プラチナム・ライフ   作:妄想壁の崩壊

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90.白銀命の日常(9)

 

【遅れた反抗期の日】

 

後日、兄さんと姉さんたちが改めて見舞いに来てくれた。

 

「本当に大丈夫なのか?」

 

「うん、一週間寝たきりだった分の体力がもとに戻れば退院して良いって。そのためにリハビリを頑張ってるから……一週間後くらいかな」

 

「そっか、その間は学校来れないんだ。授業のノート、見せてあげようか?」

 

「うん、お願いしても良いかな。姉さん」

 

二人は安堵したようにため息をついた。ごめんね、心配をかけてしまって。でも、こんなことはもうこれっきりだと思う。

 

「それで、二人には話さないといけないことがあるんだけどさ」

 

ボクがそう前置きをすると、二人は顔に疑問符を浮かべた。

 

「話ってなんだ?」

 

「ま、まさか悪い話じゃ……?」

 

「違うよ。むしろ良い話。ボクの記憶、全部戻ってきたみたい」

 

二人はポカンと口を開けて、互いに顔を見合わせ、そしてまたボクを見た。

 

「記憶が……?」

 

「もどった……?」

 

「うん、今までごめんね。にいにとねえねに迷惑かけちゃって」

 

「ほんと、ほんとに!? 嘘じゃないよね!」

 

「嘘じゃないよ」

 

「命ちゃん、良かったな……!」

 

涙ぐんだ二人はその喜びを行動で示してくれた。二人の抱擁に挟まれたボクはさながらサンドイッチの具材である。

 

「ちょっと、二人とも暑苦しいよ。離れて離れて」

 

ボクがやんわりと腕を解くと、兄さんは素直に離れてくれた。だが姉さんは一向に離れない。

 

「姉さん。そろそろ鬱陶しいよ?」

 

「やだやだ、離したくない。記憶が戻ったならずっと一緒にいようよ」

 

ムカ。

 

「いや無茶言わないで、姉さん学校あるでしょ?」

 

「一週間くらい休むもん。退院するまで一緒にいよう?」

 

ムカムカ。

 

「そうだ! 記憶が戻ったなら一緒に暮らそうよ! お母さんも一緒に、ね!」

 

「無理だって、今の家には愛着あるし」

 

ムカムカムカ……なんか、姉さんにひっつかれるとムカつくんですけど。

 

それにあの部屋リフォームでボク専用のバリアフリー仕様に改装してるからな。離れたくないよ。

 

「圭ちゃん、あんまり命ちゃんを困らせたらだめだぞ」

 

「うっさい。……ねぇ命、良いでしょー?」

 

「だめです」

 

「お願い!」

 

「いーやーだ」

 

「お願いお願いお願い──」

 

「うっざーいッ!!!」

 

しまいにはほっぺスリスリをし始めたバカねえねをボクは弾き飛ばした。

 

「め、命……?」

 

「ベタベタベタベタ触んないで! ボクはお触り人形じゃないんだよ!?」

 

「ご、ごめん。触り心地が良くて……」

 

「触り心地が良かったら無断で触って良いのか! それが許されるなら世界に痴漢犯罪はないぞ!」

 

あーもう、イライラする!

 

「嫌だったんだね、ごめんね。お姉ちゃんなのに、命の気持ちを分かってあげられなくて……」

 

「あとその姉貴面やめて! 産道を通った順番が違うだけでボクとねえねは対等なの! これ以上その憐憫の籠もった視線でボクを惨めにするなぁ──!!!」

 

「お、落ち着け命ちゃん。ひっひっふーだ」

 

それ違うやつ。

 

「ありがとう兄さん。あと気軽に妹の背中触らないで、ぶっ飛ばすよ?」

 

「ご、ごめんな?」

 

くそ、二人ともボクを子供扱いしやがって。ボクは君らよりも賢くて偉大なんだぞ? もっと尊厳のある扱いをだな……。

 

