プラチナム・ライフ   作:妄想壁の崩壊

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捏造あり。


76.白銀命の日常(6)

 

【旅行の日】

 

2月。如月。初春とは言いつつも寒さがまだまだ厳しいこの季節。

 

そして秀知院学園中等部、高等部二年生にとっては修学旅行の時期でもある。

 

なお、不思議なことに私の学校もこの時期修学旅行なのだが、私は当然のごとく不参加である。

 

理由その一、私の体で修学旅行とか行けない。

 

理由その二、行き先が京都だから。

 

行くわけないだろ。毎月行ってるのに今さら何を観光するのさ。寺社仏閣もメジャーなとこはだいたい回ったよ。

 

と、言うわけで私は東京に残って暇な時間を過ごすはずだったのだが……。

 

「命様。せっかくの機会ですし、どこかへ旅行でも行かれてはいかがでしょうか。お母様と家族水入らずで」

 

What(なんて)???」

 

 

 

 

 

「命と旅行なんて何年ぶりかしらね」

 

「私にとっては初めてだけどね」

 

だって覚えてないし。

 

ということでやってきました福岡空港。九州の温泉、寺社巡りの始まりである。

 

「とりあえずお母さんにも渡しとくね、はいこれ」

 

私は母にとある手帳を渡した。

 

「これは?」

 

「九州八十八湯巡りの御湯印帳だよ」

 

いわゆるスタンプラリーというやつだ。温泉巡って88個のスタンプを集めれば晴れて泉人として認められる。

 

「私はもう半分埋めたから、お母さんも今日から頑張ろうね」

 

「……そうね、頑張るわ」

 

それから太宰府天満宮に行ったり、別府温泉に行ったり、熊本で馬刺を食べたり、宮崎で鶏の炭火焼きを食べたりした後、とある神社へとやってきた。

 

高千穂神社(ここ)って縁結びのご利益があるらしいよ。お母さんお守り買っておいたら?」

 

お父さんと姉さんと、早く仲直りしないとね。

 

「そうね。それはそれとして命は買い過ぎだと思うわ」

 

「なんか、買わなきゃならないと思うんだよ」

 

あと交通安全のご利益もあるらしいし。

 

「ねぇ、お母さん」

 

「どうしたの?」

 

「私の名前って『(いのち)』って書いて『(めい)』って読むけど、神様の名前とかだと『なんとかの(みこと)』とかって読むよね。あれってどう言う意味なのかな」

 

「みことは『神様の御言葉』や『高貴な人物を表す単語』だったそうよ」

 

「へぇー……私の名前の由来だったり?」

 

「そうね。圭も命も、私たちにとっては『大事な宝物』だったから。そういう由来もあるわね」

 

……なんか気恥ずかしいな。でも悪くない。前みたいにすれ違っているよりは、今みたいに素直に話してくれるお母さんのほうが私は好きだ。

 

「ちなみに全員、男の子でも女の子でも通る名前をつけたのよ。御行は女の子だったら深い雪の『深雪』、圭は男の子でもそのまま『圭』、命は男の子だったら文字はそのまま『(みこと)』になっていたわね」

 

「ふーん。なんか、音が似てるね。『み+〇〇』だったり、母音が『ei』だったり」

 

「あの人の名前が『御城(みしろ)』で私の名前が『(れい)』でしょ? 似せたかったのよ」

 

お父さんとお母さんってそんな名前なんだ。私、今まで親の名前知らなかったよ。

 

にしても、体を表す名だなぁ。

 

「そろそろ宿に戻りましょうか。暗くなる前に」

 

「うん、明日は鹿児島だから早めに寝ないとね!」

 

「そ、そうね……」

 

かくして、私の『一週間で九州7県巡り旅行』は続いた。

 

楽しかった。まる。

 

 

 

 

 

【早坂愛の日】

 

「愛さん、何をもじもじしているのですか。早く入ってください、ほら」

 

「ま、待ってよかぐや。心の準備が──」

 

喫茶店の外が何やら騒がしい。そう思った次の瞬間、見知った顔の二人が現れた。

 

「いらっしゃませ、かぐやさん。それから……」

 

一人はいつになく機嫌の良いかぐやさんだ。そしてもう一人は、先日泣いていたあの人。

 

「こんにちは、命さん。紹介しますね、私の友達(・・)の愛さんです!」

 

「や、やっほ。命」

 

そう言ってぎこちない笑みを浮かべながら、愛さんは小さく手をあげた。

 

「はい、愛さん。髪切ったんですね、よく似合ってますよ」

 

「ありがと」

 

良かった。二人の関係は良い方向へ転がったみたいだ。

 

「二人にどんなことがあったか、聞かせてもらえませんか」

 

きっと素晴らしいことがあったに違いない。

 

「まず修学旅行で私が誘拐されそうになって」

 

「ん?」

 

待て待て待て待て。

 

「会長に協力してもらって、それからなんやかんやあって」

 

「んん?」

 

「その後主従関係を解消して、愛さんとは旅行明けに友達になったんですよ。ね、愛さん」

 

「うん」

 

