プラチナム・ライフ   作:妄想壁の崩壊

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「お医者様の診断によりますと、白銀様は愛着障害やパーソナリティ障害などの疑いがありますね。あくまで疑いなので、要観察です」

「だってよ、お母さん。自覚することが治療の一歩だから、ちゃんと治そうね。私も一緒に頑張るよ、たぶん似たようなところあるから」

「……え?」

「何度も言いますが、あくまで疑いでございますよ。まぁ、白銀様の様子を見れば疑いでは済まないと思いますが……」

「……え?」

白銀一家和解編、大幅延期!



67.白銀命は初詣に行きたい

 

冬休みも終盤、三学期を目前に控えた私は駅前で人を待っていた。

 

そう、初詣だ。鎌倉行き再びである。四条家双子に誘われてまた行くことになったのだ。今度は三人で。

 

「命、風邪なんて引いてないでしょうね」

 

「眞妃さん、あけましておめでとうございます」

 

「えぇ、あけましておめでとう。今年もよろしくしてあげるわ」

 

「……良いんですか?」

 

「何を遠慮してるのか知らないけれど、良いに決まってる。あんたは私の友達よ、むしろ勝手に離れるなんて許さないんだから」

 

「ま、眞妃さん……」

 

好き。私はあなたを利用したのにそんなことを言ってくれるなんて。余裕がある人ってこんなにカッコいいんだ。

 

ほんと、どうしてこの人に良い人がいないんだろうな。私が男だったら放っておかないのに。

 

「命、あけまして──」

 

ぷいっ。

 

「お、俺だけ避けられてる!?」

 

「当たり前でしょ。あんた自分が何したか覚えてないわけ?」

 

眞妃さんの後ろから四条先輩が現れたとき、私は思わず顔をそらしてしまった。

 

どうしてだろう、先輩の顔を見ると胸が苦しい。

 

「いや、あの時は傷つけるつもりじゃ」

 

「その件に触れんなぁ──!!!」

 

「ごふっ……!?」

 

眞妃さんの回し蹴りが先輩の横腹を貫いた。

 

えぇ……???

 

「女の子の心の傷に触れてやるな! 第一、命はそのことを忘れてるかもだから、もっと慎重に会話しろって言ったわよね!」

 

「いや……あれから俺も考えたんだよ。もっとよく考えて答えを出そうって」

 

「キープ宣言!? このヤリチンクソ弟が、死に晒しなさい!」

 

「あべし……!?」

 

忘れてる? 何の話だろうか。

 

「ま、眞妃さん。先輩が苦しそうなのでそれ以上は……」

 

「命はこんな弟にまで優しいのね。良いのよ。あんたに相応しい男は私が見繕ってあげるから、安心なさい」

 

「ほんとに何の話ですか?」

 

かくして、私たちの初詣は始まった。

 

 

 

「思ってたよりも人が多いわね」

 

「年明けですからね」

 

クリスマス前とは異なり、鶴岡八幡宮は私たちと同じで初詣に来る人たちで一杯だった。

 

「私、人混みは苦手なんですけどね……」

 

「大丈夫よ、私が手を引いてあげるわ。この眞妃さんに任せなさい」

 

「眞妃さん……」

 

好き。ほんと、私が男の子だったらなぁ。

 

「ところであのアホはどこに行ったのかしら」

 

たしかに、先ほどから四条先輩の姿が見えない。

 

「おーい」

 

「あ、いた。あんたどこに行って……なによそれ」

 

「車椅子借りてきた」

 

ふらっといなくなって、ふらっと戻ってきたと思ったら、先輩は車椅子を押していた。

 

「前に来たときに命がしんどそうだったからさ、前もって調べてたんだよ。近くで車椅子を借りられるみたいだったから、借りてきた」

 

「ふーん、あんたなりに気をつかったわけね。で、どうするの命?」

 

「いや乗りませんけど」

 

「え!?」

 

そう言って固まる先輩。

 

「乗らないの?」

 

「はい、キツイだけで自分で歩くことはできますし。車椅子に乗ったら注目を集めちゃうじゃないですか。嫌ですよ私、有象無象から憐れみの視線を向けられるのは」

 

それくらいのプライドと言うか自尊心はあるよ。

 

「だそうよ、残念だったわね。さっさとそれ返してきなさい」

 

「うっ、わかったよ……」

 

それに何より、先輩に車椅子を押してもらうなんて我慢できない。過度な補助は対等とは言えないでしょ。

 

私は……先輩に手を引いてもらえるだけで良いのに。

 

「命!? ど、どうして泣いてるのよ……?」

 

「あれ、私、泣いてるんですか」

 

頬に手を当てれば確かに濡れている。全然気づかなかった。

 

「やっぱり、帝と会うのは嫌だった?」

 

「えっと、なんでそんなことを言うのか分からないですけど、会うのは嫌じゃないですよ。ただ、先輩の手を想像したら……」

 

もう、私には手を伸ばしてくれないんじゃないかって、思っちゃって。

 

「あのね、あんたのことは翼くんから聞いたわ」

 

「私のこと? 翼さんから?」

 

「記憶障害があるんでしょ?」

 

「なんでそのことを!?」

 

たしかに、翼さんは私の主治医の田沼先生の息子だ。でも、あの人は医者としての職業倫理を守る責任ある大人だ。家族に私の話を無闇矢鱈とするはずがない。

 

なんでバレた?

