プラチナム・ライフ   作:妄想壁の崩壊

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「命ちゃん、クリスマスイブ空いてるか? 藤原家でクリスマスパーティーがあってな。圭ちゃんと四宮、あと藤原姉妹も参加するんだが、良かったら……」

「ごめんなさい、その日はお泊まり会があります」

「そうかお泊まり会か、なら仕方な──お泊まり会!? ま、まさか男の家じゃないだろうな……?」

「さぁ、どうでしょう? 兄さんには内緒です」



58.白銀命は泊まりたい(上)

 

私は東京にある四条邸にやってきた。

 

「ここが眞妃さんと帝先輩が住んでいる家なんですね」

 

でっか。庭ひっろ。かぐやさんが住んでいる四宮別邸を一回りか二回り大きくしたような豪邸だ。四宮本邸は日本屋敷だけど、こっちはどちらかといえば西洋風に見える。

 

「外面だけはね。実際のところほとんど仕事場みたいなものだから、居住スペース自体はもっと狭いけれど。ほら、上がんなさい。帝もいるし、渚も翼くんももう来てるわよ」

 

「お邪魔します」

 

中に入ると、使用人の人たちが忙しなく働いていた。明日はパーティーだから、その準備かな。

 

そしてホールの真ん中で指示を飛ばす人間が一人見える。帝先輩によく似た男の人だ。

 

「お父様、彼女が以前言った私の友達の命よ」

 

「お初にお目にかかります、四条真琴さん。私は白銀命と申します」

 

彼こそが私の明日のターゲット。四条グループにおける事実上のトップ、四条真琴代表。眞妃さんと帝先輩の父親である。

 

「本日はお招き誠にありがとうございます」

 

「そうか君が。そう気張らなくても良い。私のことは眞妃と帝のお父さんくらいに思ってくれて構わないよ」

 

「は、はぁ……」

 

対応が四宮家と全然違うな。あっちは家族仲が氷河期超えて宇宙超えて超空洞(ボイド)みたいな感じなのに。

 

「娘から話は聞いている。楽しんでいきなさい」

 

「はい、分かりました。ありがとうございます」

 

「それと、これからも娘をよろしく頼む。眞妃は素直じゃないところがあるから……」

 

「はぁ!? 何を言ってるのよパパ!」

 

「いえとんでもない。お世話になってるのは私の方ですよ、今日も私にクリスマスの予定がないことを気にかけて招待してくれたんですから」

 

「そうなのか?」

 

「そうよ!」

 

キャンキャンと眞妃さんが四条真琴さんに向かって吠え、彼がそれを宥めている。

 

こうして見れば、どこにでもいる親子にしか見えないな。

 

「代表、明日のお客様についてお知らせしたいことが……」

 

「そうか、わかった。眞妃、私はしばらく忙しくなる。問題があれば呼びなさい」

 

使用人に呼ばれて、彼は去っていった。

 

「それじゃ、みんなのところに行きましょ」

 

「はい」

 

そして眞妃さんに大部屋へと案内される。そこにいたのは。

 

「あ、白銀さん。こんばんは」

 

「こんばんは」

 

田沼夫妻(未遂)の二人と。

 

「やあ、我が家へようこそ、命」

 

帝先輩である。

 

「三人とも何してるんですか?」

 

「ゲームだよ。白銀さんもやろう。勝った人は負けた人に一つ命令できるってルールで」

 

「ほう、私にゲームで挑みますか。アナログゲームなら絶対負けませんよ?」

 

先日の件では私の運に陰りが見えたが、その実力は未だ健在である。

 

「言ったね? 僕は強いよ?」

 

「私だって負けないんだから」

 

「俺は二人にボロ負けした……姉さん、仇を取ってくれ」

 

「一体なんのゲームしてたのよ」

 

さぁ、なんだって来い。私がボコボコにしてやろう。

 

「「「──ダーツだけど?」」」

 

「は???」

 

ボロ負けした。

 

「クソッ、利き腕が使えれば……」

 

「利き腕? あんた左手だと明後日の方向に飛ばすし、右手だとそもそも届いてなかったじゃないの。言い訳になってないわよ?」

 

仕方ないじゃん! 左手に矯正したのは日常生活の動作だけで、ダーツとか体が覚えてないよ!

 

もうちょっと時間をかければ完全記憶でハットトリック連発できたのに!

 

「私の利き腕はすでに失われたんです!」

 

「第三の腕があったの!?」

 

にしても田沼さん強かったな。ゲームの結果としては一位田沼さん、二位眞妃さん、三位柏木さん、最下位が私である。

 

「これでも医者の息子だからね。手先は昔から器用なんだ。さて、どんな命令しちゃおっかなー」

 

「あははー、ねぇ翼。念の為言っておくけど、私以外の女に変な命令しちゃだめだよ?」

 

何故か真顔で田沼さんではなく私の方を睨んでくる柏木さん。

 

ひぃ、怖い! サタン柏木よ立ち去れ!

 

「そんなことしないよ。僕の命令は、もっと仲良くしてほしいってだけ」

 

「仲良くですか。不明確な命令ですね」

 

「僕と渚のこと名字で呼んでるでしょ? 下の名前で呼んでほしいな。僕らも命って呼びたいし。ね、渚」

 

「良いアイデアだね。私も命って呼んで良いかな」

 

「分かりました。翼さんに渚さんですね」

 

二人と出会ってもう半年以上が立つし、仲を深める良いタイミングだったのではないだろうか。

 

「次は何のゲームする?」

 

「ビデオゲームならマリパもマリカーもあるわよ。あと桃鉄とか。アナログゲームならトランプ、ウノとかのカードゲームだってあるし、カタンとか人生ゲームとかたいていのボードゲームも揃ってるわね」

 

ラインナップ凄いな。千花さんのところのTG部以上に揃ってるんじゃないか?