「「……め、命が反抗期に入っちゃった!」」

 

は? 反抗期じゃないし。子供扱いされてほしくないだけだし。

 

「お、お兄ぃ! こういうときはどうしたら良いの!?」

 

「上の子は、憤怒受け止め、下の子の、サンドバッグに、甘んじるかな」

 

き。

 

じゃないよバカ。

 

「そ、そっか。お姉ちゃんとして、妹を受け止めてあげれば良いのね」

 

「だからそう言うの!」

 

「うんうん、分かるよ命。分かった風に言われるとムカついちゃうよね」

 

「分かってるならやめてよ! むきゃ──!」

 

「怒ってる命ちゃんも可愛い……」

 

もうこの兄と姉いやだ! キモいよ!

 

「颯爽お見舞い……お? 思ってたより元気そうじゃないか。良いことだ」

 

「あ、お父さん」

 

「命、体調は大丈夫なの?」

 

「それにお母さんも……う、うわ!」

 

扉が開き、父と母がお見舞いに来た。そしてお母さんはボクの顔を見るなり、飛びついてくる。

 

「良かった、命。今度は何ともなくて」

 

「は、離れてよお母さん。暑苦しいから」

 

「嫌よ、絶対に離さない」

 

「む、むむ、むむむ……!」

 

「『む』……?」

 

「お、お母さん、気を付けて!」

 

「母さん、今の命ちゃんに気安く触れると……」

 

 

 

 

 

「むきゃ──ッ!!!」

 

 

 

 

 

【生徒会が来た日】

 

「また来たんだね兄さん……あ、生徒会の皆さん」

 

その日見舞いに来てくれたのは生徒会の人たちだった。

 

「むーむーむー!」

 

「千花さんは何で口をガムテープで塞がれてるんですか?」

 

「藤原先輩には私が実刑判決を下しました」

 

ミコさん、前回の千花さんの所業を知ったんだね。残念でもなく当然である。

 

「命さん、大丈夫でしたか? お怪我などは……」

 

「心配しないでください、かぐやさん。見ての通り、五体……んん! よ、四体満足です!」

 

「「「「……」」」」

 

「むー」

 

や、やだなぁ、身体欠損ジョークだよ?

 

「そ、それから! 皆さんにお知らせしたいことがあります。今回のことでボクは過去の記憶を取り戻したんですよ」

 

きっと生徒会の皆さんのおかげだ。本当に感謝してもしきれない。

 

「まぁ! それはそれは、大変喜ばしいことですね」

 

「良かったな命ちゃん」

 

「むー!」

 

「え、記憶ってなんのことですか?」

 

あ、そういえばミコさんには身体欠損については説明したけど、記憶喪失のことは話してなかったんだった。

 

「命ちゃんは記憶喪失だったの!? そして私だけ知らなかった!? 私だけが!?」

 

「お、落ち着けって伊井野」

 

「うわぁーん! 石上の薄情者──!」

 

「僕だけかよ!? て、待て! どこ行くんだ伊井野──」

 

二名、病室から脱落した。

 

「……なんか、いつも通りで安心しました」

 

しんみりしてるよりは、こっちの方が良いよね。

 

「それと命さん。あなたに一つお伝えしたいことがありまして」

 

「なんですか?」

 

「下手人は四宮で処分しておきましたよ。どうにも走り屋の一派のようでしたので、龍珠さんの手を借りることになりましたが」

 

「か、かぐやさん……?」

 

「バブルの頃はうちも地上げ屋のようなことしていたので、その手の繋がりは強いんですよ。ふふふ、もうあなたを傷つける輩はいません。だから安心してくださいね?」

 

「かぐやさん!?」

 

「むーむー! ──ビリッ。皆さん、命さんの復活祝いにゲーム持ってきたのでやりましょう!」

 

「お前はほんとに変わらないな、藤原書記」

 





この小説の終わりも近いですね。エタらせずに済みそうで嬉しいです。
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