 

「命が知らないところで勝手に詮索したのは謝るわ。翼くんが言うにはただの予想だったみたいだけど、その様子だと当たってるみたいね」

 

「予想……?」

 

「翼くんのお父さんが記憶に関する論文を調べていた時期が、あなたの入院した時期と当てはまっていたらしいのよ。それで気づいたみたいね」

 

「そうでしたか」

 

記憶の喪失は、私にとってそこまで隠すべきことでもなかった。少なくとも身体の欠損に比べれば。

 

だから私の本当の姿を見せた眞妃さんに見られたくらいで、どうとも思うことはない。

 

……生徒会の人たちにも、いつか秘密を明かせたらなぁ。特にミコさんは記憶のことすら知らないだろうし。

 

けど知ったらみんなショックを受けるだろうしなぁ。知ってほしいけど、知ってほしくない。複雑すぎてどうしたら良いか分かんないよ。

 

「命はイブの夜のことを覚えてるかしら」

 

「イブの夜……たしか一緒にお風呂に入りましたよね。そこで私が秘密を明かした」

 

「その後は?」

 

「その後……ベッドで何かを話して、ゲームして、負けた罰ゲームで私が四条先輩に告白することになった?」

 

あれ、あのときはどんな話をしたんだっけ。

 

「やっぱり、細かいところは覚えてないのね」

 

「あの……?」

 

「なんでもないわ。けど、一つだけ覚えておいて。あんたが記憶のことで困ったり、苦しくなったら、私が支えてあげるわ。一人で抱え込まず、ちゃんと相談しなさいよ」

 

「分かりました」

 

私はその意味を詳しく知ることなく、ただ頷いた。

 

「帝が来たみたいね。ほら、行きましょう」

 

「はい」

 

私は眞妃さんの手を握る。

 

「ちょ、置いていかないでくれよ姉さん」

 

「あんたが遅いのよ。ちゃっちゃと歩きなさい」

 

「はいはい、悪かったな」

 

そう言って先輩は私の隣に並んだ。眞妃さんの反対側の方に。

 

「せ、先輩?」

 

「これなら良いよな?」

 

そう言って、先輩は空いていた私の手を握った。私の両サイドは四条家の双子で埋められたことになる。

 

「振っといて優しさを見せるなんて、やっぱりあんたクズね」

 

「う、うるさいなぁ。良いだろ別に」

 

「あ、あの、四条先輩。手を引いてくれるのは一人だけで十分ですので」

 

「二人の方が安心だろ。それと、前みたいに下の名前で呼んでくれないのか?」

 

「……帝、先輩?」

 

私は気恥ずかしくて顔を逸らした。前って、そんなに私たちは仲が良かっただろうか。

 

けど、嫌ではなかった。

 

それから私は、まるで三人家族の娘になったような気分で二人と初詣を終えた。

 

「私のおみくじの結果は……万事上手く行くが、素直ではない性格が災いを呼んでしまうかも。恋愛、ダメ。待ち人、来ず──さーて、結んでしまいましょう!」

 

「俺のおみくじは……今年は勝負の年、人生の転換点になる。恋愛、まずは過去を清算し、自分から一歩踏み出すべし。待ち人、近くにいる。や、やけに具体的だな」

 

「私のおみくじは……」

 

苦労を乗り越えれば、その先には煌めく日々(・・・・・)が待っている。諦めることなく精進せよ。

 

願事──待てば叶う。

学問──日々の努力を忘れなければ上手くいく。

失物──近いうちに出る。

病気──治るが難あり。

恋愛──転機を待て、しかし努力せよ。

待ち人──近くにいる。

金運──滅茶苦茶良い。

 

色々と事件がありそうな一年になりそうだ。

 

「あと俺決勝に進んだから、明日良かったら応援に来てくれないかな」

 

「決勝!? 明日!? もっと前から言ってくれませんか!?」

 

「いや、電話したんだけどな。ごめん」

 

「私が電話に出なかったせいか──!!!」

 

早速難事到来──!

 

 

 

優勝した。シュートを決めた先輩がカッコよかった。まる。

 





IF.命(めい)ちゃんが命(みこと)くんだったら



「こ、この人四条先輩のお姉さんなんですか!?」(一目惚れ)

「そうよ、覚えておきなさい。私は正統な四宮の血を引く四条家の娘、四条眞妃よ!」



「帝先輩! 僕……眞妃さんに告白したいんです! あ、ち、違くて!」(失言)

「マジか命。めっちゃ助かる! これでインドに行かなくて済むわ!」



「眞妃さん、好きです」

「ごめん、私あんたのことをそういう目で見たことなくて……。それに、好きな人いるから……」

「なーんて、冗談ですよ」(記憶Delete)

結局、同じ運命を辿るっぽい。
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