 

「今まで使うことがなかった我が家のゲームたちにようやく日の目が来たわね!」

 

「俺たち二人でやってもあまり楽しくなかったからな。中々友達を誘う機会もないし」

 

「私は何回か眞妃にお呼ばれしたけど、いつもお茶会だけでゲームはしなかったもんね」

 

悲しい事実を暴露しないで。

 

「命はビデオゲームできるの?」

 

「はい、展開の忙しいゲームは苦手ですけどね」

 

そして私たちはたくさんのゲームをプレイした。

 

運が絡むゲームだと私と眞妃さんが。器用さが絡むゲームだと翼さんと眞妃さんが。心理戦の絡むゲームだと渚さんと眞妃さんがトップを飾った。

 

眞妃さん滅茶苦茶スペック高いな。なのになんでこの人不憫な目にあうんだろうか。

 

不思議だぁ……。

 

「帝、トナカイの仮装しなさい」

 

「なんで俺がこんな目に……」

 

「姉より優れた弟などいないのよー! あはははー!」

 

そしてほぼすべてのゲームで中位以下の成績だった帝さんが最下位となり、眞妃さんの従僕にさせられていた。

 

「すいません先輩。泥をかぶってもらって。私のためにわざと手を抜いてくれてましたよね?」

 

「気づいてたのか。いや姉貴が命にどんな命令するか分かったもんじゃなかったからさ。それにインドのお礼してなかったし」

 

「ふふ、ありがとうございます。トナカイさん」

 

「ちょ、からかわないでくれよ……」

 

「おい、そこ。今日はイチャイチャ禁止って言ったわよね? プレゼント交換の時間なんだからさっさと準備しなさい!」

 

い、イチャイチャなんてしてないし……。

 

 

 

「私は命からのプレゼントね。どれどれ、これは……オルゴールかしら?」

 

「はい、人の記憶は音から忘れられていくと聞きました。このオルゴールを聞いて、今日のことを思い出してほしいと思って」

 

「ロマンチックね。大事にするわ」

 

 

 

「私のは先輩からですね。これは……なんでしょうか?」

 

「ハクキンカイロな。ちょっと借りるよ。オイルを染み込ませて火をつけて、あとは携帯すれば……ほら」

 

「わ、すごくあったかいです」

 

白金(プラチナ)を触媒にオイルを燃やす仕組みだ。繰り返し使えるから、寒い冬にぴったりかと思って」

 

「素敵なプレゼントですね、ありがとうございます」

 

 

 

「俺は……げ、姉さんからかよ」

 

「文句があるならあげないわよ?」

 

「いや、嬉しいって。中身は……ハンドクリーム?」

 

「冬は手が荒れるでしょ? それでケアしておきなさい」

 

「ありがと姉さん、大事に使うよ」

 

 

 

「じゃあ僕と渚がプレゼント交換だね。僕からは……じゃーん! マフラーだよ!」

 

「え、嘘。私も全く同じマフラーだよ!?」

 

「ならお揃いだね。巻いてあげるよ。ほら、渚……」

 

「つ、翼……」

 

「だから今日はイチャイチャ禁止っつったわよねぇ!? キーッ!」

 

「ね、姉さんストップ。空気読もうな」

 

「想い人が別の女といちゃついてるのを前にして自分を保っていられる眞妃さん、滅茶苦茶すごいのでは……?」

 

「もがもが──!!!」

 

「これが自分を保っている人間の姿なのか?」

 

かくして、私たちのクリスマスイブは過ぎていく。

 

「夕食は手っ取り早くピザにしといたわよ。変に豪華なもの出されても堅苦しいでしょうし」

 

「正直助かります」

 

私はカトラリー使えないからな。作法は覚えているけど、絶対食器をカタカタ言わせて煩くしちゃうもん。

 

「それでこのあとの話なんだけど、お風呂はどうしようかしら。女子が先で良い?」

 

「僕はどっちでも良いよ」

(どうせなら渚と一緒が良かったけど)

 

「私も、順番はあまり気にしないかな」

(翼と一緒じゃないなら何でも良いや)

 

な、なんかカップルの二人が露骨に興味のない雰囲気を醸し出しているんだが。

 

「命は、大丈夫なのか?」

 

そう思っていると、帝先輩がこっそり耳打ちしてくる。

 

「命はその……足とかがあれだろ。良ければ使用人に頼んで置くけど」

 

「いえ、そこまでしてもらわなくても大丈夫です。丁度良い機会ですし、渚さんと眞妃さんの二人と一緒に入ります。怪我のことをいつまでも隠しておくわけにはいかないでしょうから」

 

私にも友達がたくさんできた。いつまでも隠し事はしていられない。これはその第一歩だ。

 

二人が私の姿を見ても、受け入れてくれれば良いけど。

 

「分かった、何かあったらいつでも言ってくれよ」

 

「はい」

 

気を使わせてしまって申し訳ない。

 

「眞妃さん、渚さん。私は時間がかかるので後が良いです。それと、良ければ一緒に入りませんか? 二人に話したいことがあります」

 

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