ごめん。一言目がインパクト強すぎてその後何も聞こえなかった。

 

「まず誰に誘拐されそうになったんですか」

 

「私のお兄様よ」

 

は? あのクソハゲマジで引き裂いてやろうか。

 

「いや、そっちじゃなくて雲鷹様の方」

 

三男め、アッティラが引くレベルで四肢もぎ取るぞ。

 

「なんで愛さんが狙われたんです?」

 

「私がかぐやの情報をたくさん持ってるから、引き抜こうとしたみたい。私が持ってるのは会長とかぐやとイチャイチャエピソードくらいなのに」

 

「……黄光さんはまだ一族を纏められてないんですか? かぐやさんはおろか四宮雲鷹も? あの人マジでこの半年間何やってたの???」

 

さけるチーズも悔しがるレベルで粉々に粉砕するぞ。

 

こっちは頑張って四条家を引っ張ってきたってのに、何してるんだよあの人。早く後継者争いを終結させてくれよ。

 

「お兄様からは何も話は来てませんね。まぁ私も近頃忙しいので自分から聞きに行かないことも原因かと思いますが……」

 

「忙しい?」

 

「はい、留学のこともあります。それに……眞妃さんから命さんが四宮のために奮闘してくれていると聞きました。私も派閥……というほど大きくはないけれど、一族の中で私を推してくれる人たちをまとめている最中なんです。それくらいはしなければ、面目が立ちませんもの」

 

おーい、黄光さん。妹がこんなに寄り添おうとしてくれてるのにあんたは何をモジモジしてるのさ。早く一族の指示を取りまとめてくれよ。

 

じゃなきゃ、私が全部やっちゃうよ?

 

なーんてね。ないない。そもそも四宮雲鷹と話す機会なんてないだろうし。

 

「それでその、命。この前の話なんだけどさ。できそうかな?」

 

「できますよ。黄光さんは私に大きな貸しがありますからね。愛さんを引き抜くことくらい造作もないです」

 

「不束者だけど、お願いして良い?」

 

「結納じゃないんですから……あ、もしくはかぐやさんのところに勤めたまま、内通者だけをやめるだけって選択肢もありますよ?」

 

「そうなの? ならそうしましょう! 私はこれからも愛さんと一緒に暮らして──」

 

「ぜっっったいに嫌だ。お願い引き取って。このアンポンタンのお世話とかもう二度としたくないの」

 

「どうして!? 早坂は一緒に暮らしたくないの!? わ、私に何かダメなところがあったなら改めるわ」

 

「なら会長と別れて。二度と二人の惚気話を聞きたくない」

 

「ぜっっったいに嫌よ!? あなたやっぱり会長を狙って──」

 

ああもう、騒がしいな。

 

けどまぁ、二人が仲良さそうにしてくれて嬉しいよ。ほんと。

 

「愛さんは今どこに住んでるんですか? 私の住んでるマンションにはまだ空き部屋があるので、よかったら提供しますよ」

 

あそこも黄光さんから買い取った。名義は政子さんだけど、実質私が管理するマンションになってる。近日母が引っ越してくる予定。

 

……なんかどんどん一般人から遠ざかってる気がするな。

 

「今は早坂家の実家に住んでる。けど、引っ越せるならそうしたい。ぶっちゃけママもパパも住み込みで働いてるから、一人で住むには広すぎるし、寂しいんだよね」

 

「命さんの家ですか。ちょうど私の住む別邸の反対側ですね」

 

「だね。登下校とかどうしよっか?」

 

「……もうこの喫茶店に来れば良いんじゃないんですか? うちはモーニングもやってますよ。朝は私いないけど」

 

「私は全然良いよ。かぐやとここで朝ご飯食べて学校に行く生活も悪くないし、何より別邸の人たちも楽できるだろうし……」

 

「早坂……愛さんが抜けてから、うちの使用人たちは本当に忙しそうなのよね。あなたって別邸に必要不可欠だったのね……」

 

無くして気づく、早坂愛のスーパーメイドぶり。

 

「いまさら気づいたんですですか。それと呼びやすい方で呼んでくれて良いですよ。かぐや様」

 

「いやよ。せっかく友達になれたのに。私はもっと親しくしたいの。だから……愛さんもときどき敬語を使うの、やめてくれませんか?」

 

「うーん、かぐやがタメで話しくれたら、考えよっかなー?」

 

「も、もう! からかわないで!」

 

まったく、イチャイチャしやがって。

 

別にいいもん、私も姉さんとイチャイチャするもん。

 

「あ、命が拗ねてる。しょうがないなぁ、またちゅーして欲しいの?」

 

「ぼ、ボクに近寄るな変態め!!!」

 

「あなた命さんに一体何したの???」

 





神社にて。

「なんか、めっちゃカラスいるね」

「命、光り物は隠していないと取られてしまうわよ」

「うん、わかっ……あ!? 私のお守り返せ! こんのっ、鳥畜生がぁ──ッ!」

取り返せなかった。ま、いっか。まだまだお守りたくさんあるし。わざわざ追いかけるほどじゃないよね。

もう暗いから足を踏み外したら大変だし。
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