まぁ。今日は体育祭ですから多少は目を瞑りましょう。ただし、絶対に問題は起こさないでください!」

 

「え、良いの?」

 

「マジで?」

 

「良いとは言ってません! ……交差点を渡るときは左右確認。変な人に会ったら近くの信頼できそうな大人に相談。万が一のときのために、逃げ込める場所は把握しておく。それと、礼儀正しく振る舞うこと。学外に出れば皆さんは、秀知院学園の顔なんですから」

 

「おっけー、把握。まっかせろりー」

 

「ちゃんと聞いてましたか!?」

 

あなたが言わないで。

 

「これで風紀委員お墨付きじゃん。らっきー。愛、行くよー」

 

「あ、うん……」

 

愛さんは風紀委員といる私が気になる様子だったが、小さく手を振るだけで特に何も言ってこなかった。

 

また今度遊ぼうね。

 

「まさか、ミコちゃんが自分を曲げて柔軟に注意できるなんて……一体何をしたの、命さん」

 

「そんな大したことはしてないですよ、ただ『報酬』を用意しただけです」

 

「『報酬』?」

 

「まったくもう!」

 

去り行く三人を膨れっ面で見送るミコさん。だが彼らの姿が見えなくなると、彼女はこちらを振り向いて上目遣いで擦り寄ってきた。

 

「それじゃあ、命ちゃん。私頑張ったよ……約束通り褒めてくれる……?」

 

「はい、ヨスヨス。頑張りましたね」

 

「えへへへへへへ──」

 

「友達が立派に成長したと思ったら、堕落の間違いだった!?」

 

「こばちさんも欲しいんでしょ? こっちに……ほーら、ヨスヨス……」

 

「あ、な、ナデポ……」

 

ナデポってなに?

 

……私撫でる側じゃなくて撫でられる側の方が好きなんだけどなぁ。なんか二人の前だとこう言う役回りになってしまうけど。

 

ほんとは、私だって撫でられたいのに……。

 

 

 

「けど、命ちゃんはどうしてあんなことを私にさせたの?」

 

「頭ごなしに注意していれば、彼女たちは反抗したと思います。そしてまた、風紀委員会にヘイトが溜まる。良いことしてるのに、二人が嫌われるなんて結末、私──嫌ですから」

 

「「……」」

 

「……? どうしたんですか、呆けちゃって。カレーパン、人気なんですよね? 早く行かなきゃ売り切れちゃいますよ」

 





「大スクープですわ……!」

「『風紀委員、純白の魔女に陥落か……!?』次の見出しはこれに決定ですね!」

マスメディア部は見た!

「ごめんなさい。白銀会長がダメだって」

「部長!? 権力に屈して検閲を受け入れないでくださいまし!!」

「おまけに四宮さんからもダメ出しされたの。私あの人に頭上がらないから……」

「かぐや様が仰るなら……」

「まぁ、個人のゴシップを暴くのはジャーナリズムの精神に反しますし、仕方ありません。今回は諦めましょう」

ボツになった。
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